有界型空間数学、特に函数解析学における有界型空間(ゆうかいけいくうかん、ゆうかいがたくうかん[要出典]界相空間[1](かいそうくうかん、英: bornological space; ボルノロジー空間)は、集合や函数の有界性の問題をある意味で考えるのに最低限必要な構造というものを抽出した空間のクラスである(これは位相空間が連続性の問題を考えるのに最低限必要な構造を抽出したものであったことと同様の考え方である)。界相空間を初めて考えたのはマッキーで、命名はブルバキによる(フランス語で有界を意味する borné (と位相 topology) に由来)。 有界集合系任意の集合 X について、X 上の有界集合系あるいは界相有界型[要出典] (bornology) とは、X の部分集合族 B で、
を満足するものをいう。このとき集合族 B の各元は X の有界集合と呼ばれ、対 (X, B) を界相付き集合 (bornological set) と言う。 有界集合系 B の有界基あるいは有界集合の基本系 (base of the bornology) とは B の部分集合 B0 で B の各元が B0 の元の部分集合となっているときに言う。 例
有界写像空間 X および Y の有界集合系 B1 および B2 がそれぞれ与えられているとき、写像 f: X → Y が有界写像であるとは、f が X の任意の B1-有界集合を Y の B2-有界集合へ写すときに言う。さらに加えて f が全単射ならば逆写像 f−1 もまた有界写像であり、このとき f は界相同型 (bornological isomorphism) であると言う。
線型有界集合系体 K 上のベクトル空間 X に対し、X 上の線型界相 (vector bornology) とは、X 上の有界集合系 B であってベクトルの加法およびスカラー乗法について閉じており、さらに均衡包が定式化できる(即ち、二つの有界集合の合併がまた有界である、など)ときにいう。さらに加えて B が凸包の定式化で閉じている(即ち、有界集合の凸包がふたたび有界である)とき、B は凸線型界相 (convex vector bornology) であるという。また、X の有界部分空間が自明な部分空間(即ち 0 のみからなる部分空間)であるとき、界相は分離している (separated) という。有界集合系 B の部分集合 A が界呑有界型的[要出典] (bornivorous) であるとは、それが任意の有界集合を併呑するときに言う。線型界相の場合、 A が界呑であるのは任意の有界均衡集合を併呑するときであり、凸線型界相の場合には任意の有界円板を併呑するとき A は界呑である。 位相線型空間の界相任意の位相線型空間 X は、X の部分集合 B が有界(フォンノイマン有界)であるというのを、X の零ベクトルを含む任意の開集合 U に対して B ⊂ λ0U を満たすスカラー λ0 が存在することと定めることにより、有界集合の全体として有界集合系が与えられる。X が局所凸位相線型空間ならば B ⊂ X が有界となる必要十分条件は X 上の任意の連続半ノルムが B 上で有界となることである。 X の有界部分集合全体の成す集合族は X の界相あるいはフォンノイマン界相 (Von-Neumann bornology) と呼ばれる。 誘導位相ベクトル空間 X と線型界相 B がはじめに与えられているとき、X の凸、均衡かつ界呑な部分集合全体の成す集合族を T とすると、T は X 上の局所凸位相に対する 0 の近傍基を成す。即ち T は X の線型空間構造と両立する。 界相空間函数解析学において、界相空間とは、局所凸位相線型空間であって、その位相がその自然な有界集合系から回復できるものを言う。明示的に述べれば、連続的双対空間 X′ を持つ局所凸ハウスドルフ空間 X が界相空間であるとは、以下の同値な条件の何れか(従って全部)を満足するときに言う。
例以下の位相線型空間は界相空間である。
性質
バナハ円板X が位相線型空間のとき、X の部分集合 D が円板であるとは、それが凸かつ均衡であることを言う。円板 D はその線型包 span(D) を併呑し、ゆえにそのミンコフスキー汎函数がこの空間上の半ノルムを成す (これを μD または pD と書く)。空間 span(D) にこの半ノルムの誘導する位相を入れて得られる位相空間を XD とかく。この空間の零ベクトル 0 の近傍基は、r が任意の正の実数を亙るときの rD の形に書ける集合の全体からなる。 この空間は今の場合必ずしもハウスドルフではない(例えば、X = R2 で D を x-軸とするとき)。しかし、D が有界円板で X がハウスドルフならば、半ノルム μD はノルムになり、XD はノルム空間になる。D が有界で点列完備な円板で X がハウスドルフならば、空間 XD は実はバナハ空間になる。また、XD がバナハ空間になるような X の有界円板はバナハ円板 (Banach disk), 劣完備 (infracomplete), 有界完備[訳語疑問点] (bounded completant) などと呼ばれる。 局所凸ハウスドルフ空間 X と X の有界円板 D に対し、
例
超界相空間位相線型空間 X の円板が劣界呑 (infrabornivorous) であるとは、それが任意のバナハ円板を併呑するときに言う。X が局所凸ハウスドルフならば、円板が劣界呑であるための必要十分条件は、それが任意のコンパクト円板を併呑することである。局所凸空間が超界相空間 (ultrabornological) であるとは、以下の条件
の何れかを満たすときに言う。 性質
関連項目注注釈出典参考文献
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