デイリー・テレグラフ
デイリー・テレグラフ(The Daily Telegraph)は、1855年に創刊されたイギリスの一般紙サイズの新聞であり、オンライン上ではザ・テレグラフ(The Telegraph)[3]として配信される。姉妹紙のサンデー・テレグラフ (The Sunday Telegraph) は、1961年に創刊。 概要タイムズ、ガーディアン[4]とともに「高級紙」の代表格とされるが、ゴシップなど砕けた内容の記事は他と比べてやや多い。イデオロギー的には保守に属し、権威主義と自由主義に対しては中道に分類される。The Spectatorより自由主義的で、エコノミストよりは伝統主義的。保守党との関係が深く、個人的繋がりを持っているジャーナリストが多い。また、ウィリアム・ヘイグやノーマン・テビットのような保守党重鎮がコラムニストとして参加している。保守党の有力政治家であり、2019年7月より首相を務めているボリス・ジョンソンはテレグラフの出身である。推理小説作家のヘンリー・クリストファー・ベイリーも同社のリーダー・ライターだった[5]。 同じく保守的な論調を張るタブロイド紙のデイリー・メールを擁護しがちだと指摘されたことがある。よって、この新聞はしばしばDaily Torygraph(保守党日報)やらMaily Telegraph(デイリー・メール通信)などと揶揄される。 ガーディアンは2018年、デイリー・テレグラフが毎日新聞やニューヨーク・タイムズなどとともに、中国政府系の英字新聞チャイナデイリーが制作した小冊子「チャイナウォッチ」を折込広告として頒布していることを報じた。ガーディアンはその折込の見出しを引用して「古典的なプロパガンダ手法」と批判し、有名新聞に折り込むことで信憑性を借り受けようとしている可能性を指摘している[6]。2020年、ガーディアンはチャイナウォッチおよび人民網からの引用記事がデイリー・テレグラフのウェブサイトから削除されたことを報じた[7]。 疑似科学の発信デイリー・テレグラフは気候変動やCOVID-19など、科学に関して誤解を招く記事を定期的に発信している。 「小氷期が2030年までに到来する」「気候変動は多くの点で良いことである」をはじめ、気候変動に関するデイリー・テレグラフの記事は、気候学者から「不正確」「元の研究を誤って伝えている」などの批判を受けている[8][9]。デスモッグの調査によると、2023年にデイリー・テレグラフが発信した171本の環境問題の記事のうち、85%は気候変動の科学、政策、社会運動を攻撃するものであったことが判明している[10]。 2020年7月に「ロックダウンは無意味であり、COVID-19に罹患することでイギリスは集団免疫を達成できる」と主張した記事に対して、IPSOは「誤解を招く」として、訂正を求めた[11]。 歴史デイリー・テレグラフを創刊したスレイ大佐は初代バーナム男爵に売却するまでの短い間経営していた。バーナムの息子は初代カムローズ子爵に売却した。 その後もコンラッド・ブラックの買収までは、スレイとバーナムの家族はこの新聞の経営に関わっていた。 1908年、この新聞が掲載したヴィルヘルム2世の発言記録は論議を呼んだ(デイリー・テレグラフ事件)。イギリスとドイツの関係が悪化し、第一次世界大戦に繋がる世界的緊張感を増幅させた。 1937年、伝統的に保守的立場をとり引退将校を主な読者として持つモーニングポストを吸収合併する。当初はカムローズ卿はモーニングポストとデイリー・テレグラフの2紙併売を目指して買収したが、モーニングポストの少ない発行部数のため2紙は合併する。その後改題してモーニングポスト・アンド・デイリー・テレグラフになるが数年後現在の題字に戻る。 タイムズのタブロイドサイズ版発行に対して追随するかについては様々な臆測があるが、公式には否定している。 2016年のイギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票では離脱賛成の立場を取った[12]。 2023年11月、アラブ首長国連邦(UAE)とアメリカ合衆国合弁による投資会社が買収することでデイリー・テレグラフの経営陣と合意した。買収額は6億ポンド(約1130億円)としている。しかし、この投資会社はUAEの副大統領兼副首相でイギリス(プレミアリーグ)のサッカーチーム「マンチェスター・シティー」オーナーでもあるマンスールが株式の大半を保有しており、イギリス議会では与野党から「報道の自由を売りに出してはいけない」などと反対の声が上がっている[13]。 脚注
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