マーティン/呪われた吸血少年
『マーティン/呪われた吸血少年』(マーティン のろわれたきゅうけつしょうねん、Martin)は、1977年製作、1978年5月10日にアメリカで公開されたホラー映画。監督はジョージ・A・ロメロ。 概要『ザ・クレイジーズ 細菌兵器の恐怖』(The Crazies / CODE NAME:TRIXIE / The Mad People (1973))に続いてロメロが監督した劇場用映画。現代を舞台に、人間の血を求める少年(自称84歳)と、彼を監視するいとこの老人との確執を軸に、ドラキュラ伯爵に代表される吸血鬼伝説を新たな視点・角度から描いた作品である。ロメロは本作を「自身の手掛けた作品の中で、最も気に入っている」と公言している。 本作には、後のロメロ作品に関わる出演者やスタッフ、いわゆる“ロメロ・ファミリー”が多々集まっている。カメオ出演している製作者のリチャード・P・ルビンスタインは、本作よりロメロとパートナー提携を行いローレル・グループを設立、本作以降のロメロ作品をプロデュースしてゆく。特殊メイクアップアーティストのトム・サヴィーニは本作がロメロ作品への初参加で、卓越した技術でリアルなスプラッター描写を披露した。また彼は俳優としても本作に出演している(アーサー役)。主演のマーティンを演じたジョン・アンプラスは、本作以降のロメロ作品に出演、『ゾンビ』ではキャスティング・ディレクターも務めている。クリスティーナ役のクリスティーン・フォレストもロメロ作品へ多数出演、『ゾンビ』ではアシスタント・ディレクター、『死霊のえじき』ではキャスティング・ディレクターなども担当。1981年にロメロと結婚した(後に離婚)。バイカーの恋人でチョイ役出演したゲイラン・ロスは『ゾンビ』『クリープショー』に出演。DJ役で声のみで出演し、本作の撮影監督を務めたマイケル・ゴーニックは『ゾンビ』以降も撮影監督として参加。その他、『ゾンビ』に関わるドナ・シーゲル、トニー・ブーバ、パスカル・ブーバなども出演している。 ストーリーピッツバーグ行きの夜行列車で、青年マーティンは女性客を襲い、睡眠薬を注射して眠らせると生血をすすった。翌朝、犯行の証拠と死体を隠蔽し、通路にあふれる乗客たちをすり抜けてホームに降り立った彼の前には、白いスーツに身を包んだ老人が待ち構えていた。彼の名はクーダ。とても同年代には見えない2人だが、関係性は“いとこ”であるという。支線に乗り換えさらに小さな町に降りると、マーティンはろくに話しかけられることもないままクーダの自宅へと導かれる。マーティンの吸血行為を知っているクーダは、彼を自宅に住まわせ、行動のすべてを監視することにしていた。マーティンを“悪魔”だと考え、「町の人間には手を出すな」と警告するクーダは、室内に十字架やニンニクを掲げてマーティンを牽制するが、彼は「病気に過ぎない」と、十字架やニンニクが何の効力もないことを示す。 クーダの経営する食料・日常雑貨店の手伝いをすることになるマーティンだったが、時おり湧き上がる血を求める衝動を抑えることができず、夜に家を抜け出しては凶行を続けていく。その一方で、クーダの孫であるクリスティーナと打ち解けた彼は、彼女の提案で部屋に電話を引く。孤独を抱え、自らが何者であるか思い悩むマーティンは、ラジオの身の上相談に匿名で電話。自分が吸血鬼であることを告白すると、彼は次第にリスナーの人気者となっていく。 互いに孤独を抱える者として共感し、マーティンは唯一、町で暮らすサンティーニ夫人と心を通わせていく。吸血衝動が次第に抑えられ、マーティンは、このまま普通の生活を送っていくかに思えた。だが、夫人が突然自殺したことをきっかけに、物語は衝撃的な結末を迎える。 スタッフ
キャスト
その他声の出演:ニケライ・ファラナーゼ、岸本百恵、所河ひとみ 劇場公開・ソフト化1985年のソフト発売時に、一般試写を兼ねた限定上映が行われたことがある。 第30回東京国際映画祭(2017年)のオールナイト企画「ミッドナイト・フィルム・フェス! ジョージ・A・ロメロ フォーエバーナイト ~ロメロよ今夜もありがとう~」で上映される。同上映では『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ 米国劇場公開版』も上映。上映前に映画評論家の町山智浩によるトークショー[2]が行われた。 1985年の初ソフト化(VHS、ベータマックス、VHD)を経て、2001年にDVDが発売。その後長らく廃盤であったが、2018年に世界に先駆けてブルーレイが日本発売された。
クラウドファンディングによる日本語吹替版制作本作は、これまでソフト収録およびテレビ放送用に日本語吹替版が制作された記録がなく、2018年9月9日~10月30日に、ブルーレイの発売に合わせた新規吹替版制作企画の資金集めが、クラウドファンディングサイト「Makuake」にて行われた[4]。吹替版を制作することは当初から決まっており、同ファンドの目的は、出演声優を豪華にするための資金集めだった。出資は「オールイン方式」(出資額の達成に関わらず実施)で行われ、最終的には目標額には達しなかったものの、江原正士、大塚明夫、堀内賢雄など有名声優の追加キャスティングが実現した。 出資者の出資額に応じて配布されたリターン(非売品グッズ)内容は、「完成した吹替版(ダイジェスト版)のオンライン試写」「ポストカード3枚セット」「一般商品とは異なる、別デザインのインナージャケットのブルーレイ商品」「吹替台本」「参加声優のインタビュー映像特典DVD」「参加声優のサイン入り台本」などである。また、リターンの一部に声優の選択権があり[5]、当該コースへの出資者により、川本克彦(マーティン役)、江原正士(アーサー役)、大塚明夫(ハワード神父役)が選出された。主人公のマーティン役に選ばれた川本は、「選んでいただけたなんて驚きです。こんなことは初めてで、すごくうれしい[6]」と語っている。 バージョン違いジョージ・A・ロメロ監督が最初に編集したバージョンは、モノクロ映像で2時間45分あると言われる。プリントの所在は不明で、ロメロ自身もどこにあるか分からないとのことだった。 『ゾンビ』のイタリア側のプロデューサーのひとりであるアルフレッド・クオモは、ローレル・グループと『ゾンビ』を共同製作する際に『マーティン』の配給権を同社より購入した。ダリオ・アルジェントのアドバイスにより、アルジェント作品にスコアを提供していたゴブリンの非サントラのアルバム曲(「ローラー」「マーク幻想の旅」など)を中心に、本編の音楽が差し替えられた。また、ジョディプレス(アルド・サルヴィの別名義)による数曲と、ゴブリンが本作のために作曲した「Wampyr」も挿入された。 同バージョンは、冒頭の夜行列車での吸血シーンが物語中盤に移動されるなど、本編自体も細かく編集されている。このイタリア編集版は『Wampyr』と改題されて1979年にイタリアで公開されたが、製作者のリチャード・P・ルービンスタインに無許可で編集されたものであり、ロメロ監督、ルービンスタインもこのバージョンを認めていない。そのため、日本で発売されたブルーレイには収録の許諾が下りなかった。海外のKoch MediaやArrow VideoのDVDに収録されているが、製作者のルービンスタインによれば、いずれも「無許可で収録している海賊版」とのことである。 出典
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