大食と快楽の寓意
『大食と快楽の寓意』(たいしょくとかいらくのぐうい、蘭: Allegorie op de gulzigheid、英: Allegory of Gluttony and Lust)、または『不摂生の寓意』(ふせっせいのぐうい、英: An Allegory of Intemperance)は、初期ネーデルラント絵画の巨匠ヒエロニムス・ボスが1490–1500年ごろに板上に油彩で制作した絵画である。この作品はいくつかに分断された三連祭壇画の一部[1][2][3][4][5]で、左翼パネルの下部3分の1に当たるものである。上部3分の2に当たる部分は『愚者の船』として知られる作品で、現在、パリのルーヴル美術館に所蔵されている[2][3][4][5]。本作は、ニューヘヴンのエール大学付属美術館に所蔵されている[1]。 祭壇画本作は、『愚者の船』 (ルーヴル美術館)、『守銭奴の死』(ワシントン・ナショナル・ギャラリー) 、『放浪者』(ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館、ロッテルダム) とともに三連祭壇画を構成していた[1][4][5]。事実、本作、『愚者の船』、『守銭奴の死』、『放浪者』は、同じ木から採られた板に描かれていることが明らかになっている。これらの作品はまた、左上から右下へと描き込まれた平行な線 (ハッチング線) においても共通している。おそらく左利きの画家ボスによる同じ線だと考えられる[4]。 三連祭壇画の左翼パネルであった『愚者の船』および『大食と快楽の寓意』と、右翼パネルであった『守銭奴の死』は、放蕩と吝嗇の両極端を表していたのであろう。左翼パネルが『愚者の船』と『大食と快楽の寓意』に分断されているのに対し、右翼パネルであった『守銭奴の死』はほぼ原形をとどめている[5]。なお、三連祭壇画の中央パネルであったと考えられる『カナの婚宴』は現存せず、複製だけがボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館に所蔵されている[4]。 作品本作の主題は『愚者の船』同様、大食と好色に対する風刺である。水面に浮かぶ酒樽にまたがり、木の枝を持ち、ラッパを吹く肥満した男が大食を端的に表している。この酒樽の男を、ピーテル・ブリューゲルは『謝肉祭と四旬節の喧嘩』 (美術史美術館、ウィーン) で用いている。ミートパイを頭にのせて泳ぐ男は、なにがなんでもミートパイを手放さないつもりのようである[5]。 一方、好色を表すモティーフは、テントの中で酒を酌み交わす男女である[5][6]。「豊穣の神バッコスと農耕の女神ケレスが立ち去ると、愛の神ウェヌスは凍えてしまう」という古代ローマ時代の作家テレンティウスの警句は、中世でもよく知られていた。そして、説教者は聴衆に向かって、その意味するところとして「大食と飲酒は淫欲をかきたてる」と倦むことなく説いたのである[6]。なお、酒を酌み交わす男女は、ボスの『七つの大罪と四終』 (プラド美術館) 中の好色にも見られる光景である[5]。 関連作品
脚注
参考文献
外部リンク
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