ワンダ・ヴェンサム(英: Wanda Ventham、1935年8月5日[1] - )はイングランドの女優。
1970年代のSFテレビドラマ『謎の円盤UFO』で演じたヴァージニア・レイク大佐役や、『オンリー・フールズ・アンド・ホーシズ(英語版)』(1989年 - 1992年)で演じたカッサンドラ・トロッター (en) の母パメラ・パリー役などで知られる。またロジャー・ムーア主演のテレビシリーズ『セイント 天国野郎』にも2話出演している。
2014年4月には『ピープル』誌の「世界で最も美しい人たち」(英: "Most Beautiful People in the World")企画で特集された[2]。
夫ティモシー・カールトン、息子ベネディクト・カンバーバッチも俳優である[3][4]。
俳優になるまで
ヴェンサムはブライトンで、母グラディス・フランシス(旧姓:ホルサム)、父フレデリク・ハワード・ヴェンサム[注釈 2]の間に生まれた[1][5]。当初は画家になろうと考えており、美術学校に1年通ったほか、休暇にはウェスト・サセックス・ワージングのコンノート・シアター(英語版)で背景画家として働いていた。ここでプロの舞台演劇に触れたことで、彼女は美術学校を中退し、演技の道に進むことになる。ヴェンサムはセントラル・スクール・オブ・スピーチ・アンド・ドラマに進学し、1956年に卒業した[7]。女優のジュディ・デンチは当時の1年後輩である[8][9]。
キャリア
ヴェンサムの映画初出演作品は、アンナ・ニーグルやシルヴィア・シムズが出演した映画『マイ・ティーンエイジ・ドーター(英語版)』(1956年)だった。他にも1964年の映画『キャリー・オン・クレオ(英語版)』や、1968年の映画『キャリー・オン・アップ・ザ・カイバル(英語版)』などに出演している。1966年のミステリー映画『殺しへの招待(英語版)』ではマーク・バーンズ(英語版)と共演した[10]。最もよく知られているのは、カルトシリーズ『謎の円盤UFO』で演じた、ストレイカー司令官(演:エド・ビショップ)に次ぐ高官のヴァージニア・レイク大佐役である[11]。
ヴェンサムはテレビ番組にも多数出演しており、ドラマ『ハートビート(英語版)』ではフィオナ・ウェストン役でレギュラー出演したほか、『Hetty Wainthropp Investigates(英語版)』ではマーガレット・バルショー役、『ラグ・トレード(英語版)』ではシャーリー役を演じた。他にも『マインダー(英語版)』ではアーサー・デイリーの恋人役を演じたほか、『カップリング(英語版)』ではスーザンの母親、『Men Behaving Badly(英語版)』ではデボラの母親役を演じた。1972年から1973年にかけてのドラマ『ロータス・イーターズ(英語版)』(BBC、15話)ではイアン・ヘンドリー(英語版)の相手役という主役級を演じ、エリック・アイドルの番組『ラトランド・ウィークエンド・テレビジョン(英語版)』にもゲスト出演した。ドラマ『デンジャー・マン(英語版)』にも出演したほか、パトリック・マクグーハンの『プリズナーNo.6』、シットコムの『エグゼクティブ・ストレス(英語版)』や『ネクスト・オブ・キン(英語版)』、スケッチ・ショー『トゥー・ルーニーズ(英語版)』にも出演している。
彼女はイギリスの長寿テレビドラマ『ドクター・フー』に3度出演している。最初の出演は1967年の "The Faceless Ones" (en) で演じたジーン・ロック役で、続いて1977年の "Image of the Fendahl" (en) (シア・ランサム役)、1987年の "Time and the Rani" (en) (ファルーン役)である。1977年の "Image of the Fendahl" ではデニス・リル(英語版)と共演したが、彼とはシットコム『オンリー・フールズ・アンド・ホーシズ(英語版)』でパメラとアランのパリー夫妻役を演じている。
2014年、ヴェンサムは夫のティモシー・カールトンと共に、BBCのテレビドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』に出演した[12]。この作品で夫妻は、実の息子であるベネディクト・カンバーバッチが演じるシャーロック・ホームズの両親役を演じている[13]。またドラマシリーズ『ホルビー・シティ(英語版)では、二重生活を送る病院患者マートル・マッキーを演じている[14]。
私生活
ヴェンサムは最初の夫ジェームズ・タバナクルと1957年に結婚し[15][16]、娘トレイシー(英: Tracy)を儲けている。夫妻は1974年11月12日に離婚した[17]。ドラマシリーズ『ア・ファミリー・アット・ウォー(英語版)』撮影中の1970年に現在の夫ティモシー・カールトンと出会い[18]、1976年4月に結婚した[15]。同年7月には息子[19]であるベネディクト・カンバーバッチが生まれている。夫妻は1973年の『ロータス・イーターズ(英語版)』第2シリーズなどで共演したほか、『SHERLOCK(シャーロック)』第3シーズンからは、息子のカンバーバッチを含めた一家共演を果たしている[12]。
フィルモグラフィ
映画
年 |
作品名 |
役名 |
備考
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1956年 |
マイ・ティーンエイジ・ドーター(英語版)(原題) My Teenage Daughter |
ジーナ Gina |
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1959年 |
ネイヴィー・ラーク(英語版)(原題) The Navy Lark
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メイベル Mabel |
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1961年 |
We Joined The Navy |
「手始めのテスト」の女子 The "Initiative test" girl |
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1962年 |
ソロ・フォー・スパロウ(英語版)(原題) Solo for Sparrow |
ウェイトレス Waitress |
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1964年 |
キャリー・オン・クレオ(英語版)(原題) Carry On Cleo |
美人競り師 Pretty Bidder |
クレジット無し
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1965年 |
ビッグ・ジョブ(英語版)(原題) The Big Job
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ドット・フランクリン Dot Franklin |
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ナック The Knack ...and How to Get It |
体育の女教師 Gym Mistress |
クレジット無し
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1966年 |
殺しへの招待(英語版) Death Is a Woman |
プリシラ・ブランストーン=スミス Priscilla Blunstone-Smythe |
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スパイ・ウィズ・ア・コールド・ノーズ(英語版)(原題) The Spy with a Cold Nose
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ウィンターズ夫人 Mrs. Winters |
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1967年 |
ミスター・テン・パーセント(英語版)(原題) Mister Ten Per Cent
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キャシー Kathy |
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1968年
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ブラッド・ビースト・テラー(英語版)(原題) The Blood Beast Terror
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クレア・マリンガー Clare Mallinger |
スタントワークもこなし、巨大な蛾の怪獣として着ぐるみでも登場。
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キャリー・オン・アップ・ザ・カイバル(英語版)(原題) Carry On Up the Khyber
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カージの最初の妻 Khasi's First Wife |
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1974年 |
Invasion: UFO (『謎の円盤UFO』シリーズ) |
ヴァージニア・レイク大佐 Col. Virginia Lake |
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吸血鬼ハンター(英語版)[20] Captain Kronos – Vampire Hunter |
レディ・ダーワード Lady Durward |
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2002年 |
Mrs Caldicot's Cabbage War (en) |
ヴィクトリア Victoria |
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2005年 |
アサイラム/閉鎖病棟 Asylum |
ブライディ・ストラッフェン Bridie Straffen |
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2012年 |
ラン・フォー・ユア・ワイフ(英語版)(原題) Run for Your Wife |
バスの女性 Lady on Bus |
カメオ出演
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2016年 |
ザッツ・ファビュラス! Absolutely Fabulous: The Movie |
ヴァイオレット Violet |
カメオ出演
|
テレビ番組
年 |
作品名 |
役名 |
備考
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1962年 – 1963年 |
ラグ・トレード(英語版)(原題) The Rag Trade
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シャーリー Shirley |
レギュラー出演、18話
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1964年 – 1965年 |
デンジャー・マン(英語版) Danger Man(原題)
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ステラ・ドーセット、ペニー Stella Dorset / Penny
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2話、それぞれ別役
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1964年 – 1966年 |
セイント 天国野郎 The Saint
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ローラ・ストライド、ペニー・ピアソン Laura Stride / Penny Pearson |
2話、それぞれ別役
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1965年 |
ライクリー・ラッズ(英語版)(原題) The Likely Lads |
アンジェラ Angela |
1話
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おしゃれ(秘)探偵 The Avengers |
スプレー看護師 Nurse Spray |
1話
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1967年 |
プリズナーNo.6 The Prisoner |
コンピューター係 Computer Attendant |
1話
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シーザーズ(英語版)(原題) The Caesars
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エニア (Ennia Thrasylla) Ennia |
1話
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1967年 – 1971年 |
トラブルシューターズ(英語版)(原題) The Troubleshooters
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モイラ・ハート Moira Hart |
リカーリング、4話
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1967年 |
ドクター・フー Doctor Who |
ジーン・ロック Jean Rock
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シリアル:"The Faceless Ones" (en) (全6話)
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1977年 |
シア・ランサム / フェンダール・コア Thea Ransome/Fendahl Core |
シリアル:"Image of the Fendahl" (en) (全4話)
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1987年 |
ファルーン Faroon |
シリアル:"Time and the Rani" (en) (全3話)
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1969年 |
The Gold Robbers |
ディー・ラッタリー Dee Lattery |
1話
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秘密指令S(英語版)(原題) Department S
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レイラ・ランキン Leila Rankin |
第2話
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1970年 |
Zカーズ(英語版)(原題) Z-Cars |
オーウェン夫人 Mrs. Owen |
1話
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1970年 – 1971年 |
ア・ファミリー・アット・ウォー(英語版)(原題) A Family At War
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ジェニー・グレアム Jenny Graham |
リカーリング、3話
|
1970年 |
ドクター・アット・ラージ(英語版)(原題) Doctor At Large |
マギー・ウェストン Maggie Weston |
1話
|
1970年 – 1973年 |
謎の円盤UFO UFO |
ヴァージニア・レイク大佐 Col. Virginia Lake |
レギュラー出演、9話
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1971年 |
サーティ・ミニッツ・シアター(英語版)(原題) Thirty-Minute Theatre
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ジャスミン Jasmine |
"Walt, King of the Dumper"[21]
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1972年 – 1973年
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ロータス・イーターズ(英語版)(原題) The Lotus Eaters |
アン・シェパード Ann Shepherd |
主役、15話
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1975年 |
ロンドン特捜隊スウィーニー The Sweeney |
ブレンダ Brenda |
1話
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1975年 |
ラトランド・ウィークエンド・テレビジョン(英語版) Rutland Weekend Television
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複数役 |
2話
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1976年 |
エマーデイル・ファーム(英語版)(原題) Emmerdale Farm
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ヘザー・バナーマン Heather Bannerman |
リカーリング、6話
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1977年 |
クラウン・コート(英語版)(原題) Crown Court
|
シビル・ハルステッド Sybil Halstead |
2話
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1978年 – 1979年 |
Fallen Hero |
ドロシー・ホプキンズ Dorothy Hopkins |
主演、11話
|
1980年 |
トゥー・ルーニーズ(英語版)(原題) The Two Ronnies |
ジャック Jack |
2話
|
1982年 |
マインダー(英語版)(原題) Minder |
ベリル・マードック Beryl Murdoch |
1話
|
1986年 – 1987年 |
エグゼクティブ・ストレス(英語版)(原題) Executive Stress
|
シルヴィア Sylvia |
リカーリング、4話
|
1988年 |
オール・クリーチャーズ・グレート・アンド・スモール(英語版)(原題) All Creatures Great and Small
|
リッジ夫人 Mrs. Ridge |
第5シリーズ第11話
|
1989年 |
キャプスティックズ・ロー(英語版)(原題) Capstick's Law
|
マッジ・キャプスティック Madge Capstick |
リカーリング、6話
|
1989年 – 1992年 |
オンリー・フールズ・アンド・ホーシズ(英語版)(原題) Only Fools and Horses
|
パメラ・パリー Pamela Parry |
リカーリング、4話
|
1995年 – 1996年 |
ネクスト・オブ・キン(英語版)(原題) Next of Kin |
ロージー Rosie |
リカーリング、6話
|
1996年 – 1997年 |
ハートビート(英語版)(原題) Heartbeat |
フィオナ・ウェストン Fiona Weston |
リカーリング、4話
|
2001年 |
カップリング(英語版)(原題) Coupling
|
エドナ Edna |
1話
|
2005年 |
バーナビー警部 Midsomer Murders |
ロマニー・ローズ Romany Rose |
1話
|
2007年 |
オックスフォードミステリー ルイス警部 Lewis |
エレナー・マロリー Eleanor Mallory |
1話
|
2014年 – 2017年 |
SHERLOCK(シャーロック) Sherlock |
ホームズ夫人(シャーロック・ホームズの母親) |
3話[注釈 3]
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舞台演劇
脚注
注釈
- ^ 英: James Tabernacle
- ^ 英: Gladys Frances (née Holtham) and Frederick Howard Ventham
- ^ 『空の霊柩車』、『最後の誓い』、『最後の問題』
- ^ 英: Theatre-on-the-Bay
出典
- ^ a b Ancestry.com. England & Wales, Birth Index: 1916-2005 [database on-line]. Provo, UT, USA: Ancestry.com Operations Inc, 2008. Original data: General Register Office. England and Wales Civil Registration Indexes. London, England: General Register Office.
- ^ “Stars & Their Hot Moms”. People: 139. (5 May 2014). https://pbs.twimg.com/media/BmB8oqcCEAAHvpZ.jpg 19 June 2015閲覧。.
- ^ “Sherlock: Benedict Cumberbatch 'so proud' of parents”. The Telegraph. (2014年1月2日). http://www.telegraph.co.uk/culture/tvandradio/10546727/Sherlock-Benedict-Cumberbatch-so-proud-of-parents.html 2017年8月7日閲覧。
- ^ “ベネディクト・カンバーバッチの両親だけでなく、プロデューサーの息子も出演している”. ドラマ「SHERLOCK シャーロック」のトリヴィア24. Elle girl. p. 11/24 (2017年1月25日). 2017年8月7日閲覧。
- ^ FreeBMD. England & Wales, FreeBMD Birth Index, 1837-1915 [database on-line]. Provo, UT, USA: Ancestry.com Operations Inc, 2006. Original data: General Register Office. England and Wales Civil Registration Indexes. London, England: General Register Office.
- ^ Central School of Speech and Drama Alumni Newsletter (19): 19. (July 2012).
- ^ MARTIN, ANNIE (2014年9月19日). “Benedict Cumberbatch is 'a true gentleman,' says Judi Dench”. UPI Entertainment. 2017年8月7日閲覧。
- ^ Tim Walker. Edited by Katy Balls (2014年9月18日). “Dame Judi Dench: Benedict Cumberbatch is a true gentleman”. デイリー・テレグラフ. 2017年8月7日閲覧。
- ^ 殺しへの招待 - MOVIE WALKER PRESS - 2017年8月7日閲覧。
- ^ 謎の円盤UFO - allcinema - 2017年8月7日閲覧。
- ^ a b “Benedict Cumberbatch 'so proud' of parents”. The Daily Telegraph. (2 January 2014). http://www.telegraph.co.uk/culture/tvandradio/10546727/Sherlock-Benedict-Cumberbatch-so-proud-of-parents.html 4 January 2014閲覧。
- ^ 山口浩太 (2014年1月7日). “「SHERLOCK(シャーロック)」第3シーズンにカンバーバッチの両親がカメオ出演”. シネマトゥデイ. 2017年8月7日閲覧。
- ^ Lazarus, Susanna (14 October 2014). “Benedict Mumberbatch! Wanda Ventham to appear on Holby City”. Radio Times. 1 October 2014閲覧。
- ^ a b Ancestry.com. England & Wales, Marriage Index: 1916-2005 [database on-line]. Provo, UT, USA: Ancestry.com Operations Inc, 2008. Original data: General Register Office. England and Wales Civil Registration Indexes. London, England: General Register Office.
- ^ Knowles, Stewart (28 July 1979). “Timothy, Wanda... and the rose that changed her mind about marriage”. TV Times: 14–15.
- ^ “TV star Wanda's friendly divorce”. Daily Mirror: pp. 9. (13 November 1974)
- ^ Passingham, Kenneth (22 March 1975). “It's good news to know I'm still fanciable”. TV Times: 21–22.
- ^ BANG Media International (2014年1月3日). “ベネディクト・カンバーバッチ、母親ワンダ・ヴェンサムのファンだという男性たちにとまどい”. シネマトゥデイ. 2017年8月7日閲覧。
- ^ 吸血鬼ハンター - allcinema - 2017年8月7日閲覧。
- ^ Walt, King of the Dumper - IMDb(英語) - 2017年8月7日閲覧。
外部リンク