三羽のカラス
『三羽のカラス』(さんわのカラス)は、児雷也による日本のゲイ漫画短編集。 概要2009年4月22日に「爆男コミックス愛蔵版 児雷也全集 第一集」として古川書房より発行された。作者の単行本としては3作目であり、ハードカバーの装丁となっている。カバーの表側には「三羽のカラス」に登場するシンゴ・ギイチ・タイスケのイラストが描かれており、裏側は収録作品から抜粋された1コマが集合したデザインとなっている。 発売にあたって、予約特典でオリジナルのイラストカードが同梱され、さらに予約した者の中から抽選で作者のサインと過去の作品で登場したキャラクターのイラストが表紙裏に描かれる企画が行われた[要出典]。 過去の単行本と同様に、収録されている作品のほとんどは短髪で髭を生やし、体毛が濃い、熊系やガチムチとした大柄で男らしい風貌をした男性同士の恋愛や性行為を描いたものであるが、それまでの作品にはほとんど見られなかったセックスの強制や暴力、近親相姦や時代劇をテーマとした作品が収録されており、幅広いジャンルの短編集となっている。また、本短編集は作者の主要掲載誌である『G-men』以外で掲載された作品も多数収録されている。 過去に発表された2本の短編集と同様に、各作品の前にはその作品の掲載雑誌・掲載号と作品に関する作者のエピソード、各作品の後には物語のその後の様子の描き下ろしが1ページずつ添えられている。さらに、カラーイラスト集・キャラクターラフスケッチ集・イラストコラム集なども収録されている。 収録作品収録されている作品の詳細については、各項目を参照のこと。
三羽のカラス2009年3月『G-men』156号掲載。作者の「3人で恋愛は可能か」という着想を元に、今までにない新しい三角関係というコンセプトで描かれた。登場する3人のキャラクターデザインは、ロボットアニメや特撮系においてしばしば見られる正義漢・ニヒル・デブのキャラクターモチーフがベースとなっている。また、3人の名前はそれぞれ武道の「心・技・体」が由来となっている。本作品に登場するシンゴ・ギイチ・タイスケは、描き下ろし漫画「三羽のカラス VS 秘密」にも登場する。 あらすじシンゴ・ギイチ・タイスケの3人は同じ大学に通う同級生であり、お互いに3人で恋愛をしている。学校も遊びもセックスも常に3人一緒であった。シンゴとタイスケは幼馴染であり、タイスケは2人の幼い頃のエピソードをよく聞かされていた。 ある日の夜、3人で楽しく焼肉を食べた帰りに踏切を渡ろうとした際、先頭を歩いていたタイスケは踏切を渡り終えたが、シンゴとギイチは踏切を渡り損ねて遮断機が降りてしまった。ひとり先に踏切を渡り終えたタイスケは、踏切を挟んだ道の向こうで楽しそうに談笑しているシンゴとギイチを見て、自分と2人との間に思いの差があるのではないかと感じ始める。 登場人物
顧問はつらいよ2006年12月『激男』7号掲載。高校の柔道部の合宿を題材としている。8ページの短編作品であり、作者が小品を描き始めるきっかけになった作品である。ストーリーよりも、登場人物の設定を楽しみながら考えたと作者は述べている。 あらすじ誠真大付属高校の体育教師・猪山功は柔道部の顧問を務めており、夏休みの合宿を取り仕切っていた。ある日の夜の見回りでレギュラー部屋を訪れた猪山は、レギュラーの5人が下着姿に仰向けで股間を勃起させて寝ているところを目撃する。理性が飛んだ猪山は、寝ている彼らを起こさないようにいたずらしようと企む。 登場人物
希望町三丁目富士乃湯物語2007年10月『G-men』139号掲載。銭湯を物語の舞台としている。銭湯の外観や内装の様子が詳細に描き込まれており、銭湯に通う人々の交流などが情緒豊かに描かれている。 あらすじ銭湯・富士乃湯の一人息子であるノボルは他県で就職が決まり、家を出ることになった。出発の前日、番台に入ったノボルは10年間片想いを続けてきた常連のツヨシに富士乃湯を継がず就職することを告げようとするが、結局告げられないままノボルは入浴を終えて帰ってしまった。 営業終了後、大浴場の清掃を終えたノボルは、1人で仕舞い湯に浸かりながら感慨にふけっていたが、そこへ帰ったはずのツヨシが仏頂面でやってきた。 登場人物
格技室2007年8月『ウラゲキ』1号掲載。全体的にモノローグが多用され、絵物語に近い形式となっている。レイプ、リベンジポルノ、性的テロ、恐喝 を積極的な描写で表現しており、作者は同時期に構想を練っていた「秘密」の準備運動的な意味合いもあったと述べている。登場人物の名前は、柔道に深く関係のある人物の名前が由来となっている。 あらすじ柔道部に所属する西郷と富田は周囲の目を忍んで愛し合う仲であったが、コーチの叶に2人の関係を知られてしまった。2人は叶が見ている前でセックスを強制され、2人は叶によって玩具のようにされる。 登場人物
蔵の中の鬼2007年11月『ウラゲキ』2号掲載。地方の旧家を舞台に、蔵の中に幽閉された障害者の兄と家長である弟の近親相姦を描いている。陰鬱で背徳的な内容となっており、弟である剛房のモノローグを織り交ぜながら物語は進行する。 あらすじ大道寺家には家族と一部の使用人しか知らない隠された秘密がある。それは、蔵の中に幽閉され続けている大道寺家の血族の存在であった。大道寺家の家長である剛房は夕刻になると、蔵の檻に閉じ込められている兄の元へ赴く。その理由は、兄の性処理をするためであった。 登場人物
秘密2008年9月『G-men』150号掲載。作者がエロ漫画らしい表現に挑戦した作品。ここでは、レイプ、セクハラ、暴力的なセックスが一般的です。作者は内容としては反省点が多かったが、読者の反応は大変好評であったと述べている。本作品に登場する七田と内藤は、描き下ろし漫画「三羽のカラス VS 秘密」にも登場する。 あらすじ誠真大レスリング部に所属する東は、監督に頼まれて練習を3日連続で休んでいる先輩・多聞の様子を見るために彼の住むアパートへ赴いた。多聞に恋心を抱く東は、扉を前にあれこれ空想しながら多聞の部屋のインターホンを鳴らすが、出てきたのは下着姿の見知らぬ男だった。 ドアを開けた男・内藤がレスリング部のOBであると聞かされ、彼の後をついて部屋の奥へ通された東が見たものは、レスリングウェア姿で椅子に縛り付けられた多聞と、その傍らで煙草をふかしているもう一人のOB・七田であった。内藤と七田は東を暴力で捩じ伏せ、東に多聞との性行為を強要する。 登場人物
真田十勇士 旅の一夜2008年10月『ウラゲキ』5号掲載。掲載誌の特集に合わせて、時代劇というコンセプトでいくつかの組み合わせを検討した結果、真田十勇士の三好清海入道と猿飛佐助の組み合わせで物語が作られた。ゲイ漫画らしく男同士の性描写がなされているが、全体的にコミカルな内容となっており、ある程度非現実的で時代考証を無視するなど奔放に描かれている。作者は、当時の言葉や風俗などを調べるのが大変だったが、時代劇を描く楽しさを知ったとコメントしている。 あらすじ真田幸村の命令で豊臣秀吉の味方になりうる強者を探しながら諸国を巡る旅に出た三好清海入道と猿飛佐助は、ある晩を山中の小屋で過ごすことになった。性欲を抑えきれない三好は、佐助に尻を貸してくれと懇願する。 登場人物
坑ん中2009年4月『G-Bless』1号掲載。「あなんなか」と読む。職場恋愛をテーマにした作品を描いてほしいとの要望を受けて描かれた。炭鉱を題材としており、落盤事故で坑道内に閉じ込められた2人の炭鉱夫を描いている。闇に閉ざされた空間が物語の舞台となっており、全体的に暗黒を表現した描写がなされている。また、登場人物は北海道方言を使用している。 あらすじ上竜別炭鉱第二坑道内にて大規模な落盤事故が発生した。2度目の落盤で出入口は完全に遮断され、採炭夫の大作は逃げ遅れて坑道内に取り残されてしまったが、そこで上司の完次に出会う。完次が一度外に出た後、大作を捜すために坑道内へ引き返してきたことを知った大作は、完次に自分の心の内を告げる。 登場人物
三羽のカラス VS 秘密描き下ろし作品。上記の「三羽のカラス」と「秘密」をクロスオーバーさせており、両作品のキャラクターが登場する。「三羽のカラス」の3人組が「秘密」の内藤と七田に報復するという話だが、全体的にコミカルに描かれている。物語の最後には暖簾に「富士乃湯」と描かれた銭湯が登場する。 あらすじある日の夜更けに突然ギイチがタイスケの部屋を訪れた。ドアを開けたタイスケは、服が破れ鼻から血を流して傷だらけになったギイチを見て驚く。話を聞いたシンゴも駆けつけ、2人はギイチから、ハッテン公園で寝ていたら2人組にいきなり殴られて強姦されたことを告げられた。ギイチの携帯電話にはその時の様子が撮影されており、それを見たシンゴが、犯人は自分が所属しているレスリング部のOBであると気づく。怒りに燃える3人組は、犯人である2人組・内藤と七田に報復するために、ハッテン公園に2人を呼び出す。 ハッテン公園に呼び出された内藤と七田は、自分達を呼び出した相手を待ちながら、1週間前にギイチを襲った時のことを楽しげに語り合っていたが、しばらくして小便をするために内藤は七田から離れて茂みの中に入って行った。シンゴとタイスケは内藤が七田から離れて茂みに入った隙に内藤を捕縛し、七田から引き離すことに成功した。そして、状況を不審に思った七田の前にギイチが現れ、七田に1対1のフェラ勝負を持ちかける。 登場人物当節では「三羽のカラス VS 秘密」の内容に沿った登場人物紹介をする。それぞれの作品に関する登場人物の詳細については「三羽のカラス」および「秘密」の登場人物節を参照のこと。 三羽のカラス
秘密
その他イラスト集『G-men』の表紙に掲載されたCGイラスト63点の中から作者が選んだ9点や、ゲイナイトのフライヤーに使用されたイラストなどがカラーで多数収録されている。各イラストにはそれぞれ作者のコメントが添えられている。 キャラクターラフスケッチ集本短編集に掲載された作品の人物設定集。キャラクターのラフスケッチと、作中では登場しない裏設定などが多数記入されており、それらに対して作者のコメントが添えられている。 イラストコラム集『G-men』に掲載された以下のイラスト付きコラムが収録されている。
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