戦後、NHKラジオの『英語会話』を最長不倒の21年間担当したことから、英語教育者として認識されているが、本来アメリカ改革派教会の牧師であり、アメリカのミッションから戦後明治学院に派遣された宣教師である。それゆえに専門は教育心理学である。英語教育者としては、「英語で考える」"Think in English"を提唱した人物として知られているが、そもそも「英語で考える」とは、戦前文部省の顧問として来日した英国人ハロルド・E・パーマーにさかのぼり、松本亨のオリジナルではない。英語と日本語は統語的に異なる言語であるから、両者を同じ回路で使用してはならないという考えが松本亨の本来の主旨である。
言語学者の大津由紀雄は、松本亨のその考え方は、定義が曖昧である限りにおいて、英語教育の指標として適当ではないが、英語で表出する際、文法を考えながら英語を組み立てるのではなく、ほぼ無意識に文章を作り出す「自動化」を意味しているのであれば、正しい考え方であるとし、また第二言語習得理論の専門家の白井恭弘もインプット理論からみて、松本亨の英語学習法における主張には一定の妥当性があると述べている。キリスト者としては、アメリカにおける自由主義神学、及び世界教会運動につながる超教派主義の影響を強く受けており、キリスト教社会主義に近い立場をとっていた。アメリカ滞在中は、学生キリスト教運動(Student Christian Movement)の指導的立場で活動し、戦後は、教育・建築の両面から、母校明治学院の再建に関わった。
主要著書
偏見を越えて(Beyond Prejudice: A story of the Church and Japanese Americans)(1946)
Yoshifumi Mikuma, "A Reconsideration of 'Thinking in English': Based on the English Teaching Theory of Toru Matsumoto, 『中部地区英語教育学会研究紀要』中部地区英語教育学会、No. 21, 1991年10月1日。