男爵にふさわしい銀河旅行
『男爵にふさわしい銀河旅行』(だんしゃくにふさわしいぎんがりょこう)は、速水螺旋人による日本の漫画。『月刊コミック@バンチ』(新潮社)にて、2016年7月号から2021年12月号まで連載。同誌がリニューアルして『月刊コミックバンチ』となってからも、引き続き連載された。 あらすじむかしむかしそのまたむかし、銀河の星ぼしはそれぞれ王様や大公や伯爵や長官に治められていた。そんな領主の一人であるミハルコ男爵が、ランパチカやノンシャランを引き連れ、騎士ならば憧れぬ者はないという理想の乙女・アースライト姫を求める旅路を描く。 以下の節分けについて、天球トラベルガイド編以外は本項目における解説のための便宜上のものである。 序盤基本的に1話で1つのエピソードを描く形式をとっている。 惑星スパロウランドの男爵・ミハルコは、金目当ての縁組を勧めてくる伯父に反発し、計算娘のランパチカを引き連れ、理想の乙女・アースライト姫を求める旅を続けている。途中、吟遊詩人のノンシャランを助けたところ、ミハルコに惚れ込んだ彼女は従者としてついてくることになった。 天球トラベルガイド編旅の途中、ある惑星で古い本を開いたミハルコは、奇妙な世界に迷い込む。そこで出会った案内知性のメルカトラから、自分が『天球トラベルガイド』という本の中にいると知ったミハルコがランパチカと連絡をとると、現実ではミハルコは気絶しており、元に戻るには本がミハルコの体の近くにある必要があるにもかかわらず、トラベルガイドは書画骨董を愛するガラクタ公爵の家来が買っていってしまったことがわかる。 ランパチカたちは男爵の旧友・サッヴァ伯爵たちの協力を得て、様々なトラブルを乗り越えガラクタ公爵のもとへたどり着く。ガラクタ公爵は古いロボットで、彼の生きてきた時代の話ができる者もおらず、孤独を埋めるために古い時代のものを集めていたのだった。一方、メルカトラが利用者のため、ガイド発行当時の古い銀河の旅行プランをひたすら作り続けているだけなのを見かねたミハルコは、ランパチカに命じ、ガラクタ公爵所蔵の古い人形端末に、メルカトラを接続させる。 こうしてガラクタ公爵は思い出を語り合う相手ができ、メルカトラは自身で旅ができるようになり、ミハルコも自分の体に戻ることができた。また、寂れていたガラクタ公爵の所領は、メルカトラの話を聞きに来た歴史学者たちが訪れ、それが噂を呼び観光で活気づいたとのことである。 終盤ミハルコがノンシャランを恋愛対象として意識し始める。未来では「ミハルコは理想の乙女と結ばれた」という伝承が伝わっていることを聞いたノンシャランは拗ねていたが、ミハルコとノンシャランは恋仲となる。 ミハルコはついにアースライト姫と会うことがかなう。ミハルコがアースライト姫に、多くを得ることとなった旅のきっかけになってくれたことへの礼を伝えると、ミハルコを真の騎士と認めたアースライト姫はサッヴァ伯爵に会わせてほしいと頼む。それというのも、アースライト姫はサッヴァに恋していたためだが、サッヴァは男色家であったため根本的に話にならなかった。それでもアースライト姫はへこたれず、性転換して男性になり、想いを繋げることを目指すが、技術的には容易なれど、彼女が「理想の乙女」であるために、実行してくれる者がいない。 そんな折、同行していたミハルコが、以前突然なにかの礼として渡された鍵を誤って宿の扉に差し込むと、異様な空間が目の前に現れた。そこは御都合院という、因果を操り、銀河帝国の力の源となる場所であり、下手をすると宇宙消滅の危機すらあるものの、願いを叶えることのできるものであった。 御都合院の者たちも、鍵を持つミハルコのことを認め、3つの願いを叶えてくれるという。ミハルコが1つ目の願いでアースライト姫を男性「理想の騎士・アースライト」にすると、アースライトはいまはお互いのことを知るだけで良いと迫り、サッヴァに同行することを了承させる。さらに、2つ目の願いでノンシャランが新たな理想の乙女となった。 ミハルコがノンシャランを紹介するためスパロウランドに戻ると、何やら慌ただしい。それというのも、旅行記が人気を博す旅人騎士・レグルス卿が訪ねてくるためで、その正体は銀河帝国の皇太子であるという。 レグルス卿はミハルコの活躍をうたったバラッドを褒め称える一方、自身も様々な困難に出会い、それを打ち破る。しかし、それらの困難は通常ならば到底発生し得ないものであった。 レグルス卿はノンシャランに目をつけるが、ノンシャランは相手にしない。レグルス卿が身分を誇示してなおノンシャランに拒絶されると、スパロウランド男爵家の廃絶を宣言して近衛兵を呼び寄せ、抵抗しようとしたミハルコを監獄惑星へ送ってしまう。 ミハルコはしばらく監獄惑星でロケット解体の仕事に従事していたが、自身を解体してやってきたランパチカと合流に成功する。ランパチカはノンシャランからの伝言を携えており、いわくレグルス卿の冒険は御都合院を利用したインチキで、さらに、今のところ成功していないものの、いずれ御都合院の力でランパチカの心を操ろうとしているという。 これに発奮したミハルコはランパチカの持ってきた鍵で御都合院へ行き、彼らのサービスでスパロウランドで帰り着く。城にて伯父やノンシャランを救い出し、レグルス卿と対峙する。レグルス卿はなおも御都合院を利用してミハルコを討ち取ろうとするも、ミハルコは通信端末を奪い取り、3つめの願いとして御都合院の解散を命ずる。 これによって宇宙の因果は破れ、時空が狂い、「宇宙はこんがらがったりスッキリしたりでえらい事になった」が、多大な負担がかかっていた御都合院の者たちはひどく喜ぶ。礼にうかがわなければならないと呟くそのうちの一人は、手に鍵を持っていた。 結末旅館でアルバイトをする、男爵というあだ名の美晴子は、強く我を通そうとする後輩に「迷ってみろ」と助言する。後輩から「先輩こそまっすぐで迷ってない」と言われると否定するものの、迷うのもなかなか難しく、迷いたいと呟く。すると男爵の冒険についての歌が流れてきて、別次元まで迎えに来たランパチカやノンシャランを見た彼は自身がスパロウランドの男爵・ミハルコであることを思い出す。元の次元では、星の場所や帝国まで散り散りばらばらとなっていた。 スパロウランドへの航路を探すミハルコ。復讐を我が手で果たそうとするレグルス卿の存在。巻き込まれてしまった後輩は地球へ帰れるのか。ミハルコの旅はまだまだ続くのであった。 主な登場人物ミハルコ一行
その他の登場人物
書誌情報
脚注出典
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