注意義務注意義務(ちゅういぎむ)とは、法律上要求される一定の注意を払う義務をいう。 私法上の注意義務注意義務の種類私法上の注意義務には善良な管理者の注意義務(善管注意義務)と自己の財産に対するのと同一の注意義務(自己のためにするのと同一の注意義務)がある。善管注意義務は自己の財産に対するのと同一の注意義務よりも程度の高い注意義務である[1]。
以上の抽象的軽過失と具体的軽過失をあわせて広義の軽過失という[5]。これに対して必要な注意を著しく欠く状態を重大な過失あるいは重過失という[5][3]。 日本の民法上の注意義務
民法上の注意義務としては民法は特定物債権における債務者の保管義務の通則として民法400条に善管注意義務を定め、特に注意義務が軽減される場合(民法659条等)を個別的に規定することとしている[5]。なお、民法400条の善管注意義務は2017年の改正民法で「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意」と具体化された(2020年4月1日施行)。
重大な過失が問題となる場合としては次のような例がある。
→「民法698条」を参照
その他特別法で重大な過失が問題となる場合としては次のような例がある。 会社の取締役の注意義務日本の会社法取締役と会社との関係は委任により規律される(会社法330条)ため、取締役は会社に対し善管注意義務を負う(民法644条準用)。具体的にはコンプライアンス義務が挙げられる。 取締役は会社に対し、善管注意義務のみならず忠実義務を負担する(会社法355条)。忠実義務の内容とは、会社の利益を犠牲にして自己の利益を図ってはならない義務と説明される。 忠実義務と善管注意義務の関係については、言い換えただけと考える同質説(鈴木竹雄、河本一郎、森本滋、八幡製鉄事件(最大判昭和45年6月24日民集24巻6号625頁))と、取締役に課せられた独立の義務と考える異質説(田中誠二、前田庸、北沢正啓)がある。異質説に立つ場合、利益相反取引の禁止(会社法356条1項2号・3号)、競業避止義務(356条1項1号)、報告義務(会社法357条)、お手盛り禁止(報酬規制、会社法361条)などは、忠実義務の具体化である。従来は同質説が通説的であったが、現在は異質説が有力化している。 ビジネス・ジャッジメントルール経営判断の原則ともいう。取締役が業務執行に関する意思決定の際に適切な情報収集と適切な意思決定プロセスを経たと判断されるときには、結果として会社に損害が発生したとしても善管注意義務違反に問わないとする原則。アメリカ合衆国で判例法として発展し、近年の日本の裁判例にも影響を与えているといわれる。 刑法上の注意義務刑法における過失の本質は、注意義務違反であるとされる(新過失論においても、結果回避義務違反を「客観的注意義務違反」とよぶことがある)。 →詳細は「過失 § 刑事責任における過失」を参照
脚注
参考文献関連項目 |
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