ムイスカサウルス
ムイスカサウルス(学名:Muiscasaurus)は、前期白亜紀のコロンビアに生息していた、オフタルモサウルス科に属する絶滅した魚竜の属。模式種である Muiscasaurus catheti のみが知られている[2]。 発見コロンビアのボヤカ県に位置するヴィラ・デ・レイヴァの近郊に露出した石灰岩の堆積物であるパジャ層 Arcillolitas abigarradas 部層において、ムイスカサウルスの化石が2010年に発見された。この地層の地質時代は前期白亜紀バレミアン期からアプチアン期にあたる。化石にはアンモナイトが付着していたが、保存状態が劣悪であったため同定は不可能であり、それにより層序を用いた正確な年代測定が行われた。発見された化石は模式標本 CIP-FCG-CBP-74 とされており、部分的な頭骨と椎骨および肋骨から構成されている。この化石は2015年に新属新種 Muiscasaurus catheti に指定された。属名はコロンビア中央のムイスカ人と、「トカゲ」を意味するギリシャ語saurusに由来する。種小名は「垂直」を意味し、鼻孔の形状を反映している。化石はヴィラ・デ・レイヴァの古生物調査センターに所蔵されている[2]。 形態椎骨の骨化が不完全であることと頭骨の比率から、ムイスカサウルスの化石は幼体の個体とされている。標本は吻部の前部と頭骨の後部が欠損しており、右側へ潰れている。顎は非常に細長く、比較的小さな歯が保存されている。 ムイスカサウルスは比較的大型の動物であり、現存する頭骨長は45センチメートル、本来の長さは48 - 65センチメートルと推定されている[2]。この個体の全長は3メートルに、成体では5メートルに達した可能性がある[3]。進化した魚竜と同じく、ムイスカサウルスは引き締まった流線型の体をしており、尾は半月状で四肢は全てヒレ足に進化していた[3]。 ムイスカサウルスは以下のように、最も近縁な属とは異なる特徴を持つ。前上顎骨が非常に薄く、鼻孔が部分的に2つの楕円構造に分かれる。前方の部分は垂直に存在し、後方の部分は水平に存在する(他のオフタルモサウルス科の魚竜では鼻孔は完全に開いているか、または完全に2つに分かれていた)。後方は狭く、薄い方頬骨が存在し、歯は非常に薄く、厚いエナメル質と粗い縞模様は存在しなかった。一方でペルヴショヴィサウルスやプラティプテリギウスといった近縁の魚竜は歯が大きく、エナメル質に溝が存在した[2]。 系統発生ムイスカサウルスは、オフタルモサウルス科に分類された化石に基づいて記載されており、この科にはジュラ紀と白亜紀に生息した大半の魚竜が属している。プラティプテリギウスやカイプリサウルスおよびブラキプテリギウスからなるサブグループに関し、ムイスカサウルスはオフタルモサウルス科の中でも基盤的な位置にいたとされている。ただし、カイプリサウルスとブラキプテリギウスはムイスカサウルスよりも古い属である[2]。 以下のクラドグラムは、マクスウェルの2015年の系統解析に基づく。
古生態ムイスカサウルスに加え、パジャ層では他の魚竜であるプラティプテリギウスが発見されている。本属はムイスカサウルスとは異なり、頑丈で大きな歯を持ちその表面にはエナメル質の溝が存在する。ムイスカサウルスはプラティプテリギウスよりも小型で柔らかい獲物を捕食する、特殊化した形状だったことが示唆されている。これは、白亜紀の新熱帯区で魚竜が生態的地位を分けていたことを示している[2]。 出典
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