有鱗目の爬虫類は第四転子ではなくinternal trochanterと呼ばれる転子を持ち、これを尾大腿筋の付着部としている[6]。Nessbit et al. (2009) は、非主竜類型主竜形類であるプロテロスクスやエリスロスクス科に見られるinternal trochanterがユーパルケリアやプロテロチャンプサ科(英語版)および主竜類に見られる第四転子と相同であると指摘した。その根拠はinternal trochanterと第四転子が共に尾大腿筋の付着部として機能することと、非主竜類型主竜形類において両者の区別が困難であることである。基盤的な主竜形類においてinternal trochanterは大腿骨のより近位に位置するが、派生的なエリスロスクス(英語版)のinternal trochanterは遠位に位置しており、ユーパリケリアや主竜類の第四転子も同様である。従って、尾大腿筋の付着部は派生的な主竜形類の段階で近位から遠位へ移動しつつあったことがわかる[7]。
またNessbit et al. (2009) は第四転子とinternal trochanterの区別をその形態に求めた。プロテロスクスやエリスロスクスの転子はほぼ一様に薄くブレード状をなし、内側または背側に位置する頂点は非対称形である。またユーパルケリアや基盤的主竜類の第四転子は尾大腿筋の付着する陵が低く、また明らかな非対称の頂点を持たない。プロテロチャンプサ科の転子は高く伸びていて鋭利であるが、陵の頂点は前後対称形である。こうして、Nessbit et al. (2009) は頂点の有無や対称性に基づいて第四転子の起源を定めている[7]。
Nessbit et al. (2011) は先行研究で第四転子の不在が報告されたグラキリスクス(英語版)を含む偽鰐類に広く第四転子を認めており、ほぼすべてのワニ系統の主竜類が対称な第四転子を持つとした。またNessbit et al. (2011) によれば翼竜やシュヴォサウルス(英語版)およびドロモメロン(英語版)は明らかな転子を持たない代わりに、第四転子の位置にscarを持つ[6]。恐竜の第四転子は背腹方向に対称な構造と、遠位側の縁が大腿骨体に対して急角度をなす非対称な構造に分けられる。獣脚類は前者にあたり、ヘレラサウルスやスタウリコサウルスおよびエオラプトルといった基盤的な恐竜、および鳥盤類と竜脚類は後者に該当する[6]。
^ abcPersons IV, W. S., & Currie, P. J. (2011). The tail of Tyrannosaurus: reassessing the size and locomotive importance of the M. caudofemoralis in non‐avian theropods. The Anatomical Record: Advances in Integrative Anatomy and Evolutionary Biology, 294(1), 119-131.
^Carrano, M. T., & Hutchinson, J. R. (2002). Pelvic and hindlimb musculature of Tyrannosaurus rex (Dinosauria: Theropoda). Journal of Morphology, 253(3), 207-228.
^Ker Than (2013年4月12日). “恐竜の胚、卵の中で“胎動”していた”. ナショナルジオグラフィック協会. 2023年8月6日閲覧。
^ abNesbitt, S. J.; Stocker, M. R.; Small, B. J. & A. Downs (November 26, 2009). “The osteology and relationships of Vancleavea campi (Reptilia: Archosauriformes)”. Zoological Journal of the Linnean Society157 (4): 814–864. doi:10.1111/j.1096-3642.2009.00530.x.