夜と夢

夜と夢』(よるとゆめ、Nacht und Träume作品43-2、D827は、オーストリアの作曲家フランツ・シューベルト1825年頃作曲した歌曲マテウス・フォン・コリンの詩による。

概要

  • シューベルト版『夢のあとに』(ガブリエル・フォーレの歌曲)と呼んでもよい内容の作品で、過ぎ去った美しい夜と夢に対する限りない憧憬を歌った、シューベルトのあらゆる歌曲の中で最も美しい曲の一つ。
  • ロ長調で始まりきわめてゆっくりとしたピアノの刻みの上に、歌声部が極めて美しい旋律を歌う。この刻みを美しく響かせるのは至難の業で、20世紀を代表する歌曲ピアニストジェラルド・ムーアは最も難しい曲のひとつ、と述べている。また、歌い手にとっては、限りなく続くレガートを保つための、高度なブレス・コントロールを要求される難曲である。
  • 中間部でト長調ロ長調の六度の準固有和音調)への急激な転調があり、大きく感情が動くが、最初の静けさが戻って、美しく全曲を閉じる。
  • かつて、往年の名テノール歌手レオ・スレザークの極度に耽美的な歌唱がこの曲の理想的演奏とされた。

原詩全文

Nacht und Träume

Matthäus von Collin

Heilge Nacht, du sinkest nieder;
nieder wallen auch die Träume,
wie dein Mondlicht durch die Räume,
durch der Menschen stille Brust.

Die belauschen sie mit Lust;
rufen, wenn der Tag erwacht;
kehre wieder, heilge※ Nacht!
Holde Träume, kehret wieder!

ベーレンライター原典版では“heilge“(聖なる)ではなく“holde“(やさしき)となっている。

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