終戦のローレライ
『終戦のローレライ』(しゅうせんのローレライ)(独:Lorelei: das lied zum ende des Krieges)は、福井晴敏の架空戦記小説。 概要2002年12月に講談社より単行本が発売され[1]、2005年に文庫化[2]。その後『月刊アフタヌーン』(講談社)2005年3月号より、脚色:長崎尚志、作画:虎哉孝征で漫画版が連載され、同じく2005年に『ローレライ』として映画化される。 第24回吉川英治文学新人賞、第21回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞受賞。 あらすじ舞台は太平洋戦争が終焉を迎えんとする1945年8月。日本に「あるべき終戦の形」をもたらそうと画策する異端の大佐浅倉と、その令を受け困難な任務の遂行にあたる戦利潜水艦《伊507》、ならびにその搭乗員の数奇な運命を描く。 伊507にはナチス・ドイツが開発した特殊音響兵装、通称「ローレライシステム」が搭載されており、それを巡る多くの戦いが引き起こされていく。 登場人物
用語
戦利潜水艦・伊号第五〇七
シュルクーフ時代フランス海軍の潜水艦、名称はシュルクーフ(スルクフ)、1934年に竣工。フランス休戦後は自由フランスに所属して、その時世界で最大の潜水艦であった。 1942年2月18日、カリブ海哨戒任務の際、米商船「トムソンライクス」と衝突し、沈没するまでが史実。 →詳細は「スルクフ (潜水艦)」を参照
UF-4時代乗員の必死の努力によって浮上、漂流していたシュルクーフをナチス・ドイツの潜水艦U109が拿捕し、UF-4となり特殊音響兵装「ローレライ・システム(PsMB-1)」の実験艦として引き取られ大規模改装を受けた。 SSの大量の資金で内部、外観とありとあらゆる場所に徹底的に手を入れられ、艦首、観測機格納庫周辺は見る影もなく変貌した。その結果、船体は近代的に洗練され1.6倍の馬力の機関と最新の装備により屈指の性能をもつ最新鋭潜水艦となった。 ドイツが降伏後、ローレライ・システムを日本に提供し亡命をするため、日本へ回航する。原作小説では回航途中に米潜水艦2隻の襲撃を受けローレライを投棄してしまう。 伊5071945年5月8日、第二次世界大戦でナチス・ドイツが連合国に降伏し、UF-4を日本海軍が接収して伊507に改名した。その後、海軍軍令部の命令で横須賀海軍工廠で修復と補給を受ける。 新たな原子爆弾投下を阻止するため8月6日に横須賀を出港。原爆搭載機の情報をつかみ、テニアン島へ独自の行動を起こす。 原作小説では回収作業用に改造を受けた海龍を搭載し、原爆投下前の7月24日に特殊兵器を回収するところから物語が始まる。 ドイツの当時最新のテクノロジーによる改装を受け、魚雷と潜航艇を下ろせば水上で30ノットを叩き出せたり220mの潜行が可能であったが、大型なのはどうしようもなく、原作小説では鈍重な本艦の操艦に乗組員が苦心する描写があるが、劇場版では特にそのようには描かれていない[注 1]。 主砲は本来左右に11度しか旋回できないが、ドイツで変更されたのか広い旋回範囲で射撃している。 原作小説での本艦は、広島・長崎に続く3発目の原爆を積んだ爆撃機を撃墜し目的を遂げた後、艦体損傷により潜航が不可能になり、米艦隊の集中攻撃を受けつつマリアナ海溝を目指す。最期は攻撃により完膚無きまでに破壊され沈没、沈んだ艦体も海底の水圧で圧壊、米軍でもサルベージ不可な深海へと沈降しローレライシステムは完全に消し去られる。一方、劇場版では攻撃を受けながらも潜行していずこかへと姿を消す、という結末になっている。 歴代艦長
ローレライシステムPsMB-1という正式名をもつ、ナチス・ドイツによる大改修でUF-4に搭載された特殊音響兵器。同艦に接合されたゼーフントを改装したナーバル(映画では特殊潜航艇N式潜)内に配置されている。 第二次世界大戦期の索敵装置を遥かに凌駕した性能を持ち、魚雷の発射時に用いれば百発百中の命中率を得ることができる。探査音波を回避して敵艦に接近することも可能であり、史実では役立たずであった主砲も有効に利用することができた。しかし同時に致命的な欠陥を抱えており、量産も不可能で戦況を覆すまでには至らず、ドイツの降伏を迎えることになる。 発令所にコロセウムと呼ばれる巨大な電球のような描画装置があったが、映画版ではそれでは割れてしまうという理由で机に意匠変更がされている。 リンドビュルム計画パウラ・A・エブナーが祖母の死後、ナチス・ドイツの福祉機関レーベンスボルンの姉妹機関「白い家」に送られ、人種改良の実験を受けていた最中に突然開花した特殊能力(水あるいは液体を介して遠くの見えない物体を認識したり、人の思考を感じたりできる能力)を利用して立案された、SSとドイツ海軍が進める革命的な水中探知装置の開発計画。この計画に基づき建造(大規模改装)されたのが、UF4(独通称:ゼーガイスト)と呼ばれた特殊潜水艦であり、その探知装置システムを後にローレライシステムと呼ぶようになった。 断号作戦当時日本の同盟国であったドイツが降伏した後、行き場を失ったドイツ海軍の秘密実験艦(後の伊507)を密かに受け入れ、その乗員を保護し第三国への脱出を手配する代わりに、同艦が有する特殊兵器の技術供与を受けるという作戦。ドイツ艦からの申し出を日本海軍が受ける形で始まった作戦だが、肝心の「特殊兵器」であるローレライシステムの一部を、日本に到着するまでに紛失(文中では投棄)してしまうというドイツ側の失態のために、正式には中止となった作戦である。 しかし浅倉大佐はこの作戦中止を見越して、予め独自の計画を進めており、「断号作戦」が中止になった後は、自らの立場を利用して関係者に中止を撤回したと思わせ、この特殊兵器を持つ潜水艦を独自の計画に利用したとされている。 探知法ローレライシステムに対抗する、ローレライシステムのように特殊ではない一般機器を用いた現実に存在するする音波探知法である。作中ではCZ探知法を元にヘッジホッグ爆雷で対抗する。その精度に伊五〇七乗員も「まさか敵もローレライを装備しているなんて冗談は無いだろうな!?」と、驚愕する。詳細は収束帯 (音波)を参照。 書籍情報
映画→詳細は「ローレライ」を参照
2005年3月に『ローレライ』のタイトルで実写映画化され公開。 漫画虎哉孝征によるコミカライズ。月刊アフタヌーン(講談社)アフタヌーンKC、2005年3月号から2007年11月号で連載、全5巻。
関連項目
脚注注釈出典
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