ワイエルシュトラス関数(区間 [−2, 2])。 この関数はフラクタル 挙動を示す: スケールを変えると似た構造が現れる(赤色の円)自己相似性をもつ。
ワイエルシュトラス関数 (ワイエルシュトラスかんすう、英 : Weierstrass function )は、1872年にカール・ワイエルシュトラス により提示された実数関数で、連続関数 であるにもかかわらず至るところ微分 不可能な関数である。病的な関数 (英語版 ) の例として取り上げられることがある。
「孤立点 を除くと連続関数は微分可能である」という認識を変えた出版された初めての例として、ワイエルシュトラス関数は歴史的に重要である。
ワイエルシュトラス関数
定義
ワイエルシュトラスのオリジナル論文において、この関数は次のように定義される。
w
(
x
)
=
∑
n
=
0
∞
a
n
cos
(
b
n
π
x
)
.
{\displaystyle w(x)=\sum _{n=0}^{\infty }a^{n}\cos(b^{n}\pi x).}
ここで、0 < a < 1, b は正の奇数整数。また、
a
b
>
1
+
3
2
π
.
{\displaystyle ab>1+{\frac {3}{2}}\pi .}
この定義は、微分不可能であることの証明とともに、1872年7月18日にプロイセン科学アカデミー (Königliche Akademie der Wissenschaften) へ提出された。
ハウスドルフ次元
ハウスドルフ次元 は次のとおりとなる[ 1] 。
D
H
=
2
+
log
a
log
b
{\displaystyle D_{H}=2+{\frac {\log {a}}{\log {b}}}}
スケール不変性
ワイエルシュトラス関数では和をn ≥ 0 についてのみとるため厳密にはスケール不変とはならない。
w
(
b
x
)
=
b
−
1
∑
n
=
0
∞
b
n
+
1
cos
(
b
n
+
1
π
x
)
=
b
−
1
∑
n
=
−
1
∞
b
n
+
1
cos
(
b
n
+
1
π
x
)
−
b
−
1
b
0
cos
(
b
0
π
x
)
=
b
−
1
[
w
(
x
)
−
cos
π
x
]
≠
b
−
1
w
(
x
)
{\displaystyle {\begin{aligned}w(bx)&=b^{-1}\sum _{n=0}^{\infty }b^{n+1}\cos {(b^{n+1}\pi x)}\\&=b^{-1}\sum _{n=-1}^{\infty }b^{n+1}\cos {(b^{n+1}\pi x)}-b^{-1}b^{0}\cos(b^{0}\pi x)\\&=b^{-1}\left[w(x)-\cos \pi x\right]\\&\neq b^{-1}w(x)\end{aligned}}}
したがって、厳密な意味での自己相似性をもたない。
リプシッツ連続性
ワイエルシュトラス関数のリプシッツ定数 は無限大である。
ワイエルシュトラス・マンデルブロ関数
ブノワ・マンデルブロ は、ワイエルシュトラス関数を一般化した次のワイエルシュトラス・マンデルブロ関数
(英:Weierstrass-Mandelbrot function)を提示[ 2] した。
定義
W
(
t
)
=
∑
n
=
−
∞
∞
(
1
−
e
i
γ
n
t
)
e
i
ϕ
n
γ
(
2
−
D
)
n
{\displaystyle W(t)=\sum _{n=-\infty }^{\infty }{\frac {(1-e^{i\gamma ^{n}t})e^{i\phi _{n}}}{\gamma ^{(2-D)n}}}}
,
ここで、 1 < D < 2, γ > 1 である。
これは、φ = 0として実部をとるとワイエルシュトラス関数となる。
Re
W
(
t
)
=
∑
n
=
−
∞
∞
1
−
cos
(
γ
n
t
)
γ
(
2
−
D
)
n
{\displaystyle \operatorname {Re} W(t)=\sum _{n=-\infty }^{\infty }{\frac {1-\cos(\gamma ^{n}t)}{\gamma ^{(2-D)n}}}}
フラクタル次元
ハウスドルフ次元は D と考えられているが厳密な証明はなされていない。
スケール不特定の条件下でのみスケール不変となる。
ただし、φn = μn 、不変となるものを離散的スケール不変性 (DSI, Discrete Scale Invariance)という。
統計的性質
アンサンブル平均はゼロ
⟨
W
(
t
+
τ
)
−
W
(
t
)
⟩
e
=
0
{\displaystyle \langle W(t+\tau )-W(t)\rangle _{e}=0}
分散はγ についてのみスケール不変となる。
V
(
τ
)
=
⟨
W
(
t
+
τ
)
−
W
(
t
)
⟩
e
=
2
∑
n
=
−
∞
∞
1
−
cos
(
γ
n
τ
)
γ
(
4
−
2
D
)
n
,
V
(
γ
τ
)
=
γ
4
−
2
D
V
(
τ
)
{\displaystyle {\begin{aligned}V(\tau )&=\langle W(t+\tau )-W(t)\rangle _{e}=2\sum _{n=-\infty }^{\infty }{\frac {1-\cos(\gamma ^{n}\tau )}{\gamma ^{(4-2D)n}}},\\V(\gamma \tau )&=\gamma ^{4-2D}V(\tau )\end{aligned}}}
パワースペクトル
パワースペクトルはおおよそ次の近似式で表すことができる。
S
(
ω
)
≈
1
ω
5
−
2
D
log
γ
{\displaystyle S(\omega )\approx {\frac {1}{\omega ^{5-2D}\log {\gamma }}}}
すなわち、D → 2 のとき1/fゆらぎ に近づく。
ワイエルシュトラス・マンデルブロ関数の一般化
ワイエルシュトラス・マンデルブロ関数(WMF)は、次のようにさらに一般化することができる[ 3] 。
W
g
(
t
)
=
∑
n
=
−
∞
∞
λ
−
n
H
(
g
(
0
)
−
g
(
λ
n
t
)
)
e
i
ϕ
n
{\displaystyle W_{g}(t)=\sum _{n=-\infty }^{\infty }\lambda ^{-nH}(g(0)-g(\lambda ^{n}t))e^{i\phi _{n}}}
,
ここで、H < 1、g (t ) は t = 0 で微分可能な周期関数。
脚注
^ Hunt, Brian (1998-03). “The Hausdorff dimension of graphs of Weierstrass functions” . Proceedings of the American mathematical society 126 (3): 791-800. doi :10.1090/S0002-9939-98-04387-1 . https://doi.org/10.1090/S0002-9939-98-04387-1 .
^ On the Weierstrass-Mandelbrot Fractal Function , Berry, M. V.; Lewis, Z. V., Proceedings of the Royal Society of London. Series A, Mathematical and Physical Sciences, Volume 370, Issue 1743, pp. 459-484
^
Courbes et Dimension Fractale , C. Tricot, Springer,1993
参考文献
(英語)
B.R. Gelbaum and J.M.H. Olmstead, Counterexamples in Analysis, Holden Day Publisher (June 1964).
Karl Weierstrass, Über continuirliche Functionen eines reellen Arguments, die für keinen Werth des letzeren einen bestimmten Differentialquotienten besitzen, Collected works; English translation: On continuous functions of a real argument that do not have a well-defined differential quotient, in: G.A. Edgar, Classics on Fractals, Addison-Wesley Publishing Company, 1993, 3-9.
G.H. Hardy, Weierstrass's nondifferentiable function, Trans. Amer. Math. Soc., 17(1916), 301-325.
K. Falconer, The Geometry of Fractal Sets, Oxford (1984).
(日本語)
関連項目
外部リンク