ワサビノキ属 (ワサビノキぞく、山葵の木属、学名 : Moringa )は、アブラナ科 やフウチョウソウ科 に近縁で、単型 のワサビノキ科 (Moringaceae) を構成する唯一の属 である。ワサビノキ (M. oleifera )が広く栽培され、ワサビノキという場合にはこの種を指すことが多い。学名および英名はこの種のタミル語 名ムルンガイ(முருங்கை murungai)、テルグ語 名ムナッカイ(మునగ munakkai)およびマラヤーラム語 名ムリンガ(മുരിങ്ങ muringa)に由来する。
アフリカ から南アジア の熱帯 から亜熱帯にかけておよそ十数種 が分布する[ 3] 。樹高10mくらいまでの落葉高木 で、幹は直立し、葉 は1-3回羽状複葉 で非常に大きい。葉・花 ・樹皮・果実の鞘などに、ワサビ に似た香味があるところから名付けられたといわれる。日本国内では、栽培実績が少ないものの天草 地方や小豆島 などで栽培されている。
利用
ワサビノキ(Moringa oleifera )、マウイ島 カフルイ 。
南アジア から東南アジア では、ワサビノキの果実と葉が野菜・香辛料・民間薬などに用いられる。また、花に強い芳香があり、庭木としても用いられている。種子からとれるモリンガ油 は、時計用にも用いられるような最高級のマシンオイル(機械油)とされている。たんぱく質、繊維、各種ミネラル、各種ビタミン、アミノ酸などの栄養素を極めて高いレベルでバランス良く含んでいる。
エチオピア のコンソ では、段々畑でモリンガ・ステノペタラが栽培されている。野菜として収穫する他、コンパニオンプランツ としてその木陰でトウガラシ やモロコシ を栽培する。また、民間薬としても用いられる[ 4] 。
モリンガ・ステノペタラの種子の粉末は、水に混ぜて不純物を凝固させ、濾過して飲用水を作るのに用いられる。インド ではワサビノキの種子を同じ用途に利用しているが、モリンガ・ステノペタラの方が効果が高い[ 5] 。
栄養成分
ワサビノキのほとんどはヒトや家畜の食用となる。葉はタンパク質 、ビタミンA 、ビタミンB 、ビタミンC 、ミネラルが豊富である[ 6] 。ワサビノキの新葉100 には8.3 gのタンパク質、434 mgのカルシウム、404 mgのカリウム、738 μgのビタミンA、164 mgのビタミンCが含まれている[ 7] 。
タンパク質が豊富な葉をウシ に与えると、体重が最大32%増加し、牛乳 の生産が43%から65%増加することが示されている[ 8] 。種子はオレイン酸 が豊富な30から40%の油 を含んでいるが、脱脂 した粉末の61%はタンパク質である[ 9] 。脱脂粉末は凝集剤 であり、浄水 に使うことができる[ 10] 。
さらに、ラット による実験でワサビノキの葉の粉末エキスには妊娠中絶 効果がある可能性があることが示されている[ 11] 。
分類
M. drouhardii
M. hildebrandtii
M. stenopetala
M. ovalifolia
"slender"
"tuberous"
M. longituba
M. ruspoliana
系統[ 12]
Moringa ovalifolia
13種が属する。アフリカ南部に分布する種が最も基底的で、これらの種は水を蓄えるためにボトル型の幹を持っている。これらの種を起源として、大きく2つのグループに分かれていったと考えられている[ 12] 。
脚注
^ Missouri Botanical Garden . “Moringaceae Martinov ”. Tropicos . 2012年7月6日 閲覧。
^ a b Missouri Botanical Garden . “Moringa Adans. ”. Tropicos . 2012年7月6日 閲覧。
^ 18種 (Missouri Botanical Garden . “Moringa Adans. Subordinate taxa ”. Tropicos . 2012年7月6日 閲覧。 )、12種 (Stevens 2001 ) など
^ Under its current treatment of Moringa stenopetala (from its basionym, Donaldsonia stenopetala ), this species was published in Senckenbergiana Biologica 38: 407. 1957. GRIN (May 22, 1997). “Moringa stenopetala information from NPGS/GRIN ”. Taxonomy for Plants . National Germplasm Resources Laboratory, Beltsville, Maryland: USDA , ARS, National Genetic Resources Program. January 1, 2012 閲覧。
^ Desa, Dian (1985). “Water purification with Moringa seeds”. Waterlines 3 (4): 22–3. doi :10.3362/0262-8104.1985.019 .
^ Janick, Jules; Robert E. Paull (2008). The Encyclopedia of Fruit & Nuts . CABI. pp. 509–510. ISBN 978-0-85199-638-7 . https://books.google.co.jp/books?id=cjHCoMQNkcgC&redir_esc=y&hl=ja
^ “West African Food Composition Table ”. 2012年11月1日 閲覧。
^ “The Moringa Tree Moringa oleifera ”. Trees for Life International. 2009年12月29日 閲覧。
^ Schill, Susanne Retka (2008年5月14日). “Multidimensional Moringa ”. Biodiesel Magazine . 2011年9月26日 閲覧。
^ Schwarz, Dishna (June 2000). “Water Clarification using Moringa oleifera” . Technical Information W1e (Gate Information Service). http://www.deutsch-aethiopischer-verein.de/Gate_Moringa.pdf 2011年9月26日 閲覧。 .
^ Sethi N, Nath D, Shukla SC, Dyal R (1988). “Abortifacient activity of a medicinal plant "moringa oleifera" in rats” . Anc. Sci. Life 7 (3-4): 172-174. PMC 3336641 . PMID 22557610 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3336641/ .
^ a b Olson, Mark E. (2002). “Combining data from DNA sequences and morphology for a phylogeny of Moringaceae (Brassicales)”. Systematic Botany 27 (1): 55-73. doi :10.1043/0363-6445-27.1.55 .
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外部リンク