ミール (深海探査艇)
ミール (ロシア語: "Мир", 世界 または平和)は自律推進型の深海潜水艇である。この計画は当初、ソビエト科学アカデミー(現在のロシア科学アカデミー)とラズリト設計局によって基本設計がなされ、後にフィンランドに2隻が発注された。詳細設計と建造はフィンランドのラウマ・レポラの海洋部門が担当し、ミール1とミール2は1987年に納入された。このプロジェクトはシルショフ海洋研究所から派遣された技術者の監督の下で進められた。 特徴船体は科学研究に使用する目的で設計された。潜水艦の救助作業をアシストするために使用することも想定されているが、潜水中に人が乗り移るだけのスペースはない。2隻のミールを運搬し、潜水作業中の指揮をとる母船は調査船アカデミク・ムスチスラフ・ケルディシュ。現在、2隻ともロシア科学アカデミーが運用している。 ミールは最大6000メートル(19,685フィート)まで潜水できる。3000メートル以上潜水できる有人潜水艇はミールの他には、アメリカのアルビン、シークリフ、ディープスター20000と日本のしんかい6500とフランスのノティールと中国の蛟竜号がある。世界の海洋の98%は6,000m未満の深度であることから、ほとんどの海域に対応できる。深海層まで潜水できるこれらの潜水艇は全て乗員が3人である。 従来の深海潜水艇は、チタンを溶接して耐圧殻を製造していたが、ミールの耐圧殻はチタンよりも引張り強度/重量比が10%優れているマルエージング鋼で作られている [1]。この合金は約30%のコバルトと少量のニッケル、クロムとチタンから構成される。2個の半球は鋳造、機械加工され溶接を避けてボルトで接合される。船体全体の比重は水の比重に近く、そのため異なる深度へと容易に移動できる。さらに浮力は容積8立方mのシンタクチックフォーム(直径数十~数百μmのガラスなどの中空球を合成樹脂で固めた材料)で得る[1]。他の深海潜水艇が海洋底に到達する為に鉄製のバラストを使用するのとは異なり、ミールはバラストタンクによって浮力と深度を調節する[1]。
フィンランドとソビエトの共同作業2隻のミールの建造は、冷戦下におけるフィンランド-ソビエトの経済的、技術的な協力の重要な例になった。カナダ、フランス、スウェーデンからの応札は、おそらくは政治的圧力により、撤回された。後に、当時のラウマ・レポラの部門長であったピーター・ラクセルがSTT(フィンランドの通信社)に語ったところでは、「プロジェクトはどうせ失敗するとアメリカのココム委員会が思っていたことが前提となって、フィンランドは船体を納入する許可を得ることができた」と信じている。「我々が設計を成し遂げたことが彼らの目にも明らかになるや、どうしたらこんな技術をソビエトに売ることが出来るんだと大騒ぎになって、ペンタゴンにはたくさんの人が押しかけた」[3] ココム規制のために、使用されているほとんどの技術をフィンランドで開発しなければならなかった。電装はホルミングが開発した。シンタクチックフォームは、業界首位の3Mが供給を断ってきたので、エクセルが製造した[1] 。 ソビエトに流入する技術レベルの高さがアメリカで問題になったのである。例えば、海底に敷設したアメリカの対潜水艦深海聴音装置を除去することが可能な先導潜水艦部隊を組織するのではないかという懸念をペンタゴンは持っていた[1]。ラウマ・レポラは裏で経済的な制裁を行うという脅しを受けた。利益の大きい洋上型石油プラットフォームの市場を失う可能性の前にラウマ・レポラは屈し、フィンランドでの潜水艦の開発はストップした(ラウマ・レポラは会社を閉鎖し[1]、その後ホルミングと合併してフィンヤードとなった。現在のSTX)。また燃料電池を基にした大気非依存推進(こうした機関は主として潜水艦の主機に用いられる)の開発が放棄された。 全長122mの母船である調査船アカデミク・ムスチスラフ・ケルディシュも同様に1980年にフィンランドのラウマのホルミング造船所(現在の STX フィンランド)で建造された[4]。 探検
脚注
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