ミッドナイト・ラン
『ミッドナイト・ラン』(Midnight Run)は、1988年公開のアメリカ合衆国のアクションコメディ映画。監督はマーティン・ブレスト、出演はロバート・デ・ニーロ、チャールズ・グローディンなど。逃亡犯の懸賞金を稼ぐバウンティハンターと、彼に捕らわれた男が、さまざまな事情でともに追われる身となりながら、友情を通わせていくロードムービー。第46回ゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディ部門にて作品賞、主演男優賞(デ・ニーロ)の候補になった。 タイトルの意味は、「一晩で終わる簡単な仕事」、「仕事は簡単」、「ちょろい仕事」というスラングである[2]。 ストーリーシカゴマフィアの麻薬王・セラノの買収をはねつけた刑事のジャック・ウォルシュは、制裁として薬物犯罪をでっち上げられてシカゴを追われ、遠く離れたロサンゼルスで、逃亡犯にかけられた懸賞金を稼ぐバウンティハンターとして生計を立てるようになった。ある日、彼となじみのベイルショップ(保釈保証業者)のエディが、ある人物の捜索を依頼する。男の名はジョナサン・マデューカス、通称「デューク(公爵さま)」。堅気の会計士だったが、顧客・セラノがマフィアであることを知ったことで義憤に駆られ、帳簿を操作し、マフィアの資金を奪って慈善事業に寄付したために横領罪で逮捕されるが、保釈後に行方をくらましていた。10万ドルの報酬支払いの条件は、裁判までの残り5日間のうちに、デュークの身柄を彼の保釈金を立て替えたエディに引き渡すことだった。 ベイルショップの電話番、ジェリーの内通により、デューク探しの情報はセラノに伝わる。セラノは組織の秘密を多く握っているデュークを、見つけ次第消そうとしていた。彼の手下・トニーとジョーイがジャックの前に現れる。トニーはデューク引き渡しの条件として、エディよりも高い100万ドルの報酬を提示するが、かつてセラノの買収を拒んでシカゴ警察を追われた因縁があるジャックは、返答を曖昧にする。トニーは「今度は受けたほうが賢いぜ」と諭して、一味のアジトであるホテルの連絡先をジャックに手渡して別れる。更にジャックが行方を眩ました、裁判の重要参考人であるデュークの行方を追いかけてることを知った連邦捜査局(FBI)捜査官のモーズリーはジャックに会い、重要な証人を先にFBIに引き渡すよう警告する。だが10万ドルの賞金でアシを洗って飲食店を開きたいジャックは意に介さないどころか、モーズリーの捜査官証をひそかにスリ取る。デュークを追いかける思惑は、三者三様の三つ巴の様相を帯びてくる。 ジャックはニューヨークにデュークの妻が住んでいることを知り、急行。モーズリーになりすまし、デュークの妻宅に出頭を命じる電話をかけ、さらに妻が大急ぎでデュークへ電話する際のプッシュ信号を盗聴したことで、あっさりとデュークの居場所を割り出して身柄を拘束する。ふたりはロサンゼルス行きの飛行機に乗り込んだが、デュークが飛行機恐怖症(のちに嘘と判明する)であることを訴えて騒ぎ始めたために旅客機を追い出され、アムトラックの長距離列車に乗り換える。ジャックからの連絡がないことにしびれを切らせたエディは、別のバウンティハンター、マーヴィンにふたりの捜索を依頼する。ジャックを窃盗と身分詐称の罪で追うFBIも、このエディとマーヴィンの電話連絡を盗聴して情報をつかみ、ふたりの足取りを追いはじめる。 マーヴィンはジャックになりすましてクレジットカード会社に電話し、彼が最後にカードを使った場所からふたりの現在地である列車の居場所を割り出す。しかし列車に乗り込んだマーヴィンはジャックの返り討ちに遭う。ジャックはFBIが追いつく前にデュークを連れて列車を降り、長距離バスでの移動をはかるが、マーヴィンにカードを止められたために資金が足らず、やむなくシカゴ行きの便に乗る。シカゴのバス乗り場にはマフィアが待ち受け、デュークの暗殺を狙っていたが、FBIと鉢合わせし、銃撃戦となる。その騒ぎに乗じてふたりは逃げ出す。ジャックは金を借りるため、元妻・ゲイルの自宅に向かう。元同僚と再婚し気まずい再会の中、ゲイルは少額の金と自動車を与える。そして貯金を手渡そうとする9年ぶりの愛娘との再会に、ジャックも心を揺さぶられるのだった。 互いが何者かさえもよく知らなかったジャックとデュークは、逃避行の中、身の上話をしていくうち、それぞれにセラノに因縁があることや、自分たちなりの曲げられない正義感があることを知り、親近感を深める。そんなふたりに、ついにモーズリーらFBIが追いついた。マーヴィンもその追跡劇に加わり砂漠でのカーチェイスの果て、ジャックはFBIに、デュークはマーヴィンに捕らえられた。マーヴィンはより高い報酬を求め、エディに連絡せずにトニーとジョーイに接触するが、間が抜けてた為に支払いの約束を反故にされたうえ、デュークも奪われる。 連行されたジャックは、モーズリーら捜査官に、セラノの逮捕計画を提案する。ありもしない「デュークがマフィアの裏帳簿を記録したフロッピーディスク」をでっち上げ、ジャックがその偽ディスクをセラノに手渡して「証拠隠滅罪」が成立した瞬間に隠れた捜査官が飛び出す、という案だった。モーズリーはジャックの罪を不問に付し、計画の協力を快諾する。ジャックはかつてトニーにもらった連絡先のメモを元に、セラノに電話をかける。乗り気になったセラノはジャックのハッタリに応じ、アジト近くの空港を引き渡し場所に指定する。 空港のロビー。ジャックとセラノが対峙する。ジャックは突然「ディスクはデュークとの交換だ」と告げる。FBIは聞かされていない展開に戸惑う。また、ふたりに気づいたマーヴィンが割り込んだことで計画が大きく乱れる。ジャックはなんとかデュークを奪還したうえで偽ディスクをセラノに押し付け、それを確認したFBIがセラノたちを逮捕する。セラノ一味の検挙によりFBIがデュークを注視する理由がなくなったため、モーズリーはジャックとデュークを解放する。 ふたりはふたたび飛行機に乗り込み、ロサンゼルスに着く。エディの約束の期限の30分前だった。エディに電話をかけたジャックは、デュークの声を聞かせたのち、心変わりがしたと報酬を断って電話を切る。そしてデュークの手錠を外し、逃亡生活に戻るようすすめ、自身が大事にしていた腕時計を手渡す。確かな友情を感じたデュークは礼として、腹巻きに隠し持っていた旧1000ドル札の束を手渡す。エディが提示したよりもはるかに多い、30万ドルの大金だった。「来世で会おう」と互いに別れの言葉を交わし、去り際にジャックが振り返ると、すでにデュークの姿は消えていた。ジャックは1000ドル札でのタクシー乗車を断られ「仕方ない歩くか」と街に向かって歩きだすところで、軽快なテーマ曲と共にエンドロールを迎える キャスト
製作企画最初に製作権を持っていたのは、パラマウント・ピクチャーズだった。ロバート・デ・ニーロの出演が先に決定していたため、彼と釣り合う相手役の選考が難航したと監督のマーティン・ブレストは述べている。パラマウントは作品に性的な要素を込めようと、主人公とともに旅する犯罪者の役柄を女性に変更し、シェールの起用を提案。しかし、ブレストは「性転換」を拒否。パラマウントは次にデ・ニーロとロビン・ウィリアムズのコンビにしてはどうかと提案したほか、オーディションでの選考も推奨した。その中には、ブレイク前のブルース・ウィリスも含まれていた。ブレストはデ・ニーロを交えたチャールズ・グローディンのオーディションで、2人にリアルな化学反応と関係性を感じ、グローディンの起用を推し進めようとしたが、商業的成功を危惧したパラマウントは離脱。製作はユニバーサル・ピクチャーズへと移行した。 ジョン・アシュトンは人から勧められ、本作のオーディションに参加した。アシュトンはこの数年前、ブレスト監督の「ビバリーヒルズ・コップ」と続編にも出演していたが、今回は主人公の商売敵、マーヴィン役で受けた。会場にはデニーロがおり、マッチを使って罵りあう即興を2人で演じた。オーディションが終わり、アシュトンが去った直後、デニーロがブレストに「彼が欲しい」と伝え、アシュトンの出演が決定した。 作品と役柄にリアリティを与えるため、ブレストとデ・ニーロは、本物のバウンティハンターと行動をともにし、夜通しの張り込みや賞金首の取り押さえ現場に立ち会った。いわゆる「デ・ニーロ・アプローチ」の一環である。 脚本
撮影
音楽ダニー・エルフマンが担当した映画のサウンドトラックCDは、流通枚数が少なく入手困難となり、競売市場で比較的高値で取引きされていた。 サントラに収録の「Try to believe」はエルフマン自身がボーカルを担当している。エルフマンが在籍していたバンド「Oingo Boingo」のアルバム『Dark at the End of the Tunnel』に別バージョンが収録されている。 エンディングに流れる「Try to believe」のインストゥルメンタル版はCD盤には未収録だったが、のちにSpotifyなどの配信サービスで比較的容易に聴くことができるようになった。 作品の評価
日本語吹替
日本語版制作スタッフいずれもテレビ朝日版。
追加収録日本語版制作スタッフ吹き替えに関してテレビ朝日版は、チャールズ・グローディンを吹き替えた羽佐間道夫によると当初は逆のキャスティングがなされていた(ロバート・デ・ニーロを羽佐間が、グローディンを池田勝が吹き替える予定であった)が、後にプロデューサーの猪谷敬二から「羽佐間さんはこっち(チャールズ・グローディン)のほうがいいですよ」との一声があったことで現在の配役に決定したという[10]。 このテレビ朝日版は吹替ファンの間に絶大な人気があり、またきわめて評価が高く、吹替映画史上最高傑作と評されることもある[11]。 権利元が音源を紛失してしまったため長らく再放送の機会に恵まれなかったが、一般から当時の放送録画を公募して音源を復刻し、さらに吹替収録時にカットされたシーン[12]の分をオリジナルキャスト(故人等、諸事情で出演が不可能なキャストには代役が立てられている)が追加収録し、ノーカット吹替版が完成。この「地上波吹替追録版」は2018年7月8日にムービープラスで初放送された[13][14][15]。 2018年10月11日発売の『ユニバーサル思い出の復刻版BD』にはVHS版およびテレビ朝日版地上波吹替追録版の2種類を収録[11]。なおVHS版はモノラルと表記されているが実際はステレオで収録されている。 トリビア![]()
テレビ映画1994年に本作をもとにしたテレビ映画が3作制作されている。ジャックなど、映画版に登場したキャラクターが数名登場するが、演じている俳優は全員異なる。
キャスト(テレビ映画版)
脚注
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