Bcl-xLのX線結晶構造。分解能 1.76 Å。
Bcl-xL (B-cell lymphoma-extra large)は、BCL2L1 (英語版 ) 遺伝子にコードされる、ミトコンドリア の膜貫通分子である。Bcl-2ファミリー のメンバーであり、シトクロムc などミトコンドリアの内容物の放出を防ぐことで抗アポトーシス タンパク質として作用する。シトクロムcの放出はカスパーゼ の活性化、そして最終的にはプログラム細胞死 を引き起こす[ 1] 。
機能
アポトーシスの分野では、細胞死が行われるかどうかはアポトーシス促進性と抗アポトーシス性のBcl-2ファミリータンパク質の相対量によって決定される、という概念が確立されている。より多くのBcl-xLが存在すると、ミトコンドリアのポアのアポトーシス促進分子に対する透過性は低下し、細胞は生存する。しかし、Bax やBak が活性化されるとBcl-xLはゲートキーパーであるBH3-only型因子(Bim など)によって隔離され、ポアの形成、シトクロムcの放出、そしてカスパーゼカスケードとアポトーシスイベントが開始される[ 2] 。
Bcl-xLの正確なシグナル伝達経路は不明であるが、Bcl-xLのアポトーシス誘導機構はBcl-2とは大きく異なると考えられている。化学療法 薬であるドキソルビシン によるアポトーシスの誘導に対し、Bcl-xLはBcl-2よりも約10倍高い抗アポトーシス活性を示し[ 3] 、またシトクロムcの残基に特異的に結合してアポトーシスを防ぐことができる[ 4] 。さらに、Apaf-1 に直接作用することでカスパーゼ-9 との複合体の形成を防ぐことが線虫ホモログで示されている[ 5] 。
シグナル伝達経路の概要
臨床的意義
マウスでのBcl-xLの機能不全は、赤血球 の産生不全、重度の貧血 、溶血 、そして死を引き起こす。Bcl-xLはヘム の産生に必要であることも示されており[ 6] 、前赤芽球 (英語版 ) が生存して赤血球になるために受けるべき生存シグナルの半分を担っていると推定される、主要な生存因子である。Bcl-xLのプロモーター にはGATA1 (英語版 ) とSTAT5 の結合部位が含まれている。このタンパク質は分化 の過程で蓄積され、赤血球前駆細胞の生存を保証する。鉄 の代謝とヘモグロビン への取り込みはミトコンドリア内で行われるため、Bcl-xLは赤血球のこの過程を調節するというさらなる役割を果たしていることが示唆されており、赤血球が過剰産生される疾患である真性多血症 にも関与している可能性がある[ 7] 。
他のBcl-2ファミリーのメンバーと同様、Bcl-xLはがん抑制因子 であるp53 の機能阻害によるがん細胞の生存に関与していることが示唆されている。マウスのがん細胞では、Bcl-xLを持つものは生存することができるが、p53だけを発現するものはわずかな期間で死滅した[ 8] 。
Bcl-xLはさまざまな老化細胞除去薬 (英語版 ) の標的となる。老化 したヒト臍帯静脈内皮細胞 (英語版 ) の細胞培養の研究では、フィセチン とケルセチン の双方がBcl-xLを阻害してアポトーシスを誘導することが示されている[ 9] 。フィセチンはケルセチンの約2倍の作用を持つ[ 10] 。
出典
^ Korsmeyer, Stanley J. (March 1995). “Regulators of Cell Death”. Trends in Genetics 11 (3): 101–105. doi :10.1016/S0168-9525(00)89010-1 . PMID 7732571 .
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