dX は集合 X 上の距離函数、dY は集合 Y 上の距離函数として二つの距離空間(X, dX) と (Y, dY) が与えられたとき(例えば、Y を実数全体の成す集合 R に距離函数 dY(x, y) = |x − y| を入れたもの、および X を R の部分集合とすることができる)。このとき、写像 f: X → Y がリプシッツ連続(あるいは単にリプシッツ)であるとは、実定数 K ≥ 0 が存在して
この不等式は x1 = x2 のとき(自明な意味で)成り立つ。これを除けば、写像がリプシッツ連続であることの同値な別定義として、定数 K ≥ 0 が存在して、
を満たすこととすることもできる。実多変数の実数値函数に対して、これが成り立つのは、任意の割線の傾きの絶対値が K で抑えられるときであり、かつそのときに限る。函数のグラフ上の一点を通る傾き K の直線全体の成す集合は円錐を成すから、したがって函数がリプシッツ連続であるための必要十分条件は、その函数のグラフが至る所この錐のまったく外側にあることである。
写像 f が局所リプシッツ連続であるとは、任意の x ∈ X に対して x の近傍U を適当に選べば f の U への制限 がリプシッツ連続であるときに言う。あるいは同じことだが、X が局所コンパクト距離空間ならば、f が局所リプシッツであるための必要十分条件は X の任意のコンパクト部分集合上でリプシッツ連続となることである。局所コンパクトでないときには、これは必要だが十分でない。
より一般に、X 上で定義された関数 f がヘルダー連続である、または X 上で次数 α > 0 のヘルダー条件を満足するとは、定数 M > 0 が存在して
至る所微分可能な函数 g: R → R がリプシッツ連続(リプシッツ定数 K = sup|g'(x)| を持つ)であるための必要十分条件は、それが有界な一階導函数を持つことである。一方の含意は平均値の定理から従う。特に、任意の連続的微分可能な函数は局所リプシッツである(連続函数は局所有界だから、その連続な導函数も局所有界である)。
リプシッツ函数 g: R → R は絶対連続であり、したがって殆ど至る所微分可能(つまりルベーグ測度0 の集合の外側の任意の点で微分可能)である。その導函数は絶対値がリプシッツ定数を本質的上界として本質的有界(英語版)である。また、a < b に対して、差分 g(b) − g(a) は導函数 g' の区間 [a, b] 上の積分に等しい。
逆に、f: I → R が絶対連続、従って殆ど至る所微分可能であるとし、|f'(x)| ≤ K (a.a. x ∈ I) を満たすならば、f はリプシッツ定数が高々 K のリプシッツ連続である。
より一般にラーデマッハーの定理は、この結果をユークリッド空間の間のリプシッツ写像に対して拡張する。U を Rn の開集合として、リプシッツ写像 f: U → Rm が殆ど至る所微分可能とする。さらに K が f の最小のリプシッツ定数とすれば、全微分Df が存在する限り ‖ Df ‖ ≤ K が成立する。
可微分リプシッツ写像 f: U → Rm に対し、不等式 ‖ Df ‖∞,U ≤ K が f の最小リプシッツ定数 K について成り立つ。さらに、U が凸ならば等号が成り立つ。
二つの距離空間の間のリプシッツ連続写像の列(fn) は、各 fn が適当な定数 K で抑えられるリプシッツ定数を持つものとする。fn が写像 f に一様収束するならば f もまた同じ定数 K で抑えられるリプシッツ定数を持つリプシッツ連続写像になる。特にここから、コンパクト距離空間上定義される実数値函数でリプシッツ定数が特定の値で抑えられるもの全体の成す集合が、連続函数全体の成すバナハ空間の閉凸部分集合となることが導かれる。しかし、「非有界」なリプシッツ定数を持つ函数列に対してはこの結果は成り立たない。実は、コンパクト距離空間上のリプシッツ函数全体の成す空間は連続函数全体の成すバナッハ空間において稠密である(ストーン–ヴァイヤストラスの定理からの初等的な帰結)。
任意のリプシッツ連続写像は一様連続であり、したがってより強い意味で(英語版)連続である。より一般に、有界なリプシッツ定数を持つ函数の集合は同程度連続な函数の集合を成す。(fn) が有界なリプシッツ定数を持つ一様有界列ならば収束する部分列を持つことがアルツェラ–アスコリの定理から従う。前段落の結果から、この列の極限函数もまたリプシッツであり、そのリプシッツ定数は同じ定数を上界に持つ。特に、コンパクト距離空間 X 上で定義されたリプシッツ定数 ≤ K を持つ実数値リプシッツ函数全体の成す集合は、連続函数全体の成すバナハ空間 C(X) の局所コンパクト凸部分集合になる。
U は距離空間 M の部分集合で、f: U → R はリプシッツ連続とするとき、f の延長となるリプシッツ連続写像 M → R が必ず存在して、f と同じリプシッツ定数を持つ(Kirszbraunの定理(英語版)も参照)。くだんの延長は、f の U 上でのリプシッツ定数を k として ~f(x) := infu∈U{f(u) + kd(x,u)} で与えられる。
リプシッツ多様体
U, V は Rn の二つの開集合とする。写像 T: U → V が双リプシッツ (bi-Lipschitz) とは、それが像の上へのリプシッツ同相写像であり、かつその逆写像もまたリプシッツとなるときにいう。
^Donchev, Tzanko; Farkhi, Elza (1998). “Stability and Euler Approximation of One-sided Lipschitz Differential Inclusions”. SIAM Journal on Control and Optimization36 (2): 780–796. doi:10.1137/S0363012995293694.