UR-100N ロコット 上段にブリーズ-M と衛星を搭載したモデル
ロコット (ロシア語 :Ро́кот ローカト ;英語 :Rockot またはRokot )は、ユニバーサル・ロケット を元に製造され、不要になった大陸間弾道ミサイル UR-100N (NATOコードネーム :SS-19)を衛星打ち上げに転用し、軌道 傾斜角65度、高度200km の軌道に1,950kg の貨物を投入できるロシア のロケット である。合弁事業ユーロコット により提供・運用される。1990年代 にミサイル・サイロ以外から初めて、バイコヌール宇宙基地 より打ち上げられた。後の商業打上では、プレセツク宇宙基地 にて、コスモス3M ロケット向けに建設された発射台より打ち上げられている。打ち上げ費用は1999年時点で凡そ1500万ドル [ 2] 、2013年時点で3,600万ドルである[ 1] 。名称は、ロシア語で「轟き」といった意味。
構成
ロコットの総重量は107トン 、全長29メートル で、最大直径は2.5メートル である。3段式の液体燃料ロケットで、全ての段で燃料として UDMH(非対称ジメチルヒドラジン) 、酸化剤として四酸化二窒素 を用いる。
第1・2段
1段目と2段目は旧ソ連 の大陸間弾道ミサイル UR-100N (SS-19) を使用している。他にSS-19を元にしたロケットとしてストレラ がある。
第3段
3段目は、ブリーズ-K (露:Бриз-К、ラテン:Briz-K、英:Breeze-K)である。第1・2段とは別に開発されたもので、軌道変更機能や宇宙空間でのエンジン再点火能力を持ち、複数の衛星を異なる軌道に投入する事が出来る。5号機以降は改良型のブリーズKMを使用している。
歴史
1990年 11月20日にバイコヌール宇宙基地より初めて打ち上げられ、弾道飛行を行った。1994年 12月26日に初めて人工衛星を軌道に投入した。EADS SPACE Transportationとクルニチェフ国家研究生産宇宙センター の合弁事業 であるユーロコット は、打ち上げ基地をプレセツクに移してロケットの販売を行っている。最初の発射は2000年 5月16日 に行われた。また、ロシア宇宙センターのスヴォボードヌイ宇宙基地 はSS-19を発射するサイロを所有し、必要とあらば、それをロコット向けに改修するとしている。
ロコットは幾つかの発射を成功裏に終わらせた後、2005年 10月8日に欧州宇宙機関 の衛星CryoSat を搭載して打ち上げられたが、2段エンジンが制御システムからのコマンドで停止できずに燃焼を続け、上段を分離しないまま落下して衛星を喪失した。このため全てのロコット打ち上げは失敗の原因が突き止められるまで中止となったが、2006年 7月28日の韓国 の地球観測衛星アリラン2号 (KOMPSAT-2) の打上成功をもって事業に復帰した。
2014年8月、ロシア国防相は2016年には飛行制御システムがウクライナ製であるロコットの使用を止めると述べた。2015年に3回、2016年に1回の計4回の打ち上げが予定されているが、それ以降はソユーズ2.1v とアンガラ1ロケット の使用に切り替えていく予定[ 3] 。2018年には再度段階的なロコット廃止の方針が示された。2019年12月には最終の34回目の打ち上げが実施された[ 4] 。
打上げ実績
打上げ回数は、弾道飛行と打上げ前の失敗を算入していない文部科学省 ・宇宙開発利用部会の平成24年12月の資料にあわせた[ 5] 。
打上回数
打上日 (UTC )
形式
打上場所
ペイロード
ペイロード種別
備考
-
1990年 11月20日
ロコット+ブリーズ-K
バイコヌール宇宙基地 Ba LC131
–
実験用ペイロード
弾道飛行、成功
-
1991年 12月20日
ロコット+ブリーズ-K
Ba LC175/1
–
実験用ペイロード
弾道飛行、成功
1
1994年 12月26日
ロコット+ブリーズ-K
Ba LC175/1
Radio-ROSTO
アマチュア無線衛星
成功、最初の衛星軌道投入
-
1999年 12月22日
ロコット+ブリーズ-K
プレセツク宇宙基地 Pl LC133
RSVN-40
実験用ペイロード
発射準備中に修復不可能な損傷を被り打上中止
2
2000年 5月16日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
SimSat-1,2
イリジウム衛星 の原寸模型
成功
3
2002年 3月17日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
GRACE -1,2
研究用衛星
成功
4
2002年 6月20日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
イリジウム 97,98
通信衛星
成功
5
2003年 6月30日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
モニトルE のモックアップ, MIMOSA , MOST , DTUSat, Cute-I , QuakeSat , AAU-Cubesat, Can X-1, XI-IV
Monitor-E原寸大模型と小型衛星2機とCubeSat 6機
成功
6
2003年 10月30日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
SERVIS-1
日本の技術試験衛星
成功
7
2005年 8月26日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
モニトルE1
地球観測衛星
成功
8
2005年 10月8日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
クリオサット
地球観測衛星
失敗 , 2段エンジンが停止できず、燃料がなくなるまで燃焼を続け、上段を分離しないまま落下した。第二段と第三段、CryoSatは分離しないまま大気圏に再突入した。
9
2006年 7月28日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
韓国のアリラン2号
地球観測衛星
成功
10
2008年 5月23日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
ロシアの4機の衛星
軍事衛星,通信衛星
成功
11
2009年 3月17日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
欧州宇宙機関 のGOCE
観測衛星
成功
12
2009年 7月6日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
コスモス 2451から2453
軍事衛星
成功
13
2009年 11月2日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
欧州宇宙機関 のSMOS , Proba-2
地球観測衛星,技術試験衛星
成功
14
2010年 6月2日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
SERVIS-2
日本の技術試験衛星
成功
15
2010年 9月8日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
ガニェーツ-M No.2, コスモス2467, コスモス2468
軍事通信衛星
成功
16
2011年 2月1日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
コスモス2470号
軍事測地衛星
失敗 ,第3段エンジンの不調で予定高度に到達できず予定軌道に投入できなかった。
17
2012年 7月28日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
ガニェーツ M-3, ガニェーツ M-4, Kosmos 2481, MiR
通信衛星, MiRのみアマチュアラジオ衛星
成功
18
2013年 1月15日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
コスモス2484-2486 (ストレラ 3M衛星)
軍事通信衛星
部分的成功 。ブリーズKMが衛星と同じ軌道に残ったままになっており、何らかの異常が起きた可能性がある(通常ブリーズ-KMは危険を避けるため逆噴射により軌道から退去する)。この件についてロシア軍は発表を行っていない[ 6] 。
19
2013年 9月11日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
ガニェーツ M 3機
通信衛星
成功。前回の一部失敗を受けて8ヶ月間打ち上げ中止して対策を実施した。
20
2013年 11月22日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
ESAのSWARM 3機
地磁気観測衛星
成功
21
2013年 12月25日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
コスモス2488-2490 (ストレラ3M衛星)
軍事通信衛星
成功
22
2014年 5月23日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
コスモス2496-2498 (ストレラ3M衛星)
軍事通信衛星
成功
23
2014年 7月3日
ロコット+ブリーズ-KM
Pl LC133
ガニェーツ M 3機
通信衛星
成功
出典
^ a b Stephen Clark (12 September 2013). “Rockot launch clears way for long-delayed ESA mission ”. SpaceFlightNow.com. 16 September 2013 閲覧。
^ “Rokot ”. Encyclopedia Astronautica. 16 September 2013 閲覧。
^ “Russian Defense Ministry to withdraw from use Rokot boosters in 2016” . ITAR-TASS. (2014年8月27日). http://itar-tass.com/en/russia/746873 2014年12月29日 閲覧。
^ William Graham (26 December 2019). “Rokot conducts final launch – carries three Gonets-M satellites to orbit ”. NASASpaceFlight.com. 2 December 2020 閲覧。
^ 文部科学省における宇宙分野の推進方策について 平成24年12月 参考資料(その4)
^ “ロコットの打ち上げ、完遂できなかった可能性” . sorae.jp. (2013年1月18日). https://sorae.info/030201/4758.html 2013年1月18日 閲覧。
外部リンク
各国テンプレート その他のロケット 一覧
開発中または未成功、退役済み のものを含む。