『オフ・コース1 ⁄ 僕の贈りもの』(オフ・コース1 ぼくのおくりもの)は、1973年6月5日に発売されたオフコース(当時の表記はオフ・コース)通算1作目のオリジナル・アルバム。
解説
オフコースが小田和正・鈴木康博の2人組となって約1年後の1972年夏、デビュー・アルバム制作のプランが持ち上がり、それぞれに書き溜めたオリジナル曲を持ち寄ってレコーディングが行われた。全曲が小田・鈴木のオリジナル曲で構成され、デビュー以降それまでにリリースされた3枚のシングルは、他人の作品だからとの理由により収録されなかった[注釈 1][注釈 2][注釈 3]。プロデュースは当時アリスを手がけていた橋場正敏が担当したが、メンバーとの関係はあまり良好ではなかったという[注釈 4]。
レコーディング・メンバーは小田・鈴木の他に矢沢透(ドラムス)、重実博(ベース)。この2人は、杉田二郎がジローズで活動していた頃バックを務めたことがあり、その頃からオフコースとも親しくなっていた。基本の音はすべてこの4人で録音された。重実によれば「ともかく時間がかかった。オフコースは2人とも、まぁうまい人たちだったけど、今よりずっと下手だったんだ。センスなんかも良いんだけど、今に比べるとやっぱり下手だった。で、キンちゃん(矢沢)も僕もテクニシャンじゃないし、いわば4人とも下手だったわけ。だから録音の時、曲の最後まで辿り着くのがやっとみたいな。4人のうち3人がうまくいっても誰かひとりが間違えたり」「楽器を重ねた数はそれほど多くなくて、コーラスがダビングの中では比重を占めてたね。当時、コーラスが多重っていうのは日本で画期的だったと思う。マルチ・レコーディングが始まったばかりで録音技術自体、未熟な頃だもの。だから例えば音質を決めるのに、最初はただ録っておいて、ミックス・ダウンの段階で決めればいいみたいに考えていたわけ。本当は、最初に良い音で録っておかないと、後ではそれ程変えられないんだよね。……でも本当に、必死になってなんとか良いものをつくろうって、根性の結集みたいな迫力はあった。制作期間は……二か月位やってたかなぁ? 当時のアルバム制作としては、時間をとっていたほうだと思う。もっとも歌謡曲に比べればだけど。僕のギャラが全部で5万円位でした」[book 1]と、後に当時のレコーディングの模様をこう語っていた。
レコーディングは、他のスケジュールの合間を縫って進められ、約1か月半で終了した。収録された11曲中、3曲だけが新たに作ったもので、その他はステージで歌い続けてきた曲だった。
A-1「僕の贈りもの」は、シングルとは別ミックスで[注釈 5]、エンディングも20秒ほど短い。
A-4「水曜日の午後」はライブでは鈴木がリードボーカルを取っていた。小田が持ち寄ったこの歌を聞いた鈴木が「いい歌だね」と言うと小田が「だったら、ヤスが歌ってみるか?」と持ちかけ、実現したという。しかし、レコーディングでは「作者が歌ったほうがいい」というディレクターの意向で小田がリード・ボーカルをとっている。根本要が「オフコースの曲の中でいちばん好き」とコメントしており、1996年、阿蘇で行われたスターダスト・レビューとのジョイントコンサートで小田自身「まさかまたこの歌を歌うとは思わなかった」と言いながら披露した。小田が交通事故からの復帰後初のスターダスト・レビューとのジョイントコンサートでも歌っている[注釈 6]。
B-5「さわやかな朝をむかえるために」は小田の作詞・作曲だが、リード・ボーカルは鈴木がとっている。この他A-2「よみがえるひととき」を小田、A-6「でももう花はいらない」とB-4「静かな昼下がり」を鈴木がそれぞれリード・ボーカルを手がけているが、それ以外の曲は小田と鈴木のデュエット。後に、何故「さわやかな朝をむかえるために」のボーカルを担当する事になったか、とのファンから寄せられた質問に対し、鈴木は自身の公式ホームページで「ボクが歌っていたことさえ忘れていました。思い出せません」「はぁ、ボクが歌っていたことすら忘れていました。そうだったでしたっけ?」と答えている。
A-1「僕の贈りもの」とA-4「水曜日の午後」、A-6「でももう花はいらない」は後にベスト・アルバム『SELECTION 1973-78』[注釈 7]に収録された。
ジャケットは横浜市の根岸森林公園で撮影された。2人の前にある白いピアノはジャケット撮影用に作った模型。
この頃、小田は東北大学工学部建築学科を卒業してから1年後、オフコースの活動と並行して早稲田大学大学院理工学研究科に進学、建築と音楽のどちらをとるかの答えをまだ出せずにいた。一方、鈴木は東京工業大学工学部制御工学科を卒業後、内定していた安川電機への就職を辞退してミュージシャンとしての活動へ踏み出していた。
収録曲
SIDE A# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「僕の贈りもの」 | 小田和正 | |
2. | 「よみがえるひととき」 | 小田和正 | |
3. | 「彼のほほえみ」 | 鈴木康博 | |
4. | 「水曜日の午後」 | 小田和正 | |
5. | 「地球は狭くなりました」 | 小田和正 | |
6. | 「でももう花はいらない」 | 鈴木康博 | |
SIDE B# | タイトル | 作詞・作曲 | 時間 |
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1. | 「歩こう」 | 鈴木康博 | |
2. | 「ほんの少しの間だけ」 | 小田和正 | |
3. | 「貼り忘れた写真」 | 鈴木康博 | |
4. | 「静かな昼下がり」 | 鈴木康博 | |
5. | 「さわやかな朝をむかえるために」 | 小田和正 | |
クレジット
オール・ヴォーカル:オフ・コース
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ベーシック・アレンジ:オフ・コース、重実博、 矢沢透
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Time : Side 1 (3'17")(2'43")(3'22")(2'47")(2'39")(3'59") Side 2 (2'53")(2'05")(2'52")(2'16")(3'47")
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Producer : 橋場正敏, オフ・コース
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Album Design : 加藤薫
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Photography : 波多健二
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TOCT-25631, TOCT-95031
解説
2005年、レコード・デビュー35周年にあわせ“オリジナル・アルバム15タイトル紙ジャケット・シリーズ”としてエキスプレス・レーベル在籍中のオリジナル作品がリイシュー。24ビット・デジタル・リマスタリング、オリジナルLP装丁を復刻した紙ジャケット仕様にてリリースされた。2009年にはSHM-CDフォーマット、通常のプラ・ケース仕様で再発された。
収録曲
- 僕の贈りもの
- よみがえるひととき
- 彼のほほえみ
- 水曜日の午後
- 地球は狭くなりました
- でももう花はいらない
- 歩こう
- ほんの少しの間だけ
- 貼り忘れた写真
- 静かな昼下がり
- さわやかな朝をむかえるために
クレジット
- リマスタリング・エンジニア:行方洋一
- ジャケット資料協力:喜多雅美 (サウンドステーション)
- ライナーノーツ:田家秀樹
リリース履歴
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発売日 |
リリース |
規格 |
品番 |
備考
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1
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1973年6月5日 (1973-06-05) |
エキスプレス ⁄ 東芝音楽工業 |
LP |
ETP-8258 |
ゲートフォールドジャケット。定価:1800円
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2
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197?年 (197?) |
エキスプレス ⁄ 東芝EMI |
LP |
ETP-8258 |
ゲートフォールドジャケット。東芝EMIへの社名変更と価格改定:2000円
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3
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197?年 (197?) |
LP |
ETP-72118 |
シングルジャケットによる再発規格。価格改定:2300円。後の紙ジャケットCDはこれを基準に作成。
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4
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1979年 (1979) |
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ZT25-319 |
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5
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1983年11月21日 (1983-11-21) |
CD |
CA35-1040 |
初CD化(以降全てアーティスト非監修による再発)。
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6
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1985年9月28日 (1985-09-28) |
CD |
CA32-1156 |
品番および価格改定。
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7
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1987年7月5日 (1987-07-05) |
CD |
CA25-1480 |
オリジナル・アルバム+ボーナス・ディスクの12枚組CD-BOX『OFF COURSE BOX』(CA25-1480~1490)の中の1枚。
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CT |
ZH22-1850 |
オリジナル・アルバム+ボーナス・カセットの12本組カセットBOX『OFF COURSE BOX』(ZH22-1850-60)の中の1本。
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8
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1991年6月7日 (1991-06-07) |
CD |
TOCT-6201 |
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9
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1992年6月24日 (1992-06-24) |
CD |
TOCT-6560 |
音蔵シリーズでの再発。
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10
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1998年2月25日 (1998-02-25) |
CD |
TOCT-10084 |
Q盤シリーズでの再発。
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11
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1998年11月18日 (1998-11-18) |
CD |
TOCT-10542 |
オリジナル・アルバム+ライブ・アルバム全13タイトルの14枚組CD-BOX『OFF COURSE BOX』(TOCT-10542~55)の中の1枚。
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12
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2001年6月27日 (2001-06-27) |
CD |
TOCT-10771 |
スーパーリマスタリングシリーズでの再発。
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13
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2005年3月24日 (2005-03-24) |
CD |
TOCT-25631 |
紙ジャケット仕様(見開きジャケットは再現されていない)。24ビット・デジタル・リマスタリング音源による再発。
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14
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2009年1月21日 (2009-01-21) |
エキスプレス ⁄ EMIミュージック・ジャパン |
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TOCT-95031 |
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15
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2019年9月25日 (2019-09-25) |
UNIVERSAL MUSIC JAPAN |
MQA/UHQCD |
UPCY-40034 |
【ハイレゾCD名盤シリーズ オフコース編】の1枚。オリジナル・アナログ・テープを基にした2015年 (2015)192kHz/24bitマスターを176.4kHz/24bitに変換して収録。グリーン・カラー・レーベルコートによる、生産限定盤。クリアファイル型の帯は付属していない。
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16
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2020年10月28日 (2020-10-28) |
USM JAPAN / UNIVERSAL MUSIC LLC |
CD |
UPCX-4278 |
オリジナル14作品、ライブ2作品、ベスト3作品、サウンドトラック1作品を1BOXに収録した全21枚組CD BOX『コンプリート・アルバム・コレクションCD BOX』(UPCY-9923)の中の1タイトル。12cm紙ジャケット仕様。
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脚注
注釈
- ^ 「群衆の中で」 1970年4月5日 (1970-04-05)発売 EXPRESS ⁄ 東芝音楽工業 7":EP-1224
- ^ 「夜明けを告げに」 1971年10月5日 (1971-10-05)発売 EXPRESS ⁄ 東芝音楽工業 7":ETP-2527
- ^ 「おさらば」 1972年4月25日 (1972-04-25)発売 EXPRESS ⁄ 東芝音楽工業 7":ETP-2647
- ^ 後に小田が自身の著書『TIME CAN'T WAIT』(1990年12月25日 (1990-12-25)初版 朝日新聞社)での“タンバリン”という章で触れている。
- ^ 「僕の贈りもの」 1973年2月20日 (1973-02-20)発売 EXPRESS ⁄ 東芝音楽工業 7":ETP-2809
- ^ 1998年9月12日 (1998-09-12)、福岡市海の中道海浜公園
- ^ 『SELECTION 1973-78』 1978年5月5日 (1978-05-05)発売 EXPRESS ⁄ TOSHIBA EMI LP:ETP-80015
出典
書籍
- ^ オフコース・ファミリー著『はじめの一歩 1』(サンリオ)P147-151、1983年8月15日 (1983-08-15)初版発行
その他
外部リンク
音楽配信サイト
ハイレゾ配信
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シングル |
エキスプレス ⁄ 東芝EMI (1969年 (1969) – 1982年 (1982)) | |
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エキスプレス ⁄ ファンハウス (1984年 (1984)) | |
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ファンハウス (1985年 (1985) – 1989年 (1989)) | |
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アルバム |
オリジナル |
エキスプレス ⁄ 東芝EMI | |
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エキスプレス ⁄ ファンハウス | |
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ファンハウス | |
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ベスト |
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ライブ | |
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ボックス・セット | |
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関連人物 | |
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関連項目 | |
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カテゴリ |