ワルサーPP
ワルサーPP(Walther PP)は、ドイツのカール・ワルサー社が1929年に発表したダブルアクション式自動拳銃である。.22口径(5.6mm)、.32ACP口径(7.65mm)、.380ACP口径(9mm)の3種類がある。PPとはPolizeipistole(警察用拳銃)を意味する。 ワルサー社が発表した10番目の自動拳銃で、ダブルアクション式自動拳銃としては世界で初めて商業的成功を収めた製品ともされている。 PPは各国の警察用として、また民間で銃の所持が許可されている国ではセルフディフェンス(自己防衛)用として使用されている。 軍用大型拳銃のP38は、PPのトリガー機構が転用されている。 歴史ワルサー社が自動拳銃の開発に乗り出したのは1908年のことだった。初期の製品はモデル1のように単純な名称のみ与えられていたが、モデル9に次ぐ10番目の製品として開発されたのがワルサーPPである。当時、各国の法執行機関では安全性などを重視してダブルアクション式の回転式拳銃が広く配備されていた。ワルサー社ではこれを受け、ダブルアクションを組み込んだ警察用自動拳銃の設計を行ったのである[1]。 1929年に特許が取得され、1930年から販売が始まった。最初に発売されたのは7.65mmオート弾および9mmショート弾仕様のモデルだった。1930年代初頭には.22口径弾や6.35mm弾仕様のモデルも発表されたが、普及はしなかった[2]。 ダブルアクションという珍しい特徴が評価され、発売後間もなくして欧州各国の警察組織が採用した。また、ナチス・ドイツの時代には、国家社会主義ドイツ労働者党が有する準軍事組織(SA、SSなど)、警察組織、そしてドイツ国防軍によって制式拳銃として採用された[3] 1931年に発表されたワルサーPPKは、プロイセン州警察からの要請を元に設計された。元々はショルダーホルスターを用いて拳銃を携行する私服警官向けのコンパクトなモデルと位置づけられていた[4]。 PPシリーズの生産は第二次世界大戦中も続けられたが、戦況が悪化した1943年から敗戦を迎える1945年頃までに製造されたものはそれ以前の製造分よりも品質が劣っていた[2]。 敗戦後、赤軍が進駐したドイツ東部から西部へと脱出したフリッツ・ワルサーは、ウルムにてワルサー社の再建に着手した。1952年、ワルサーは再建資金を確保するべくフランスのマニューリン(Manurhin[注 1])に接触し、PPシリーズの製造許可を与えた。マニューリンとの契約は1986年に失効した[1]。 ドイツ民主共和国(東ドイツ)では、かつてワルサー社の工場があったツェラ=メーリスにて接収したPPシリーズを主にドイツ人民警察へと配備していたほか、後にワルサー社の許可を得ないままPPシリーズの生産を再開した。P1001-0なる名称でコピー生産を行い、1970年代後半頃まで使用されていた[5]。 開発以来80年以上を経過した古典的拳銃であるが、使用弾丸規格が市場の主流規格であることや、21世紀初頭でも通用する安全機構を備えた高い設計完成度によって市場での商品性を保っており、姉妹モデルであるワルサーPPKと共に、現在でも生産が継続されている。 またダブルアクション機構の他にも、安全装置設計での高度な配慮、トリガー・ガードが分解時に回転しテイクダウン・ラッチとして機能する合理性など、コンパクトな設計に盛り込まれた機能的システムには注目すべき点が多く、世界各国で開発された後続の中型・小型自動拳銃にも大きな影響を与えている。 機構
派生モデル1930年代から様々な企業によって製造されてきたため、派生モデルや製造時期によるバリエーションの幅は広い。
脚注注釈出典
関連項目
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