ヤー・ブルース
「ヤー・ブルース」(Yer Blues)は、ビートルズの楽曲である。1968年に発表された9作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』に収録された。レノン=マッカートニー名義となっているが、ジョン・レノンによって書かれた楽曲[4][5]で、インドのリシケーシュに滞在していた時期に書かれた。本作はイギリスで起こっていたブルース・ムーブメントに対する皮肉を込めた楽曲となっている。 背景1968年の春、ビートルズのメンバーはインドのリシケーシュを訪れ、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーのもとで超越瞑想の修行をしていた。この期間には同年に発売されたアルバム『ザ・ビートルズ』に収録された楽曲の大半が書かれていたが、本作もその1曲だった[6]。当時レノンはオノ・ヨーコとの関係に没頭し、当時の妻であるシンシアとの仲を悪化させていた[6]。本作の歌詞は「Yes I'm lonely wanna die(寂しい、死にたい)」というフレーズから始まるが、これについてレノンは 歌詞の中では、ボブ・ディランの「やせっぽちのバラッド」に登場する「ミスター・ジョーンズ」、ロバート・ジョンソンの「地獄の猟犬がつきまとう」の3番のヴァースの歌詞を引用して、当時の不安を暗示している。本作はレノンがブルースのパロディとして書いた楽曲で、ジャンプ・ブルースに触発されたギターソロがフィーチャーされている[7]。 1968年頃、イギリスの音楽業界ではブルースが流行し、デビュー以来ロック一辺倒だったバンドまでもがブルースを演奏してひと稼ぎする場合もあった。本作はその状況を逆手に取り、皮肉が込められた楽曲となっている[8]。題名はごく単純なものとなっており、1970年にレノンは インドからの帰国後、1968年5月にメンバーはイーシャーにあるジョージ・ハリスンの自宅に集まり、アルバム『ザ・ビートルズ』のセッションに向けてデモ音源をまとめる作業を行った。その中で本作のデモ音源も録音されたが、後のスタジオでのレコーディングまでに、一部のフレーズが書き替えられた[8]。 曲の構成曲は、リンゴ・スターの「Two, Three」のカウントインから始まる[3]。「ブルース」をタイトルに含んだ楽曲だが、音楽的には標準的なブルースの形式に沿っていない[8]。基本は8分の12拍子ながら、曲の途中には4分の4拍子やシャッフルのリズムに変わるセクションが含まれている[3]。 キーはEに設定されているが、「If I ain't dead already(もし俺がまだ死んでいなければ)」から続くセクションではGのコードが使用されている[8]。 レコーディング「ヤー・ブルース」のレコーディングは、1968年8月13日に開始され、同月14日と20日にオーバー・ダビングのためのセッションが行われた[9]。同日のセッションは、EMIレコーディング・スタジオのスタジオ2のコントロール・ルームの隣にある2A号室で行われた[10][8]。2A号室は8×15.5フィートほどの広さで、かつてはテレフンケン製の4トラック・レコーダーが収容されていたが、それがコントロール・ルームに移されてからは、倉庫として使用されていた[8]。空き部屋となったものの、レコーディングのために機材をセッティングすると、動けるスペースはほとんどなく、エンジニアのケン・スコットは 1968年にレノンは、2A号室でのレコーディングについて ベーシック・トラックはドラム(スター)、ベース(マッカートニー)、ギター(レノンとハリスン)という編成で録音された[7]。マスターにはテイク6が採用されたが、その後も演奏は続けられた[8]。その後、2本のギターをトラック3にまとめたミックスがテイク16となり、テイク6の冒頭部分が再度コピーされたのち、4トラックのテープを切って、曲の3分17秒に繋がれて、フェード・アウトのインストゥルメンタル・セクションになった[8]。8月14日にトラック4にレノンとマッカートニーがボーカルを加え、2分25秒目にスネアドラムが追加された[8]。なお、トラック3にはオリジナルのギターソロの上に、音にふらつきを持たせたギターの音が加えられた[8]。8月20日にスターのカウントが追加された[7]。 本作のレコーディングで、マッカートニーはフェンダー・ジャズベースを使用しており[7][9]、レコーディングを見学したエアロヴォンズのトム・ハートマンもフェンダー・ジャズベースを使用していたことを証言している[3]。 10月14日にミキシング作業が行われた。モノラル・ミックスに比べてステレオ・ミックスは早くフェード・アウトする[7]。 ライブ・パフォーマンス1968年にローリング・ストーンズが制作したテレビ映画『ロックンロール・サーカス』では、「ザ・ダーティー・マック」名義で、レノンとエリック・クラプトン(ギター)、キース・リチャーズ(ベース)、ミッチ・ミッチェル(ドラム)が本作を演奏している[11]。なお、レノンの生演奏は、1966年8月29日のサンフランシスコ公演以来初となった。 クレジット※出典[12]
カバー・バージョン
脚注注釈出典
参考文献
外部リンク
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