国旗
国旗(こっき、英語: National flag)は、国家を象徴する旗のこと。学校、議会、裁判所、軍隊や国際的な会議などの公的行事や公的機関で掲揚され、またその国の国民によっても掲揚される。また船舶や軍隊の所属を表すことにも使用される。国家的な弔意を示す場合にはこれを弔旗にする。 歴史歴史的には、戦場での所属を表すものとして使われた軍旗に起源を持つ。軍事的な意味から離れて所属する国家を表すために旗を掲揚する習慣は、船舶の所属を示すための商船旗として、17世紀初期に始まった。18世紀終わりごろから、各国のナショナリズム的意識の高まりによって、国民の間でも国旗を掲揚することが望まれるようになった[1]。特にアメリカ合衆国の国旗は1777年に軍艦旗から採用されたものであるが、イギリスからの独立後、独立当時の州の数である13個の星をあしらった星条旗が、アメリカ合衆国の象徴として掲揚されるようになった。フランスのトリコロールは、1790年代にフランス第一共和政の象徴となった。イギリスのユニオンフラッグは、17世紀中に軍艦旗としてデザインされたものであるが、1908年より以前には、公的にはイギリスの国旗としては見なされていなかった[2]。 多くのヨーロッパの国では、中世の軍旗を元にして、19世紀中頃から20世紀初頭までに国旗を制定した。例えば、スウェーデンの国旗は1906年に採用されたが、伝説では起源は13世紀にまで遡る。スイスの国旗は1889年に決定されたが、スイス国旗も中世の軍旗に起源を持つ。 ヨーロッパ外の国家も19世紀後半に国旗を定めた。例えば日本は1870年(明治3年)制定の商船規則によって、清は1890年に国旗を規定している。また、19世紀中にはほとんどの南アメリカの国家も国旗を決定している(ペルーは1820年、ボリビアは1850年、コロンビア1860年、ブラジル1822年など)。 陸上における旗陸上において用いられる旗には、市民旗(FIAV記号)、政府旗 ()、軍用旗 () の3つの区別がある。政府旗は政府機関によって公的機関にのみ掲げられる旗であり、市民旗は政府に関係のない一般の市民も使用できる旗である。軍用旗は陸軍、空軍などの軍事機関によって使用される旗である。 実際には、少なからぬ国(例えばアメリカ合衆国やイギリス)は、この3つを区別せず同じ意匠の旗を使用している。国旗(英語: national flag)はこの3つを区別せず呼ぶときに使われる ()。しかし、特にラテンアメリカ諸国などの多くの国では、市民旗と政府旗が厳密に分けられていることもある。多くの場合では、市民旗のデザインは、政府旗から紋章を取り除くなどして単純化したものである(ドイツやベネズエラ・スペインなど)。たとえば、スペインの国旗において政府旗および軍用旗には、国章が描かれている[3][4]。 しかし、政府旗と軍旗を区別している国は少ない。中国、台湾そして日本は、この数少ない例外である。北欧の国家においては、国旗の短辺に三角の切れ込みが入った旗(スワローテイルと呼ばれる)が、戦時の旗や海軍旗として使われている。 海上における旗海上において、船籍を表すための旗は国籍旗(Jack)と、所属を示す旗(陸上の国旗と同様に、船旗にも3種類の区別がある ensign)がある。 民間の商船によって掲げられる市民旗(商船旗、civil ensign。)、公的機関に所属する非武装の船舶用の政府旗(state ensignsまたはgovernment ensigns; )、そして軍艦によって掲げられる海軍旗(軍艦旗、war ensigns、naval ensignsとも。 )である。 罰則諸外国においての罰則国旗は、その国を象徴し尊厳を表すものとして大切に扱われることが多いが、一方では国家を侮辱する目的で国旗を踏みつける、焼く、引き裂くなどの行為に及ぶことがある。こうした国旗への冒瀆行為は、諸外国の現地法に基づき犯罪として扱う場合と扱わない場合に分かれ、刑罰の対象となる場合は、国や地域により一定期間の懲役又は禁錮、罰金等に処されることが多い。ただし国章が描かれた国旗の場合は、その国旗は、その国の所有物と見做される場合があるので、日本のような外国国章損壊罪が存在しなくても、国章付き国旗の所有者は、その侮辱された国として、罰則等が科せられる可能性はある。 →詳細は「旗の冒涜」を参照
日本日本では日章旗については思想・良心・表現の自由との兼ね合いで、自己所有のものである限り処罰されないが、外国旗に関しては外国国章損壊罪があり[5]、数少ないながら有罪とした判例も存在する(最高裁第三小法廷決定・昭和40年4月16日) 韓国韓国国内では北朝鮮の国旗を無許可で掲揚すると、国家保安法により処罰される可能性がある[7]。 シンガポールシンガポールでは国旗と国歌の尊厳を定めた法律が存在し、シンガポール国旗を冒瀆することを禁じており、服や衣装に使用するにも大臣の許可を必要とする[8]。 シンガポール国内では公的な場(チケットを購入しないと入れないスタジアム内は公的な場とはみなされない)での外国国旗の使用が禁止されている[9]。 ベトナム現在のベトナム社会主義共和国領土内でかつての南ベトナム(ベトナム国及びベトナム共和国)の国旗を掲げることは禁じられている[10] ウクライナウクライナでは2015年に制定された「邦訳:ウクライナにおける共産主義と国家社会主義(ナチス)全体主義体制の非難とそのシンボルの宣伝禁止、ウクライナ語原文: Про засудження комуністичного та націонал-соціалістичного (нацистського) тоталітарних режимів в Україні та заборону пропаганди їхньої символіки」に基づいて、かつての国旗であるソ連の国旗とナチス時代のドイツの国旗の使用が禁じられている。[11] ドイツ現在のドイツ領土内で、ナチス時代の国旗であるハーケンクロイツ旗は民衆扇動罪の関係から公的な場で使用すると処罰の対象となる(ただし私的空間での使用は禁じられていない)。 国旗と同様の扱いを受けている旗この項目では正式な国旗ではないが国旗とほぼ同様の旗を記す。 日本
ロシア台湾
韓国・北朝鮮
ベトナム
ドイツドイツには、市民および政府が使用できる市民旗と、政府と軍のみが使用できる政府旗があるが、市民旗の中央に国章を配置した、政府旗によく似た非公式の旗が市民によって用いられることもある。
北マケドニア北マケドニアは、マケドニア地域を領するギリシャの要求に従って国旗を改訂した経緯があるが、以降も旧国旗が新国旗と並んで用いられることがある。
その他
分類→「旗章学用語」および「パーティション (紋章学)」も参照
デザイン
モチーフ
掲揚方法明文化されているわけではないが、国旗を掲揚する際には、国際的なプロトコール(慣習)が成立している[14][15]。 一般的な慣習
複数の国旗を掲げる際の慣習
半旗国家的な人物の死去などの際、弔意を表すために国旗を旗竿の最上位より下に掲げる掲揚方法を半旗と言う。半旗を掲げる場合は半旗だとはっきり判るように掲げなければならない。また、半旗を掲げる際は、一旦旗竿の最上部まで上げた後に半旗にする。 収納の際には、一旦最上部まで上げてから収納する。構造上の関係で半旗にできない場合は竿頭を黒布で覆うやり方で弔意を示す弔旗にする方法もある。日本では国旗球を黒布で覆い、日の丸の長辺と同じくらいの黒布を旗の上部に付けて掲げる。 ただし、サウジアラビアの国旗は半旗にすることが法律で禁じられている。 垂直掲揚多くの国旗は、垂直に掲揚される場合は、単に旗竿を右へ90度回転させるのみで良い。しかし、いくつかの国では、国旗を垂直に掲揚する際の特別なデザインや手順を定めているものもある。例えば、国旗中の紋章を横に配置し、縦に掲揚された場合でも正しく見られるようにするなど。
ブラジル、オランダ、パキスタン、サウジアラビアにも垂直掲揚のための国旗があり、この4か国では通常の国旗での垂直掲揚を禁じている。 他には北朝鮮国旗にも垂直掲揚用の国旗がある。 また、アメリカ合衆国の国旗及びギリシアの国旗が垂直に掲揚される場合には、常にカントンが左上に来るように、右へ90度回転させた後に裏返しにするのが正しい手順である。
一覧→詳細は「国旗の一覧」を参照
脚注注釈
出典
関連項目 |
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