ベートーヴェンが残した未完成のスケッチの多くは売却されてしまい、それら収集の試みは19世紀には行われなかった。それでも交響曲第10番のスケッチであろうと考えられている断片的な楽譜は数多く発見されており、中には「かなりの可能性で実際の交響曲第10番のスケッチである」と見られているものもある。しかし、大半は真偽の判別がついていない。残されたスケッチは数小節単位の非常に断片的なものであり、また非常にラフな記載で解読困難な部分もある。このため、体系的な調査が行われるのは1960年代まで待つ必要があった。1977年、音楽学者のロバート・S・ウィンター (Robert S. Winter) は、残されたスケッチには交響曲第9番からの新たな飛躍が見られず、おそらくベートーヴェンは交響曲10番の作曲には真剣に取り組んでいなかったのだろうと推測した[4]。
2003年、ルーマニアの作曲家アドリアン・ガジウ(Adrian Gagiu)は「自身作曲の4番目の交響曲」“Homage to Beethoven”(ベートーヴェンを讃えて)として、ベートーヴェンの交響曲第10番のものとされるスケッチを取り入れた「交響曲第4番」を作曲した[15]。4楽章形式。ベートーヴェンによる完成形を追求した作品ではないが、全楽章にベートーヴェンが残したスケッチに基づいたメロディが散りばめられており、全体の印象はクーパー版に似ている[16][17]。MIDI音源がamazon music(us)などで公開されている。ガジウはベートーヴェンの七重奏曲を交響曲に編曲するなどの作業も行った。
^Barry Cooper, Realizing Beethoven's Tenth Symphony, livret pour l'enregistrement du London Symphony Orchestra conduit par Wyn Morris, Musical Concepts DL-9077
^Ludwig Van Beethoven (trad. de l'allemand), Les lettres de Beethoven : L'intégrale de la correspondance 1787-1827, préface de René Koering (traduction d'après l'allemand par Jean Chuzeville, suivant l'édition anglaise établie en 1960 par Emily Anderson, Arles, Actes Sud, coll. « Beaux Arts », , 1737 p. (ISBN978-2-7427-9192-7), p. 1494
^Gerhard von Breuning, Aus dem Schwarzspanierhaus, Vienne, 1874, pages 49, 68, 88 et 97. lecture en ligne
^Robert Winter, Noch einmal: Wo sind Beethoven's Skizzen zur Zehnten Symphonie?, Beethoven-Jahrbuch IX, 1977, p. 531-552
^ abBeethoven: First Recording of Symphony No. 10 in E flat, 1st movement; London Symphony Orchestra conducted by Wyn Morris; Carlton Classics; ASIN: B000003YPG
BEETHOVEN-HOUS BONN / DIGITAL ARCHIVES (HCB BSk 20/68; HCB Mh 86) Staatsbibliothek zu Berlin Preußischer Kulturbesitz / DIGITISED COLLECTIONS (Mus.ms.autogr. Beethoven, L. v. 9)