修飾麻疹修飾麻疹(しゅうしょくましん)とは、過去のワクチン接種や母体からの移行抗体(乳児の場合)などにより、麻疹ウイルスに対する防御抗体を不十分ながらも有するヒトが、麻疹ウイルスに感染することによって罹患する軽症の麻疹疾患である[1]。 原因直接の原因は、通常の麻疹と同様、麻疹ウイルスに感染することである。麻疹ワクチン接種後、長期間麻疹ウイルスへの暴露なしに経過したヒトでは、麻疹ウイルスに対する抗体価が低下している。このため、ワクチン既接種者で免疫をいったんは獲得したものであっても、再びウイルスに対して感受性となってしまうことがある (Secondary vaccine failure)。しかしこのようなヒトはある程度の抗体を有していることや、T細胞に抗原情報が記憶されているために抗体産生が速やかに起こることなどから、麻疹に罹患しても軽症の経過をとることが多い。この軽症の麻疹を修飾麻疹と呼ぶ。ワクチン既接種者のほか、抗体を十分に有する母体から生まれてまだ期間が経っていない乳児、血液製剤の投与を受けているために抗体価を有しているワクチン未接種者などでも修飾麻疹の経過となることがある。 症状麻疹に見られる下記のような症状はすべて見られうる。しかし、その一つ一つが軽症であったり、症状の一部を欠いたりすることが多く、全体として軽症の経過をとることが多い。その反面、症状がそろわなかったり、目立たないために麻疹と診断することが困難であり、蔓延を許す原因となる危険性もある。
診断上記「症状」のような典型的な症状が見られる場合、麻疹の診断は容易であるが、修飾麻疹ではしばしば典型的ではない症状・経過をとるため、診断が難しくなる。鑑別すべき疾患としては、風疹、EBウイルス、エンテロウイルス属など他のウイルス感染症、マイコプラズマなどの非定型細菌感染症のほか、薬疹でもしばしば麻疹に類似した発疹を見る。修飾麻疹は臨床症状からの診断が困難であるため、診断のためには臨床検査を必要とする。感度・特異度ともに高いのは血清抗体価測定である。血清抗体価の測定法には数種あるが、EIA法が感度が高く、信頼性が高い。血清抗体価のうち、抗麻疹ウイルスIgG抗体は過去の感染歴(またはウイルス接種歴)、IgM抗体は現在の感染を示唆する。IgG、IgMの組み合わせにより、おおむね以下のように判定される。
治療ウイルス自体を駆除する治療法は存在しない。解熱剤、鎮咳去痰薬、輸液などによる対症療法を行う。修飾麻疹では少ないが、間質性肺炎による呼吸困難のある場合には酸素投与や、ステロイドパルス療法などが必要となる場合もある。細菌性二次感染の予防のために抗菌薬を予防投与することは推奨されない(特に修飾麻疹では)が、二次感染が見られた場合には抗菌薬により治療する。 予防ワクチンを遠隔期に2回接種することで、抗体価の上昇(ブースター効果)を得て修飾麻疹を予防することができる。2006年4月から、日本でも麻疹・風疹混合ワクチンの2回接種に改められた。特に医療従事者や教諭など、麻疹接触機会が多くなる可能性のあるものでは、就職時に麻疹抗体価を測定し、抗体価が不十分な場合生ワクチン接種を受けることが勧められる。ただし、抗体価を有しているものにワクチン接種を行っても副反応が強くなることはないため、抗体価測定を行わずに、就職時に一律にワクチン接種を行う方法もある。 関連法規脚注出典
関連項目外部リンク
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