頭足綱
分類
綱
本文も参照
頭足類 (とうそくるい、Cephalopoda )は、軟体動物門 頭足綱 に属する動物 の総称。イカ 、タコ 、オウムガイ 、コウモリダコ や絶滅 したアンモナイト 等が含まれる。体は胴・頭・足に分かれていて、足も多数に分かれている。触角はないが、軟体動物の中でも特に目や神経系、筋肉が発達していて、運動能力にすぐれる。
概要
現生種は800種程度である[ 1] [ 2] 。絶滅した種は1万種以上報告されているが、体が柔らかいことから化石化しにくく、発見されていない種は多いと考えられている[ 3] 。
超深海帯 を含むほとんどの海に生息するものの[ 4] 、淡水には生息していない[ 5] 。汽水に生息するLolliguncula brevis (英語版 ) のようなイカは稀である[ 6] 。
赤道付近で活動する種が多く、北緯60度以上で活動が確認されているのは5種程度である[ 7] 。
形態
軟体動物に特有の殻を持たないものが多いが、これは二次的に退化したものと思われる。現生ではオウムガイ類が発達した巻貝 状の殻を持つ。イカ類は殻の巻きはなくなって甲 となったものを体内に持っている。タコ類は全く殻を失っているが、カイダコ など、二次的に殻を作るようになったものがある。
体は外套膜 につつまれた胴部と頭部に分かれ、頭部にある口の周辺には腕 が並んでいる。これが古来より足 と呼ばれ、頭足類の名前の由来となっている。脳神経節が腕を支配していることから頭部の一部が変化したとの説もあったが、現在は巻き貝で言う足が変化し腕になったと考えられている。発生中に神経支配が組み変わり脳神経節配下となる。また巻き貝に例えれば腹足の中央に口があることになるが、発生中に足の組織が頭部をおおい表面の突起が伸びて腕になるという体制の変化が起きている。
頭足類の腕
頭足類の目
頭部にはよく発達した眼が1対ある。タコとイカの眼は、脊椎動物 の眼と同様の構造を持つ、いわゆるカメラ眼 である。ただし、それぞれ全く異なった進化過程をもつ器官であり収斂進化 の一例である。構造上の特筆すべき違いは頭足類の眼球は視神経が網膜の外側を通っている点である。視神経が視認の妨げにならないため、視力にすぐれ、盲点 も存在しない。
感受性
EU指令「科学的目的で使用される動物の保護(on the protection of animals used for scientific purposes)」は、頭足類を対象としている。本指令の全文(8)には次のように記載されている:
円口類を含む脊椎動物に加えて、頭足類もこの指令の範囲に含める必要があります。これは、痛み、苦痛、および永続的な危害を経験する能力があるという科学的証拠があるためです。
また2021年11月に、イギリス政府の審査委員会は「タコやカニや大型エビにも苦痛の感覚がある」として同国で審議されている動物福祉法案の保護対象に感覚をもつ動物として追加した。専門家チームはこれらの生物の感覚について調べるため、300件の科学研究を調査して報告書をまとめ[ 8] 、調査の結果、タコやイカのような頭足動物と、カニや大型エビ、ザリガニのような十脚甲殻類 は、感覚をもつ存在として扱う必要があると結論付けた。ザック・ゴールドスミス動物福祉相は「十脚甲殻類や頭足動物が苦痛を感じることが、科学的にはっきりした。従って、この法案の対象とすることこそが適切だ」との声明を発表した[ 9] 。2022年4月7日、本法案は議会の最終段階を通過して法律になり、アカザエビ、カニ、エビ、タコ、イカなどの動物も保護対象となることが決定した[ 10] 。
スイス、ノルウェー、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでは、頭足類で研究を行う際に倫理的承認が必要になる。2023年には、アメリカ下院と上院の議員が、動物実験ガイドラインの対象に頭足類を含めるよう要請した[ 11] 。
歴史
Plectronoceras の復元イラスト
頭足類は古生代 カンブリア紀 に出現した。初期の属としてカンブリア紀後期から知られるPlectronoceras がおり、オウムガイ類のように殻を持っていた。殻の内部はいくつかの壁で隔てられていることから、現生のオウムガイのように殻の中の空洞にガスや液体を溜めることにより、浮力を得ることができたと推測されている[ 12] [ 13] 。カンブリア紀中期に生息していたネクトカリス は外観上は殻をもたない頭足類に似ているが、実際に頭足類、および軟体動物であるとは広く認められていない[ 14] [ 15] [ 16] 。オルドビス紀 には真っ直ぐな殻をもった複数グループが繁栄し、中にはエンドセラス のように5メートルを超える殻をもつと推測されるものもいた。外観上はよく似ているものの、チョッカクガイ 類のように積極的に泳ぎ回っていたものから、エンドセラス類のように底生の捕食者として活動していたと推測されるものなど生態は様々であった[ 13] 。
こうした殻をもつグループからデボン紀には現生のオウムガイを含むオウムガイ目 (Nautilida )が出現した一方[ 17] 、バクトリテス類 (Bactritida )という真っ直ぐな殻を持つグループも出現する。一部の系統は進化を通じて殻を巻いていき、そこからアンモナイト 類が出現した[ 18] 。アンモナイト類は特に中生代 において繁栄したが、白亜紀 末期には絶滅している。一方、バクトリテス類の一部の系統は殻を内部に持つように進化し、そこから現生のタコやイカのような頭足類が出現したとみられている[ 19] 。中生代のものとしてはベレムナイト が有名である。
分類
頭足類の分類は非常に流動的で、統一見解がない。以下、英語版 Cephalopod から引用した。
オウムガイ亜綱 Nautiloidea
側系統群 。
†アンモナイト亜綱 Ammonoidea
†アンモナイト (絶滅 )
鞘形亜綱 Coleoidea
二鰓亜綱 (Dibranchia)ともいう。殻は退化して消失するか、あるいは板状(トグロコウイカ では巻殻)になって体内におさまる。吸盤が並んだ8 本の足があり、イカやコウモリダコでは足と別の触手(触腕 )も発達する。
脚注
^ “D5 頭足類の生物学的古生物学 ”. www.um.u-tokyo.ac.jp . 2024年10月8日 閲覧。
^ “Welcome to CephBase ”. CephBase . 12 January 2016時点のオリジナル よりアーカイブ。29 January 2016 閲覧。
^ Wilbur, Karl M.; Clarke, M.R.; Trueman, E.R., eds. (1985), The Mollusca, vol. 12. Paleontology and neontology of Cephalopods, New York: Academic Press, ISBN 0-12-728702-7
^ “Cephalopods Observed At Record-Shattering Oceanic Depths ”. Labroots . 2024年10月8日 閲覧。
^ “研究と標本・資料 ≫ 研究部紹介 ≫ 動物研究部 :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo ”. www.kahaku.go.jp . 2024年10月8日 閲覧。
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^ Nixon, Marion; Young, J. Z. (2003). The Brains and Lives of Cephalopods. New York: Oxford University Press. ISBN 978-0-19-852761-9 .
^ “Review of the Evidence of Sentience in Cephalopod Molluscs and Decapod Crustaceans ” (PDF). 2021年12月6日 閲覧。
^ “タコやエビにも苦痛の感覚、動物福祉法案の保護対象に 英 ”. 2021年12月2日 閲覧。
^ “UK Sentience Bill passes final stages to recognise decapod and cephalopod sentience by law ”. 2022年4月11日 閲覧。
^ “タコがサルと同じ扱いになる可能性。頭足類を研究に使用する場合には倫理委員会の承認が必要に ”. 2023年9月25日 閲覧。
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関連項目
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