元素の中国語名称 (げんそのちゅうごくごめいしょう)は、中国語 における化学元素 の表記と発音のことであり、現在では、1元素につき漢字 1文字、1音節 である。古来の漢字のうちに化学元素を表すのに適切な文字がない場合は、形声 の方法で新しい漢字 が作られる。元素を表す漢字の部首 は、金属元素 、気体元素 などの区別を反映している。中華人民共和国 (大陸)と中華民国 (台湾)では若干異なる字を用いる。
部首
現在では、化学元素を表す漢字は、必ず次の4種類の部首 のいずれかに属する形声字 である。過去にはこの法則に合わない漢字も使われていたが、そのような字はこの法則にあてはまる字に置き換えられた。
なりたち
2017年1月現在、化学元素は118種類が国際純正・応用化学連合 (IUPAC)で命名されており、そのうち全種類(118字)について漢字が決まっている。118字のうち、古来物質の種類を表す字は、原子番号 順に、「硼」(ホウ素 。その化合物のホウ砂 が漢方薬 として知られていたが、単体のホウ素は中国で知られていなかった)、「硫」(硫黄 )、「鐵」(鉄 )、「銅 」、「銀 」、「錫 」、「金 」、「汞」(水銀 )、「鉛 」のわずか9文字である。それ以外の109文字は、19世紀以降に元素を表すために転用または考案された字である。
109文字のうち、原子番号 順に「氫 」、「碳 」、「氮 」、「氧 」、「磷 」、「氯 」、「溴 」、「鉑 」の8文字は、意訳により元素を表すために転用または考案された。
「氫 」:水素 は当初「輕氣」と訳した。「輕」から音符「巠 」を取り出し気体元素を示す「气」と組み合わせた。
「碳 」:炭素 は当初「炭」と訳した。これに固体の非金属元素を示す「石」を組み合わせた。
「氮 」:窒素 は当初「淡氣」と訳した。「淡」から音符「炎」を取り出し「气」と組み合わせた。
「氧 」:酸素 は当初「養氣」と訳した。「養」から音符「羊」を取り出し「气」と組み合わせた。
「磷 」:リン は本来鬼火 を表す「燐」の転用で表した。次に、これの「火」を「石」に取り替えて、「磷 」の転用で表した。「磷 」は本来「磷磷 」で水の流れや玉石の輝きを形容する漢字であった。
「氯 」:塩素 は当初「緑氣」と訳した。「緑」から音符「彔 」を取り出し「气」と組み合わせた。
「溴 」:臭素 は本来潤いを表す「溴 」の転用で表した。
「鉑 」:白金 は当初「白金」といった。これを1文字にまとめるために、本来金属箔を表す「鉑 」を転用した。
109文字のうち、残りの101文字は、音訳 により元素を表すために転用または考案された。よって、漢字の旁(形声字 の音符)の字義と元素の性質との間に全く関連がない。その代わり、旁の発音(形声字の発音)が、西洋の言語でその元素を意味する単語のうちの1音節を模している。第1音節を模する例が多い。
第1音節を模する例
ヘリウム を表す「氦 」は、音符「亥」に従い「hài/ㄏㄞˋ 」と読む。
セレン を表す「硒 」は、音符「西」に従い「xī/ㄒㄧˉ 」と読む。
リチウム を表す「鋰 」は、音符「里」に従い「lǐ/ㄌㄧˇ 」と読む。
第2音節を模する例
ラドン を表す「氡 」は、音符「冬」に従い「dōng/ㄉㄨㄥˉ 」と読む。
砒素 (英語では「arsenic」)を表す「砷 」は、音符「申」に従い「shēn/ㄕㄣˉ 」と読む。
アルミニウム を表す「鋁 」は音符「呂」に従い「lǚ/ㄌㄩˇ 」と読む。
第3音節を模する例
沃素 (英語では「iodine」)を表す「碘 」は、音符「典」に従い「diǎn/ㄉㄧㄢˇ 」と読む。
ところで、109文字のうちには、本来元素とは無関係の意味であった既存の漢字であって元素の名称を表すのに転用されたものと、元素の名称を表すために新たに考案されたものとがある。前者の例は前出の「鉑 」「磷 」「溴 」であり、この場合、中国の古典にそれらの字が見えるからといって、中国でその時代に白金、リン、臭素が知られていたことの証拠とはならないことは勿論である。
また、紛らわしいことに、過去に別の元素を意味していた漢字を新発見の元素の命名に転用した例がある。
過去には、2種類の元素を同じ字で表したことがあった。
発音
元素を表す漢字は全て形声字 であるので、大体、旁 の発音に従って発音する。ただし、古来物質の種類を表す9文字を除いても例外がある。例えば、「氧 」(酸素 )の発音は、「羊」(yáng )と同じではなく「養」と同じ「yǎng 」であり、「鈉 」(ナトリウム )の発音は「內 」(nèi )と同じではなく「納 」と同じ「nà 」である。
大陸の普通話 の発音では、声調 も含めて全く同音に発音される元素の組が一つある。「硒 」(セレン )と「錫 」がそれであり、発音は「xī 」である。
台湾の国語 では、声調 も含めて全く同音に発音される元素の組が一つある。*「硫」(硫黄 )と「鎦 」(ルテチウム )が「liú 」[ 2] [ 3]
である。
広東省 、香港 などで使う広東語 では、次の4組が同音である。
大陸と台湾の差異
新発見の元素の漢字による命名は、中華人民共和国 (大陸)と中華民国 (台湾)のそれぞれで行われる。大陸では、政府の全国科学技術名詞審定委員会 が命名する。台湾では、国立編訳館 が命名する。
命名がそれぞれで行われる結果として、大陸では簡体字 を用い台湾ではこれを用いないという点を除外しても、大陸の用字と台湾の用字との間には若干の差異が生じている。大陸の用字(繁体字)と台湾の用字とを比較対照し、両者の用字が異なる元素を探すと、次の表のように14種類が見つかる。表には、元素の発見年を付記している[ 4] 。
珪素とルテチウムを除くと、用字が大陸と台湾で異なる元素の発見年は、1937年から1974年までの約40年間に集中している。そして、1980年以降に発見された元素は、簡体字と繁体字の差はあるものの、大陸と台湾で同じ字で表す。新元素の発見から漢字による命名までのタイムラグを考慮すると、この結果は、大陸で中華人民共和国 が成立した1949年 以降1970年代が終わる頃まで、大陸と台湾との間の交流が活発でなかったことの反映と解釈できる。
珪素とルテチウムは、中華人民共和国の成立前に既に漢字で「矽 」「鎦 」と命名されていた。その後、同国では、「矽 」が「硒 」(セレン )および「錫 」と同音であり、「鎦 」が「硫」(硫黄 )と同音であるのを嫌い、1955年にそれぞれ「硅」、「鑥 」に改名した[ 10] 。その結果、この2種類の元素の用字は、大陸と台湾で異なることとなった。
新発見の元素の命名に当たり大陸が採用する原則は大体次のとおり[ 11] 。
できるだけ既存の漢字から選定し、新しい字の考案は避ける。
できるだけ、画数がほどほどで、形が美しく、構造が単純で、ほかの字と区別しやすい字を選定または考案し、奇怪な字は避ける。
発音が国際純正・応用化学連合 (IUPAC)の命名に近い形声字を選定または考案する。
既存の元素と同音になる字や読み方が複数ある字は避ける。
既存の漢字から選定する場合は、生活常用字をできるだけ避ける。
大陸と台湾、中国語文化圏 の科学技術用語の統一のために、繁体字と簡体字で差がない字が最も好ましい。
なお、Unicode のCJK統合漢字 には旧称の釒拉、釒都は収録されていない。2024年現在CJK統合漢字拡張JブロックのそれぞれU+33185(釒拉)、U+331BE(釒都)に追加が予定されている。[ 12] [ 13] [ 14]
固有名詞の表記との比較
元素には、地名、科学者の名前など、固有名詞 にちなんで命名されたものが多くある。そこで、中国語における元素の名称と、元素の名称の語源となった固有名詞の中国語表記とを比較したのが次の表である。次の表では、銅 (英語「copper」など、キプロス にちなむ名称を使う言語がある)と水銀 (英語「mercury」など、メルクリウス にちなむ名称を使う言語がある)は割愛している。
一覧表
「Z」欄は、原子番号 。
「記号」欄は、元素記号 。
「大陸簡体」欄は、中華人民共和国の簡体字 。
「大陸繁体」欄は、この簡体字に対応する繁体字 。
「大陸発音」欄は、普通話 の発音(漢語拼音 )。
「台湾正体」欄は、中華民国(台湾)の漢字。
「台湾発音」欄は、中華民国の国語 の発音(漢語拼音)。
元素の中国語名称
Z
記号
日本語名称
日本語名称のソートキー
大陸簡体
大陸簡体のソートキー
大陸繁体
大陸繁体のソートキー
大陸発音
大陸発音のソートキー
台湾正体
台湾正体のソートキー
台湾発音
台湾発音のソートキー
1
H
水素
スイソ
氢
气+05
氫
气+07
qīng
qing1
氫
气+07
qīng
qing1
2
He
ヘリウム
ヘリウム
氦
气+06
氦
气+06
hài
hai4
氦
气+06
hài
hai4
3
Li
リチウム
リチウム
锂
金+07
鋰
金+07
lǐ
li3
鋰
金+07
lǐ
li3
4
Be
ベリリウム
ヘリリウム
铍
金+05
鈹
金+05
pí
pi2
鈹
金+05
pī
pi1
5
B
硼素
ホウソ
硼
石+08
硼
石+08
péng
peng2
硼
石+08
péng
peng2
6
C
炭素
タンソ
碳
石+09
碳
石+09
tàn
tan4
碳
石+09
tàn
tan4
7
N
窒素
チツソ
氮
气+08
氮
气+08
dàn
dan4
氮
气+08
dàn
dan4
8
O
酸素
サンソ
氧
气+06
氧
气+06
yǎng
yang3
氧
气+06
yǎng
yang3
9
F
弗素
フツソ
氟
气+05
氟
气+05
fú
fu2
氟
气+05
fú
fu2
10
Ne
ネオン
ネオン
氖
气+02
氖
气+02
nǎi
nai3
氖
气+02
nǎi
nai3
11
Na
ナトリウム
ナトリウム
钠
金+04
鈉
金+04
nà
na4
鈉
金+04
nà
na4
12
Mg
マグネシウム
マクネシウム
镁
金+09
鎂
金+09
měi
mei3
鎂
金+09
měi
mei3
13
Al
アルミニウム
アルミニウム
铝
金+06
鋁
金+07
lǚ
lv3
鋁
金+07
lǚ
lv3
14
Si
珪素
ケイソ
硅
石+06
硅
石+06
guī
gui1
矽
石+03
xì
xi4
15
P
燐
リン
磷
石+12
磷
石+12
lín
lin2
磷
石+12
lín
lin2
16
S
硫黄
イオウ
硫
石+07
硫
石+07
liú
liu2
硫
石+07
liú
liu2
17
Cl
塩素
エンソ
氯
气+08
氯
气+08
lǜ
lv4
氯
气+08
lǜ
lv4
18
Ar
アルゴン
アルコン
氩
气+06
氬
气+08
yà
ya4
氬
气+08
yà
ya4
19
K
カリウム
カリウム
钾
金+05
鉀
金+05
jiǎ
jia3
鉀
金+05
jiǎ
jia3
20
Ca
カルシウム
カルシウム
钙
金+04
鈣
金+04
gài
gai4
鈣
金+04
gài
gai4
21
Sc
スカンジウム
スカンシウム
钪
金+04
鈧
金+04
kàng
kang4
鈧
金+04
kàng
kang4
22
Ti
チタン
チタン
钛
金+04
鈦
金+04
tài
tai4
鈦
金+04
tài
tai4
23
V
バナジウム
ハナシウム
钒
金+03
釩
金+03
fán
fan2
釩
金+03
fán
fan2
24
Cr
クロム
クロム
铬
金+06
鉻
金+06
gè
ge4
鉻
金+06
gè
ge4
25
Mn
マンガン
マンカン
锰
金+08
錳
金+08
měng
meng3
錳
金+08
měng
meng3
26
Fe
鉄
テツ
铁
金+05
鐵
金+13
tiě
tie3
鐵
金+13
tiě
tie3
27
Co
コバルト
コハルト
钴
金+05
鈷
金+05
gǔ
gu3
鈷
金+05
gǔ
gu3
28
Ni
ニッケル
ニツケル
镍
金+10
鎳
金+10
niè
nie4
鎳
金+10
niè
nie4
29
Cu
銅
トウ
铜
金+06
銅
金+06
tóng
tong2
銅
金+06
tóng
tong2
30
Zn
亜鉛
アエン
锌
金+07
鋅
金+07
xīn
xin1
鋅
金+07
xīn
xin1
31
Ga
ガリウム
カリウム2
镓
金+10
鎵
金+10
jiā
jia1
鎵
金+10
jiā
jia1
32
Ge
ゲルマニウム
ケルマニウム
锗
金+08
鍺
金+09
zhě
zhe3
鍺
金+09
zhě
zhe3
33
As
砒素
ヒソ
砷
石+05
砷
石+05
shēn
shen1
砷
石+05
shēn
shen1
34
Se
セレン
セレン
硒
石+06
硒
石+06
xī
xi1
硒
石+06
xī
xi1
35
Br
臭素
シユウソ
溴
水+10
溴
水+10
xiù
xiu4
溴
水+10
xiù
xiu4
36
Kr
クリプトン
クリフトン
氪
气+07
氪
气+07
kè
ke4
氪
气+07
kè
ke4
37
Rb
ルビジウム
ルヒシウム
铷
金+06
銣
金+06
rú
ru2
銣
金+06
rú
ru2
38
Sr
ストロンチウム
ストロンチウム
锶
金+09
鍶
金+09
sī
si1
鍶
金+09
sī
si1
39
Y
イットリウム
イツトリウム
钇
金+01
釔
金+01
yǐ
yi3
釔
金+01
yǐ
yi3
40
Zr
ジルコニウム
シルコニウム
锆
金+07
鋯
金+07
gào
gao4
鋯
金+07
gào
gao4
41
Nb
ニオブ
ニオフ
铌
金+05
鈮
金+05
ní
ni2
鈮
金+05
ní
ni2
42
Mo
モリブデン
モリフテン
钼
金+05
鉬
金+05
mù
mu4
鉬
金+05
mù
mu4
43
Tc
テクネチウム
テクネチウム
锝
金+08
鍀
金+08
dé
de2
鎝
金+10
dā
da1
44
Ru
ルテニウム
ルテニウム
钌
金+02
釕
金+02
liǎo
liao3
釕
金+02
liǎo
liao3
45
Rh
ロジウム
ロシウム
铑
金+06
銠
金+06
lǎo
lao3
銠
金+06
lǎo
lao3
46
Pd
パラジウム
ハラシウム
钯
金+04
鈀
金+04
bǎ
ba3
鈀
金+04
bǎ
ba3
47
Ag
銀
キン2
银
金+06
銀
金+06
yín
yin2
銀
金+06
yín
yin2
48
Cd
カドミウム
カトミウム
镉
金+10
鎘
金+10
gé
ge2
鎘
金+10
gé
ge2
49
In
インジウム
インシウム
铟
金+06
銦
金+06
yīn
yin1
銦
金+06
yīn
yin1
50
Sn
錫
スス
锡
金+08
錫
金+08
xī
xi1
錫
金+08
xí
xi2
51
Sb
アンチモン
アンチモン
锑
金+07
銻
金+07
tī
ti1
銻
金+07
tì
ti4
52
Te
テルル
テルル
碲
石+09
碲
石+09
dì
di4
碲
石+09
dì
di4
53
I
沃素
ヨウソ
碘
石+08
碘
石+08
diǎn
dian3
碘
石+08
diǎn
dian3
54
Xe
キセノン
キセノン
氙
气+03
氙
气+03
xiān
xian1
氙
气+03
xiān
xian1
55
Cs
セシウム
セシウム
铯
金+06
銫
金+06
sè
se4
銫
金+06
sè
se4
56
Ba
バリウム
ハリウム
钡
金+04
鋇
金+07
bèi
bei4
鋇
金+07
bèi
bei4
57
La
ランタン
ランタン
镧
金+12
鑭
金+17
lán
lan2
鑭
金+17
lán
lan2
58
Ce
セリウム
セリウム
铈
金+05
鈰
金+05
shì
shi4
鈰
金+05
shì
shi4
59
Pr
プラセオジム
フラセオシウム
镨
金+12
鐠
金+12
pǔ
pu3
鐠
金+12
pǔ
pu3
60
Nd
ネオジム
ネオシム
钕
金+03
釹
金+03
nǚ
nv3
釹
金+03
nǚ
nv3
61
Pm
プロメチウム
フロメチウム
钷
金+05
鉕
金+05
pǒ
po3
鉕
金+05
pǒ
po3
62
Sm
サマリウム
サマリウム
钐
金+03
釤
金+03
shān
shan1
釤
金+03
shān
shan1
63
Eu
ユウロピウム
ユウロヒウム
铕
金+06
銪
金+06
yǒu
you3
銪
金+06
yǒu
you3
64
Gd
ガドリニウム
カトリニウム
钆
金+01
釓
金+01
gá
ga2
釓
金+01
gá
ga2
65
Tb
テルビウム
テルヒウム
铽
金+07
鋱
金+07
tè
te4
鋱
金+07
tè
te4
66
Dy
ジスプロシウム
シスフロシウム
镝
金+11
鏑
金+11
dī
di1
鏑
金+11
dī
di1
67
Ho
ホルミウム
ホルミウム
钬
金+04
鈥
金+04
huǒ
huo3
鈥
金+04
huǒ
huo3
68
Er
エルビウム
エルヒウム
铒
金+06
鉺
金+06
ěr
er3
鉺
金+06
ěr
er3
69
Tm
ツリウム
ツリウム
铥
金+06
銩
金+06
diū
diu1
銩
金+06
diū
diu1
70
Yb
イッテルビウム
イツテルヒウム
镱
金+13
鐿
金+13
yì
yi4
鐿
金+13
yì
yi4
71
Lu
ルテチウム
ルテチウム
镥
金+12
鑥
金+15
lǔ
lu3
鎦
金+10
liú
liu2
72
Hf
ハフニウム
ハフニウム
铪
金+06
鉿
金+06
hā
ha1
鉿
金+06
hā
ha1
73
Ta
タンタル
タンタル
钽
金+05
鉭
金+05
tǎn
tan3
鉭
金+05
tǎn
tan3
74
W
タングステン
タンクステン
钨
金+04
鎢
金+10
wū
wu1
鎢
金+10
wū
wu1
75
Re
レニウム
レニウム
铼
金+07
錸
金+08
lái
lai2
錸
金+08
lái
lai2
76
Os
オスミウム
オスミウム
锇
金+07
鋨
金+07
é
e2
鋨
金+07
é
e2
77
Ir
イリジウム
イリシウム
铱
金+06
銥
金+06
yī
yi1
銥
金+06
yī
yi1
78
Pt
白金
ハツキン
铂
金+05
鉑
金+05
bó
bo2
鉑
金+05
bó
bo2
79
Au
金
キン
金
金+00
金
金+00
jīn
jin1
金
金+00
jīn
jin1
80
Hg
水銀
スイキン
汞
水+03
汞
水+03
gǒng
gong3
汞
水+03
gǒng
gong3
81
Tl
タリウム
タリウム
铊
金+05
鉈
金+05
tā
ta1
鉈
金+05
tā
ta1
82
Pb
鉛
ナマリ
铅
金+05
鉛
金+05
qiān
qian1
鉛
金+05
qiān
qian1
83
Bi
ビスマス
ヒスマス
铋
金+05
鉍
金+05
bì
bi4
鉍
金+05
bì
bi4
84
Po
ポロニウム
ホロニウム
钋
金+02
釙
金+02
pō
po1
釙
金+02
pō
po1
85
At
アスタチン
アスタチン
砹
石+05
砹
石+05
ài
ai4
砈
石+04
ài
ai4
86
Rn
ラドン
ラトン
氡
气+05
氡
气+05
dōng
dong1
氡
气+05
dōng
dong1
87
Fr
フランシウム
フランシウム
钫
金+04
鈁
金+04
fāng
fang1
鍅
金+08
fǎ
fa3
88
Ra
ラジウム
ラシウム
镭
金+13
鐳
金+13
léi
lei2
鐳
金+13
léi
lei2
89
Ac
アクチニウム
アクチニウム
锕
金+07
錒
金+08
ā
a1
錒
金+08
ā
a1
90
Th
トリウム
トリウム
钍
金+03
釷
金+03
tǔ
tu3
釷
金+03
tǔ
tu3
91
Pa
プロトアクチニウム
フロトアクチニウム
镤
金+12
鏷
金+12
pú
pu2
鏷
金+12
pú
pu2
92
U
ウラン
ウラン
铀
金+05
鈾
金+05
yóu
you2
鈾
金+05
yóu
you2
93
Np
ネプツニウム
ネフツニウム
镎
金+10
鎿
金+10
ná
na2
錼
金+08
nài
nai4
94
Pu
プルトニウム
フルトニウム
钚
金+04
鈈
金+04
bù
bu4
鈽
金+05
bù
bu4
95
Am
アメリシウム
アメリシウム
镅
金+09
鎇
金+09
méi
mei2
鋂
金+07
měi
mei3
96
Cm
キュリウム
キユリウム
锔
金+07
鋦
金+07
jú
ju2
鋦
金+07
jū
ju1
97
Bk
バークリウム
ハアクリウム
锫
金+08
錇
金+08
péi
pei2
鉳
金+05
běi
bei3
98
Cf
カリホルニウム
カリホルニウム
锎
金+07
鐦
金+12
kāi
kai1
鉲
金+05
kǎ
ka3
99
Es
アインスタイニウム
アインスタイニウム
锿
金+09
鎄
金+09
āi
ai1
鑀
金+13
ài
ai4
100
Fm
フェルミウム
フエルミウム
镄
金+09
鐨
金+12
fèi
fei4
鐨
金+12
fèi
fei4
101
Md
メンデレビウム
メンテレヒウム
钔
金+03
鍆
金+08
mén
men2
鍆
金+08
mén
men2
102
No
ノーベリウム
ノオヘリウム
锘
金+08
鍩
金+09
nuò
nuo4
鍩
金+09
nuò
nuo4
103
Lr
ローレンシウム
ロオレンシウム
铹
金+07
鐒
金+12
láo
lao2
鐒
金+12
láo
lao2
104
Rf
ラザホージウム
ラサホオシウム
𬬻
金+05
鑪
金+16
lú
lv2
鑪
金+16
lú
lu4
105
Db
ドブニウム
トフニウム
𬭊
金+07
𨧀
金+07
dù
du4
𨧀
金+07
dú
du4
106
Sg
シーボーギウム
シイホオキウム
𬭳
金+12
𨭎
金+12
xǐ
xi3
𨭎
金+12
xǐ
xi3
107
Bh
ボーリウム
ホオリウム
𬭛
金+08
𨨏
{{{FK}}}
bō
bo1
𨨏
金+08
bō
bo1
108
Hs
ハッシウム
ハツシウム
𬭶
金+12
𨭆
{{{FK}}}
hēi
hei1
𨭆
金+12
hēi
hei1
109
Mt
マイトネリウム
マイトネリウム
鿏
金+07
䥑
金+11
mài
mai4
䥑
金+09
mài
mai4
110
Ds
ダームスタチウム
タアムスタチウム
𫟼
金+06
鐽
金+13
dá
da2
鐽
金+13
dá
da2
111
Rg
レントゲニウム
レントケニウム
𬬭
金+04
錀
金+08
lún
lun2
錀
金+08
lún
lun2
112
Cn
コペルニシウム
コヘルニシウム
鿔
金+10
鎶
金+10
gē
ge1
鎶
金+10
gē
ge1
114
Fl
フレロビウム
フレロヒウム
𫓧
金+04
鈇
金+04
fū
fu1
鈇
金+04
fū
fu1
116
Lv
リバモリウム
リハモリウム
𫟷
金+05
鉝
金+05
lì
li4
鉝
金+05
lì
li4
周期表配列
各マスは上から元素記号 、「大陸簡体」、「台湾正体」の順に表記する。色分け等の凡例は周期表 の項目を参照。
歴史
清代 の1855年、イギリス人 医師 、宣教師 のベンジャミン・ホブソン (漢名、合信)は、上海 の墨海書館 から『博物新編 』[ 16] という科学書を出した[ 17] 。この本では、元素を「元質」と訳し、水素、窒素、酸素などの気体の性質と製法を紹介している[ 17] 。元素名の翻訳は一貫しておらず、水素は「輕氣」または「水母氣」、酸素は「養氣」または「生氣」と訳している[ 17] 。窒素は「淡氣」である[ 17] 。「水母氣」は英語「hydrogen」の語源に基づく意訳と思われ、それ以外は対応する英単語の語源とは関係のない意訳と思われる。
『博物新編』の後、1870年代までには、『金石識別 』[ 18] 、『格物入門 』[ 19] 、『化學初階 』[ 20] 、『化學鑑原 』[ 21] などの書物が化学元素の名称の中国語訳を試みた[ 17] [ 22] 。その訳語は、後出の対照表に示すように、著者によりまちまちである。
アメリカ人 医師、宣教師のダニエル·ジェローム·マガウアン(Daniel Jerome Macgowan。漢名、瑪高温 )と華蘅芳 は、James Dwight Danaの『Manual of Mineralogy』という鉱物学書を翻訳し、『金石識別』と題した[ 18] 。全12巻のうち巻十一の最後に「重率全表」という原子量 の一覧表があり、意訳した元素名と音訳した元素名が登場する。音訳は、複数文字の漢字で、英単語の全音節を模しているように見える。例えば、「素地恩」(ナトリウム )は英語「sodium」の訳、「夕里西恩」(珪素 )は、英語「silicium」(「silicon」の同義語)の訳と思われる。
アメリカ人宣教師のWilliam Alexander Parsons Martin(漢名、丁韙良 、英語版記事 )は、『格物入門』を著した[ 19] 。全7巻のうち巻六が化学を扱っており、その中には「原行總目」という元素の一覧表がある。この一覧表所載の元素の一部について、中国語訳が付けられており、その訳語は、後出の表のとおりであり、大体意訳である。本書が砒素の訳に使っている「信石」とは、江西省 の信州 で産する石を意味し[ 23] 、これは三酸化二ヒ素 を含有する。マンガン の訳に使っている「蒙石」は、音訳かもしれない。
John Glasgow Kerr(漢名、嘉約翰)と何瞭然 は、George Fownesの『Manual of Chemistry』とDavid Ames Wellsの『Well's Principles and Applications of Chemistry』の両書を種本として、『化學初階』を著した[ 20] 。後出の表のとおり、元素名は意訳したものと音訳したものとがあり、意訳も音訳も、漢字1文字としたものが多い。「釩 」は「礬」と同音の「凡」に金偏を付けて、アルミニウムの意味を表した意訳であろう。「鍟 」は、英語「zinc」の発音を「星」の発音で模し、亜鉛の意味を表した音訳であろう。
John Fryer(漢名、傅蘭雅 、中国語版記事 )と徐寿 は、『Well's Principles and Applications of Chemistry』を訳して『化学鑑原』を出した[ 21] 。本書巻一の「第二十九節 華字命名」では、本書で採用した命名の理由が説明されている。すなわち、元素の名称を簡潔に意訳するのは難しく、西洋の発音の全部を音訳したのでは冗長だという[ 24] 。そこで、西洋の発音の最初の音を1文字の漢字で音訳し、それが不都合な場合は次の音を1文字の漢字で音訳し、この漢字に偏(石偏、金偏)を加えて元素の種類を表す[ 25] 。また、元素の名称が漢字1文字でないと化合物の命名に不便であるから、従来「白鉛」や「倭鉛」と呼んでいた亜鉛は、西洋の発音(英語の「zinc」)を採り「鋅 」で表し[ 26] 、「白金」は「鉑 」に改める[ 27] 。
『化學鑑原』が元素の名称が漢字1文字でないと化合物の命名に不便であるというのは、本書では、組成式や分子式の元素記号を漢字に置き換え、アラビア数字を漢数字に置き換えることで化合物を命名しているためと思われる。例えば、本書では、三酸化硫黄 (SO3 )は「硫養三 」で[ 28] 、二酸化炭素 は「炭養二 」で表している(「養」は「養氣」すなわち酸素。実際は縦書き)。
4冊に見られる訳語 のうち、原子番号35までの主な元素の訳語を対照したのが次の表である[ 17] 。「淡氣」が『格物入門』では水素 を指し『化學初階』と『化學鑑原』では窒素 を指し、「釩」が『化學初階』ではアルミニウム を指し『化學鑑原』ではバナジウム を指すという混乱ぶりが見て取れる。また、『金石識別』は複数文字で音訳、『格物入門』は意訳、『化學初階』は1文字で意訳(そのために造字をためらわない)、『化學鑑原』は1文字で音訳 という傾向が読み取れる。さらに、現在中国 で使われている訳は、『化學鑑原』の訳に近いことが分かる。
元素名の初期の中国語訳
Z
記号
日本語名称
金石識別
格物入門
化學初階
化學鑑原
現代の中国語名称
1
H
水素
輕氣
淡氣
輕氣
輕氣
氫
3
Li
リチウム
劣非地恩
鋰
鋰
鋰
5
B
硼素
布而倫
硼精
硼
𥑢
硼
6
C
炭素
炭
炭精
炭精
炭
碳
7
N
窒素
硝氣
硝氣
淡氣
淡氣
氮
8
O
酸素
養氣
養氣
養氣
養氣
氧
9
F
弗素
夫羅而林
弗氣
弗氣
氟
11
Na
ナトリウム
素地恩
鹻精
鏀
鈉
鈉
12
Mg
マグネシウム
美合尼西恩
鎂
鎂
鎂
13
Al
アルミニウム
哀盧彌尼恩
礬精
釩
鋁
鋁
14
Si
珪素
夕里西恩
玻精
玻
矽
硅、矽
15
P
燐
燐
光藥
燐
燐
磷
16
S
硫黄
硫磺
硫磺
硫磺
硫
硫
17
Cl
塩素
綠氣
綠氣
綠氣
綠氣
氯
19
K
カリウム
卜對斯恩
灰精
𨦗
鉀
鉀
20
Ca
カルシウム
丐而西恩
石精
鉐
鈣
鈣
23
V
バナジウム
凡奈地恩
鐇
釩
釩
24
Cr
クロム
客羅彌恩
鏴
鉻
鉻
25
Mn
マンガン
孟葛尼斯
蒙石
錳
錳
錳
26
Fe
鉄
鐵
鐵
鐵
鐵
鐵
27
Co
コバルト
苦抱爾
鎬
鈷
鈷
28
Ni
ニッケル
臬客爾
鎘
鎳
鎳
29
Cu
銅
銅
銅
銅
銅
銅
30
Zn
亜鉛
白鉛
白鉛
鍟
鋅
鋅
33
As
砒素
砒
信石
信の下に金[ 29]
鉮
砷
34
Se
セレン
西里尼恩
硒
硒
硒
硒
35
Br
臭素
孛羅名
溴
溴
溴
气部 (きがまえ)の元素名は、石偏、金偏の元素名より遅れて登場した。気体元素を气部の漢字で表すことを発明したのは、杜亜泉 (中国語版 ) であるという[ 30] 。杜は1894年発見の元素アルゴン のために「氬 」という漢字を考案した[ 30] 。その後、中華民国教育部 が公布した『化學命名原則』では、従来「輕」「淡」「養」「緑」で表していた水素、窒素、酸素、塩素のために「氫 」「氮 」「氧 」「氯 」という漢字が採用された[ 30] 。「气」の左下に「輕」「養」「緑」をそのまま書いた画数の多い字[ 31] も、一時期使われたことがあるようである[ 32] 。
水素の同位体
水素の同位体 のうち、質量数 が1から3のものは、元素と同様に、漢字1文字で表現できる。「气」の左下の部分の画数が質量数に対応する。
「氕 」(piē ):軽水素 (プロチウム、水素1、1 H)
「氘 」(dāo ):重水素 (デューテリウム、水素2、2 H、D)
「氚 」(chuān ):三重水素 (トリチウム、水素3、3 H、T)
化合物の命名
二元化合物 は、元素の名称を使って、中国で「某化某式」と呼ばれる方式で命名される。例えば、塩化ナトリウム は、「氯 」(塩素 )と「鈉 」(ナトリウム )の化合物であるので「氯化鈉 」という。二酸化炭素 は「二氧化碳 」である。「某化某式」命名法は日本語の命名法から中国語に採り入れられた[ 32] 。アンモニア は「氨 」(ān )の1文字で表す。
元素の命名には气部 (きがまえ)、水部 (みず、さんずい)、石部 (いしへん)、金部 (かね、かねへん)の漢字を使ったが、有機化合物 の命名には、火部 (ひへん)、艸部 (くさかんむり)、酉部 (ひよみのとり)、肉部 (にくづき)、口部 (くちへん)の漢字を使う。有機化合物の命名にも、近代になって考案された漢字を多数使用する。
脚注
関連文献
関連項目
外部リンク