ミノタウロスC
ミノタウロスC(英語: Minotaur-C)は、アメリカの航空宇宙企業オービタル・サイエンシズ社(OSC、後のノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ)が開発した人工衛星打ち上げ用の使い捨て全段固体燃料ロケットである。開発当初はトーラス (Taurus) の名称だったが、2011年の二度目の打ち上げ失敗後に改良が行われ、同時に現在のミノタウロスシリーズに準じた名称に改められた[2][3]。末尾の「C」は商用 (Commercial) を意味する[2]。また旧称の「トーラス」はおうし座の英名である。 概要OSCの運用する空中発射ロケットペガサスとデルタII等の中型ロケットの間を埋める軌道投入能力をもつロケットを目標として国防高等研究局 (DARPA) の支援のもと開発されたペガサスの地上発射バリエーションがトーラスである[4]。当初はSSLV ("Standard Small Launch Vehicle") と呼称され1989年に契約が行われ開発が進められた[5]。 政府機関用人工衛星や商用人工衛星の打ち上げに用いられる他、全段固体で即応性の高い設計により軍事衛星の打ち上げにも適している。1994年の初飛翔以来、10機が打ち上げられ7機が成功した。2009年と2011年に二回連続で同じ原因で打ち上げ失敗した後、再設計を行うとともに現在のミノタウロスCの名称に改められている[2]。 構成・諸元通常の場合ロケットの初段は第1段と表記するが、OSCではトーラスの初段を第0段と表記している。これはトーラスがペガサスの地上発射バリエーションとして開発されたという経緯によるもので、これを踏まえ本項では初段を第0段と表記する。 トーラスは第0段から第3段または第4段までで構成される4段または5段の全段固体燃料のロケットであり、モータは全てATKランチ・システムズ・グループ(旧チオコール)が製造する[6]。第0段ブースタとしてピースキーパーICBMの第1段であるTU-903や、キャスター120を採用し、その上段としてペガサスとほぼ同じモータを用いる構成をもつ。上段モータのペガサスとの主な差異は翼や可動ノズル推力偏向制御 (MNTVC) 能力の有無による姿勢及び誘導制御方式の違いのみであるが、一部モータでは推進剤量にも差異が認められる。第4段はオプションであるが2008年までに使われたことはない。 トーラスの構成は4桁の数字によって表記され、おおまかに1000番台のSSLVトーラス、2000番台の標準型トーラス、3000番台のトーラスXLの3種に区分される。他にフェアリングや第3段の種類、第4段の有無によってさらに細かく区分されている[7]。構成と番号の対応を以下に示す。
数字による区分で1000番台にあたる軍事用トーラスである。ARPA (現DARPA) が使用する場合はARPAトーラス、空軍が使用する場合はエアフォース・トーラスと呼ばれるが、構成は同一のものであり、共に第0段ブースタとしてピースキーパーの初段TU-903を採用しているのが特徴である。3機が打ち上げられ全て成功している。
数字による区分で2000番台にあたる商業打ち上げ用の標準型トーラスである。SSLVトーラスとの差異は第0段ブースタにキャスター120モータを採用している点にある。このモータはATKがTU-903をもとにして商業打ち上げを行うアテナ用に開発したものである。第0段の最大加速度や構造質量が改善されており、軌道投入能力は向上している。3機が打ち上げられ、1機が失敗した。
数字による区分で3000番台にあたる商業打ち上げ用の増強型トーラスである。標準型と異なり1,2段にペガサスXLと同様の拡張型モータを用い、軌道投入能力の向上が図られている。4機が打ち上げられ、2機が失敗した。
打ち上げ実績10機の打ち上げは全てヴァンデンバーグ空軍基地LC-576Eから行われている。
オービタル・ブースト・ビークル/トーラス・ライト→「GBI (ミサイル)」も参照
OSCはアメリカミサイル防衛局の地上配備型ミッドコース防衛システム (GMD) における地上発射式の弾道弾迎撃ミサイルとして大気圏外迎撃体 (EKV) を搭載するオービタル・ブースト・ビークル (OBV:Orbital Boost Vehicle) を供給している。これはトーラス・ライトとして考案されたもので、トーラスXLの第0段ブースタを取り除き第1段ノズルを地上発射用に改修した構成をもつ[12]。 後継機→詳細は「アンタレス (ロケット)」を参照
OSCはNASAとの商業軌道輸送サービス (COTS) 契約に則り、国際宇宙ステーション補給機シグナスと、それを打ち上げる中型ロケットのアンタレス(トーラスIIから改名)を開発している。原型機とは異なり第1段にAJ26-62(エアロジェットがアメリカ向けに改修したNK-33)を2機用いる液体燃料ロケットであり、2013年に初打ち上げが行われている[13]。 出典・脚注
関連項目外部リンク |