茅ヶ崎映画祭(ちがさきえいがさい)は、2012年6月より神奈川県茅ヶ崎市で開催されている映画祭。
概要
キャッチコピーは「街と人がつながる、手作りの映画祭」。
映画館やホールでの上映のみならず、市内の旅館や飲食店などを上映会場としているのが特徴。
過去には美容室や保育園、ゴルフ場、海岸でも上映された。 茅ヶ崎映画祭実行委員会が主催している。
2024年10月26日から11月16日にかけて第13回が開催された。
開催のきっかけ
茅ヶ崎映画祭の発起人は市内で自主上映会を行なっていた天野茂明[1]。さらに映画祭実行委員として祖父が残した土地で貸農園を営み、自然に触れる場所を街に残そうとしている熊澤弘之が加わった。映画祭開催の前年、天野は国の登録有形文化財で小津安二郎監督が脚本を執筆した定宿として知られている「茅ヶ崎館」の5代目当主森浩章に「映画祭を開きたい」というフェイスブックメッセージを送った[2]。森は自分よりも若い人が思い立ったことを嬉しく思いながらも、「どれだけの覚悟があるのか」と文化継承に関する意識を確かめた。そして映画祭を継続していくという意志が確認できたため参加を決めた[3]。
上映作品とその年のトピック
- 第1回(2012年6月1日〜6月10日)
- 第1回茅ヶ崎映画祭のオープニングを飾ったのは前年の2011年12月に亡くなった森田芳光監督の擬似ドキュメンタリー『ライブイン茅ヶ崎』。劇場デビュー前の若き監督が、”生まれ故郷”茅ヶ崎で自主制作した8ミリ映画で、上映される機会はめったになかった作品。森田監督のファンと地元の人で満員の会場は何かが始まる期待感に包まれていた[4]。
- 脚本執筆などを行う際の小津の定宿「茅ヶ崎館」で行われた『麦秋』の上映も満席であった。上映に訪れた市内に住む女性は、公開された小津監督の仕事場「二番の部屋」に座り、「いつかは来てみたいと思っていた。鳥肌が立ちました」と語っている[5]。
プロデューサーの天野茂明の「今年は少し余裕を持ってイベントを盛り上げていきたい」という思いから、プレイベントとしてドキュメンタリー映画「happy-幸せを探すあなたへ」を、会員制の貸農園「リベンデル」で上映。プレイベントでの上映作品を同作品に決めた理由は、映画を通して幸せについて考えるきっかけになってほしいからと、3月20日が国連が定めたハピネス向上の日ということから[6]。
- 「happy-幸せを探すあなたへ」(ロコ・ベリッチ)
- 第2回(2013年5月24日〜6月16日)
- 第2回のオープニングも前年に引き続き森田芳光監督作品。デジタル上映が主流になった中、35ミリフィルムで上映された[7]第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で審査員特別賞を受賞した是枝裕和監督が茅ヶ崎館での『誰も知らない』の上映後にトークショーのゲストとして招かれ、受賞作『そして父になる』』の脚本をここで執筆したことを明かした[8]。
- 第4回(2015年6月3日〜6月26日)[9]
- 茅ヶ崎市美術館では版画家・棟方志功の没年に製作、1975年に公開されたドキュメンタリー『彫る 棟方志功の世界』を展示室の壁に吊るした布に映写して上映。同作品はベルリン国際映画祭短編部門グランプリなど数多く受賞した映画[10]。
第5回(2016年6月1日~18日)
第6回(2017年6月25日~7月9日)
- 熊本を舞台にした映画「うつくしいひと」のチャリティー上映会(2016年4月に発生した熊本地震に収益金の一部を寄付)が行われ、熊本県のご当地キャラクター「くまモン」が茅ヶ崎市のキャラクター「えぼし麻呂」とともに登壇。[11]
第7回(2018年6月9日~6月24日)
- 美大生の青春を描いた漫画を実写化した『ハチミツとクローバー』は、ロケ地の一つである茅ヶ崎館で日本語字幕を付けた「バリアフリー上映」された。また、市内在住の園田新監督の最新作『リバースダイアリー』をイオンシネマ茅ヶ崎で上映。同作は「ロンドンフィルムアワード」最優秀作品賞(長編部門)受賞作。上映後には、園田監督と出演者による舞台挨拶が行われた[12]。
第8回(2019年6月15日~6月30日)
- 「万引き家族」で前年のカンヌ映画祭最高賞を受賞した是枝裕和監督の作品で、前年に亡くなった樹木希林が出演した「歩いても歩いても」を上映。終了後には是枝監督が登壇したほか、「雪国 (カクテル)」を考案した伝説のバーテンダー井山計一の半生を描いたドキュメンタリー映画『YUKIGUNI』の上映会場では地元バーテンダーが作る「雪国」を一杯500円で提供した。[13]。
- 「あつい壁」(中山節夫)
- 「新・あつい壁」(中山節夫)
- 「ユメのおと」(角川裕明)
- 「ミュージカル/MY☆ROAD MOVIE」(角川裕明)
- 「北側もオシャレ茅ヶ崎!」(松永万里)
- 「江ノ島シネマ」(高橋巖、西中拓史、山本美穂、鷲頭祥伍、須山拓真、いながわ亜美、高山直美、安田ちひろ)
- 「白石康次郎176日の航跡 最年少単独無寄港ヨット世界一周」(Number video)
- 「YUKIGUNI」(渡辺智史)
- 「愛と法」(戸田ひかる)
- 「Hungry〜見えない恐怖から逃げるゲートとカイジョ、どうなる?〜」(ckc2018翼チーム)
- 「BATTLE IS IN VAIN」(ckc2018ゴリラチーム)
- 「Diary」(山本久美子)
- 「A FILM ABOUT COFFEE」(ブランドン・ローパー)
- 「モルゲン、明日」(坂田雅子)
- 「歩いても 歩いても」(是枝裕和)
- 「3泊4日、5時の鐘」(三澤拓哉)
第8.5回「第1回チガサキオンライン映画祭」特別協力シネマプランナーズ (2020年6月20日~6月30日)
- 「マカリス」(山本康士)
- 「WILD NIGHT」(中田圭)
- 「0&1」(中田圭)
- 「非金属の夜」(中田圭)
- 「WILD NIGHT」(中田圭)
- 「中野JK 退屈な休日 Boring Holiday」(中田圭)
- 「江ノ島シネマ」(高橋巖、山本美穂、須山拓真、いながわ亜美、高山直美、安田ちひろ)
- 「えのしまピエロ」(今関あきよし)
- 「Kyoto MON Amour by Cvetkovik Andrijana」(アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ)
- 「紫と金」(エリック・リン)
- 「グリィちゃんねる」(油木田一清)
- 「マジカルミカンフィルム」(V.A.)
- 「川上音二郎版「正劇オセロ」」(演出 岩本一夫)
- 「鎌倉妖気の旅」(斎藤次男)
第9回「第2回チガサキオンライン映画祭 by U-NEXT」(2021年2月6日~2月28日)*令和2年文化庁委託事業「文化芸術収益力強化事業」
<見放題作品>
- 「マカリス」(山本康士)
- 「江ノ島シネマ」(高橋巖、山本美穂、須山拓真、いながわ亜美、高山直美、安田ちひろ)
- 午後3時の悪魔(池田健太)
- Return(三澤拓哉)
- りも芝居(古澤利人・平岡基)
<アーカイブス作品>
第10回(2021年6月12日~6月27日)
第11回(2022年6月5日~7月23日)
- オール女子高生チームで制作され「高校生のためのeiga worldcup 2022」でグランプリほか7冠を受賞した『今日も明日も負け犬。』をオープニング作品として上映[17]。
- 特別招待作品として三澤拓哉が監督を務めた「ショートショートシアターTHE湘南市」をワールドプレミアとして上映[18]。
第12回(2023年10月7日~10月29日)
- 小津安二郎生誕120年のメモリアルイヤーとして小津安二郎の作品を3本上映。松竹シネマクラシックスのサイトにも「小津安二郎生誕120年記念 2023年後半 イベント一覧!」としてリンクが貼られた。[19]。
- 茅ヶ崎映画祭のトークゲストとして登壇した西川美和監督が『すばらしき世界』の上映後、「チガサキごとよ、Cheeega!」インタビューに応じた。[20]。
- 茅ヶ崎在住の石川慶監督も茅ヶ崎映画祭のトークゲストとして登壇し『ある男』の上映後、タウンニュース茅ヶ崎版のインタビューに応じ「人物風土記」に掲載された。[21]。
第13回(2024年10月26日~11月16日)
- 5人の脚本家たちによる母をテーマにしたオムニバス映画「Mothers マザーズ」のプレミア上映が行われた。満席の中で行われた上映後の舞台あいさつには、5作品の出演者、スタッフ19名が登壇。その中で、茅ヶ崎の柳島海岸などで撮影された作品「ルカノパンタシア」で母親役を演じた嶋村友美さん、娘役の森山みつきさん、メガホンを執った難波望監督がタウンニュースのインタビューに応じた。[22]。
脚注
外部リンク