今日のニュース (オペラ)

トラウゴット・ミュラーによる初演時の舞台デザイン(1929年)

今日のニュース』(きょうのニュース、Neues vom Tage)は、パウル・ヒンデミットが1929年に作曲した3部11場からなる喜劇オペラリブレットマルツェルス・シファー英語版による。演奏時間は約2時間。

初演

1929年6月8日、ベルリンクロルオーパーオットー・クレンペラーの指揮によって初演された。歌手はグレーテ・シュテュックゴルトドイツ語版ローゼ・パウリードイツ語版ザビーネ・カルタードイツ語版、アルトゥル・カヴァラ(Arthur Cavara)、デジュー・エルンステルドイツ語版フリッツ・クレンドイツ語版エリック・ヴィルルドイツ語版アルベルト・ペータースドイツ語版、ハインリヒ・シュルツ(Heinrich Schultz)[1]、演出はエルンスト・レーガル英語版、舞台設計はトラウゴット・ミュラードイツ語版、合唱指揮はカール・ランクルであった[2]

本作品は1927年の短編オペラ『行きと帰り』に続くヒンデミットの時事オペラ英語版だが[3]:95、本作を観たアドルフ・ヒトラーは、主人公のラウラが裸で歌う(実際には肉襦袢を使用)「給湯器のアリア」に激怒した[3]:96

2幕形式に直された第2版は1954年4月7日、ナポリサン・カルロ劇場においてイタリア語のタイトル(Novità del giorno)で初演された。

楽器編成

オペラのスコアは以下の楽器を含む[4]

フルート2(ピッコロ持ちかえ)、オーボエコーラングレクラリネット小クラリネットバスクラリネットアルトサクソフォーンファゴット2、コントラファゴットホルントランペット2、トロンボーン2、チューバパーカッション2名(バスドラムスネアドラムトムトムシンバルゴングフィンガーシンバルトライアングルグロッケンシュピールシロフォン、電気式ベル3)、ピアノ(四手)、ハープマンドリンバンジョーヴァイオリン6、ヴィオラ4、チェロ4、コントラバス4

登場人物

  • ラウラ(ソプラノ
  • エドゥアルト(バリトン
  • 麗しきヘルマン氏(テノール
  • M氏(テノール)
  • M夫人(メゾソプラノ
  • ホテル支配人(バス
  • 戸籍係(バス)
  • 旅行ガイド(バス)
  • 乳母(ソプラノ)
  • ボーイ長(テノール)
  • 6人のマネージャー(テノール、バス)

あらすじ

舞台は初演と同じ1929年の、とあるドイツの町。エドゥアルトとラウラのふたりは結婚してそれほど経っていないが毎日のように口喧嘩が絶えない。口論が過熱したあまり、ふたりは離婚することに決める。そこへふたりと最近友人になったM夫妻が新婚旅行から帰ってくる。M夫妻はどうにかして2人の喧嘩を仲裁しようとするが、すべての試みが失敗に終わるだけではなく、M夫妻自身も離婚を望むようになる。

離婚相談所にやってきたM夫妻は、単に口論が起きたというだけでは離婚の条件として不足であり、もっと深刻な理由が必要であると知る。「家族問題事務所」会社が離婚を支援する。この会社の社長は「麗しきヘルマン氏」といい、わずかな手数料で離婚を調停、M夫妻は円満に離婚することができた。

次はラウラがこの怪しい事務所に相談する。麗しきヘルマン氏は市立美術館でラウラと会う約束を取りつける。美術館で麗しきヘルマン氏は言葉巧みにあらゆる手管を尽くしてラウラを誘惑するが、そこへ突然夫のエドゥアルトが乗りこんでくる。エドゥアルトは会合の約束を聞きつけ、また喧嘩はしてもやはり自分がラウラのことを愛していると気づいたのだった。「離婚の理由」であるヘルマン氏を見たエドゥアルトは、嫉妬にかられて近くにあったビーナス像を投げつけ、像は粉々に砕ける。すぐに警察がやってきてエドゥアルトを投獄する。

夫婦の家に戻りたくなかったラウラはサヴォイ・ホテルに宿泊し、興奮をさますために入浴する。そこへ麗しきヘルマン氏が浴室に現れて自分が本当にラウラのことを愛していると告げる。ところが思いがけないことにM夫人も現れ、自分が麗しきヘルマン氏のことを愛しており、湯船を自分のものだと主張して大騒ぎしたため、ホテル全体が苦情だらけになる。

釈放されたエドゥアルトとラウラの間の醜聞はきわめて大きくなり、6人のマネージャーがこの話を演劇やバラエティや映画に仕組んで売り出そうとする。ふたりは私生活の暴露によって大金持ちになり、もはや離婚する気はなくなっているが、大衆が彼らを「離婚したがっている夫婦」とレッテル貼りし続けたため、その後も長く離婚したがっているふりをしなければならないのだった。

音楽

『今日のニュース』はオペラのパロディとして考えることができる。ヒンデミットは音楽に挑発的要素を取り込むことを好み、この作品ではさまざまな音楽形式を採用した。誇張されたカンティレーナを持った伝統的な意味のアリアに加え、当時ドイツで流行しはじめたジャズの要素も含まれている。ホテルの湯船の中で湯が出ることをたたえてラウラがコロラトゥーラ・アリアを歌う場面は特に滑稽である。

録音

脚注

  1. ^ Neues vom Tage. In: Großes Sängerlexikon. 2000, S. 28526
  2. ^ Giselher Schubert. Einleitung. In: Paul Hindemith. Neues vom Tage. Lustige Oper in drei Teilen. Erster Teil (= Sämtliche Werke. Band I,7-1). Herausgegeben von Giselher Schubert. Schott Musik International, Mainz 2003, S. XVII.
  3. ^ a b 江藤光紀「引き裂かれたポートレート : オペラ「画家マチス」のはらむもの」『一橋研究』第22巻第4号、1998年、89-114頁、doi:10.15057/5740 
  4. ^ Annegrit Laubenthal: Neues vom Tage. In: Pipers Enzyklopädie des Musiktheaters. Band 3: Werke. Henze – Massine. Piper, München / Zürich 1989, ISBN 3-492-02413-0, S. 70–72.
  5. ^ Hindemith, Paul. In: Andreas Ommer: Verzeichnis aller Operngesamtaufnahmen (= Zeno.org. Band 20). Directmedia, Berlin 2005, S. 7188 f.

外部リンク

 

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