ミズウオ
ミズウオ(水魚、学名:Alepisaurus ferox)は、ヒメ目ミズウオ科に属する硬骨魚類の一種。海底から離れて生活する、中層遊泳性の深海魚である[2]。 分布広い生息範囲をもち、北海道以南を含む北太平洋から、インド洋・大西洋・地中海にかけて分布する。成魚は水深900〜1,500mの深みに棲息する深海魚である[2]。 特徴深海魚の中では大型の部類で、体長1.5〜2.5mにまで成長する。体は細長く、やや左右に平べったく側扁する。体表には鱗がなく、銀色の光沢をもつ。他の多くの中層遊泳性深海魚の例とは異なり、発光器はもたない。 背鰭が非常に大きく、体の3分の2を占め、拡げると体よりも大きい。仔魚の鰭は比較的小さく、サバなど一般的な魚に似た姿をもつ[2]。 目が大きく、吻(口先)は尖って伸びる。大きな口には鋭い牙を備え、いかつい顔つきを呈する。貪欲な肉食性の魚類で、その大きな口と牙で、深海の他の生物を見境無く丸呑みにする。時には共食いさえも行い、過大な獲物を消化管に詰まらせて死んでしまう例もある[3]。牙は獲物を切り裂くために使われているわけではなく、捕えた獲物を逃がさない檻のような役目を果たしている。 筋肉には水分と脂肪分が多量に含まれ、煮たり焼いたりすると水分が抜けて肉が縮み、溶けてしまうかのようになる[4]。「ミズウオ」という名前の由来はここからきており、普通は食用としての価値はほとんどないが[2]、比較的新鮮な個体を生のまま醤油漬けにして食べると、こんにゃくのような味がするという(動物の世界26巻 1979)。 類似種ミズウオ科には2属3種が含まれる[6]。また、同じヒメ目のハダカエソ科(Paralepididae)[注釈 1]に所属するミズウオダマシ属のミズウオダマシがいる。ミズウオと似ているが、ミズウオとは違い背鰭はない。牙はやや前向きで吻はより長く、下顎がやや長く突き出ているところが特徴である。 日本の北陸地方では、ノロゲンゲ(Bothrocara hollandi)を「ミズウオ」とも呼び郷土料理の食材として用いるが[7]、ノロゲンゲはスズキ目の魚類でミズウオとの類縁関係は遠い。 深海汚染の指標ミズウオは深海で生活しているが、表層水温の下がる夜間や冬季には浅海に上がってくることもある[3]。弱った個体が浜辺に打ち上げられ、新聞やニュースなどで話題となることがある。 ミズウオはマグロ延縄にかかることもあるなど、深海魚としては比較的目に付く機会は多い。浜辺に打ち上げられたり、捕獲されたりしたミズウオの胃からは、丸呑みされた他の深海魚など貴重な標本が得られることもある[8]。近年では、ミズウオの胃の中からビニール袋などのプラスチック製品がしばしば見つかっており[8]、海洋汚染の実態を知る上で重要な標本となる。貪欲な性質によって飲み込まれた消化できない化学製品が、本種を衰弱させている可能性がある[3]。 脚注注釈
出典
参考文献
関連項目外部リンク
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