マルチスズキ・ワゴンR
マルチスズキ・ワゴンR(Maruti Suzuki Wagon R)は、1999年から主にインド市場向けに子会社のマルチ・スズキを通じてスズキによって製造販売されている小型乗用車(Aセグメント)である。ワゴンRのインドでの発売は1999年12月18日に始まり、数度の改良が行われている。第2世代ワゴンRのモデルとスタイリングは、いくつかの違いがあるがインドネシア市場のカリムン・ワゴンRおよびパキスタン市場のワゴンRと共通である。 当初マルチ製ワゴンRは日本市場向け軽自動車のワゴンRとプラットフォームを共有していたが、第3世代のマルチ製ワゴンRは日本で販売されているワゴンRとは無関係である。マルチ製ワゴンRはスズキ・HEARTECTプラットフォームを使用していた。 インドで製造されるワゴンRは「マルチ」の呼称を外して、バングラデシュ、ブータン、ネパール、スリランカなどの近隣諸国にも輸出されている。 2019年12月31日現在、ワゴンRはインドで240万台以上販売されている[1]。 初代(1999年 - 2010年)
初代ワゴンRは1999年12月18日にインドで導入された。日本で販売される軽自動車を基にしたワゴンRは、ヒュンダイ・サントロの対抗車種として開発された。ワゴンRは背の高い乗員でも簡単に座ることができるなど車内空間の広さによりインドで人気を得た。また、1999年頃のインドでは贅沢で考えられていたパワーウィンドウやパワーステアリングのような機能も適用された[2]。エンジンは、最高出力64 ps @ 6,600 rpm、最大トルク84 N·m @ 3,500 rpmを発揮するスズキの直列4気筒 1.1L F10D型SOHC16バルブガソリンエンジンを搭載した。 2003年にフェイスリフトが行われ、グリルにめっきの線、車体と同色のバンパー、クリアレンズ仕様テールランプが追加された。車内は大きな収納空間を持つベージュ色のダッシュボードが備え付けられている。2006年、DUOと呼ばれる液化石油ガス(LPG)版が販売開始。また、新デザインのメッキ加飾されたグリルとテールゲートも追加された[3]。 初代ワゴンRは累計で約88万台が販売された[4]。
2代目(MP31S; 2010年 - 2019年)
2代目ワゴンRは2010年4月23日にインド、ニューデリーで発表された[5]。日本の4代目ワゴンRから引き継がれた全く新しいプラットフォームを使用し、全長は3,595 mmに伸び(75 mmの拡大)、ホイールベースは2,400 mmとなった。2代目ワゴンRは先代よりも幅と高さも拡大している。ABS、エアバッグ、フォグランプなどの安全装備も取り入れられているが、これらは最上級グレードに限定される。グレードはLX、LXi、VXi。 ワゴンR 1.0と呼ばれるモデル(2010年)は、998 ccの直列3気筒K10B型エンジンを搭載する。エンジンは最高出力68 ps @ 6,200 rpm、最大トルク90 N·m @ 3,500 rpmとなる。また、5段変速モデルを発売開始した。この5段変速版はトップグレードのVXi(ABSが標準装備)にのみ設定された。また、全てのワゴンRおよびスティングレーでABSをオプションとして設定した。ワゴンRの販売価格は4.14ラークインド・ルピーで、スティングレーの価格はワゴンRよりも2万インド・ルピー高かった。 2代目の最初のフェイスリフトは2013年1月14日に行われた。内容は表面的な変更で、狭くなったグリル、大型ベント付きのスタイルが新しくなったバンパー、新しいフォグランプハウジングなどである。内部の変更はデュアルグローブボックス、USBおよびAUXポート付きEagle Wings音楽システムなどである。 2014年、マルチ・スズキはマルチ・スズキ・スティングレーを発売開始した。基本的にはスタイルが新しくなった2代目ワゴンRであり、通常版と並行して販売された。スティングレーの特徴はより大胆で、力強い見た目の顔である。このセグメントとしては初めとなるプロジェクターヘッドランプが装備された。あとで、マルチ・スズキはスティングレーの名称を捨てて、ワゴンRの最上級グレードとしてワゴンR VXi+に改名した[3]。 2015年、古くなった3段オートマチックトランスミッションに替えて、5段オートメイテッドマニュアルトランスミッション(オートギヤシフト、AGS)が導入された。
カリムン・ワゴンRカリムン・ワゴンR(Karimun Wagon R)は、インドネシア政府のローコストグリーンカー(LCGC)政策に合致させるためのインド仕様ワゴンRのリバッジ版である。2013年9月に開催された第21回インドネシア国際モーターショーで最終製品版が公開された。生産は2013年9月にインドネシア国内市場向けにタンブン工場で始まり、2013年10月に市販された。当初はGA、GL、GXの3グレードで展開された。2014年6月にDilagoグレード(GLグレードを基にしてスポーティーなボディキットと追加のアクセサリが装着され、GXグレードの上に位置付けられた)が販売開始されたが、2015年末に販売が終了した[6][7]。「ディラゴ」は現地のモルッカ諸島の言葉で「最高になる」と意味する[8]。 インド仕様のワゴンRスティングレーに基づく、カリムン・ワゴンR GSと呼ばれる、よりスポーティーなグレードが2014年9月に販売開始された。2015年5月には5段オートギヤシフト(AGS)版が登場した[9]。カリムン・ワゴンRは2017年4月の第25回インドネシア国際モーターショーで改良型が発表され、GA、GL、GSの3グレード構成となった。また、GAおよびGSグレードを基にした受注生産のパネルバンも用意された。50th Anniversary Editionと呼ばれる限定車が2020年10月に発売開始された[10]。この限定車は基本的には以前の2014年GL Dilago特別仕様車のGS版である。このモデルはインドネシアにおけるスズキ・インドモービルの50周年を記念して発売された。 インドネシア製ワゴンRは基本的にはインドのワゴンRの余分な装備を取り除いたものである。インドのワゴンRにあってインドネシア製ワゴンRにないものは、ハイマウント型ストップランプ、リアフォグランプ、リアワイパー、リアウォッシャー、デフォッガー、電動ミラー、リアのめっきガーニッシュ上の「Wagon R」のレタリング、HVACシステムと調節、同乗者用サンバイザー、防眩バックミラー、ファブリック製ドアトリム、リアパワーウインドウ、調節可能なヘッドレスト、60:40分割バックシート、ティルトステアリング、助手席グローブボックス、助手席用エアバッグ、ABS、運転席側のカップホルダー、ヘッドランプレベリングアジャスター、ブーツパーセルトレイ、CNG仕様などである。 カリムン・ワゴンRは2021年末にインドネシアで販売が終了したが、パキスタンへのノックダウンキットの輸出は継続している[11]。
パックスズキ・ワゴンRパックスズキ・ワゴンR(Pak Suzuki Wagon R)は、インドネシアのスズキ・ワゴンRのパキスタン版であるが、インド版のようにより先進的な空調システム、2-DIN一体型9インチLCDオプション、デフォッガー、ブーツパーセルトレイ付きで、GS(スティングレー)および商用パネルバンがない。Dilagoアクセサリーは別オプションとして利用可能である。政治問題のせいでインドからの輸入が不可能であるため、インドネシアからノックダウンキットとして輸入され、パキスタンのパックスズキによって組み立てられている。ノックダウンキットは2013年11月以降インドネシアから輸入されており、2014年4月に3グレード(VX、VXR、VXL)で販売開始された[12][13][14]。VXグレードは2016年に販売中止された。2020年1月、VXLグレードにはオートギヤシフト(AGS)と運転席エアバッグオプションが追加された[15]。 3代目(2019年- )
3代目ワゴンRは2019年1月23日にインドで販売開始された[18]。3代目ワゴンRはイグニスと同じHEARTECTプラットフォームを使用している[18]。その結果として、先代モデルよりも軽量にもかかわらず、ボディ構造の剛性はより高くなっている。スズキが日本の軽自動車規格のワゴンRとインド市場のワゴンRを独立させたため、3代目ワゴンRは先代よりも大きくなった[19]。ホイールベースは35 mm長くなり、幅は125 mm広くなった。乗員数は4人から5人に増えた[20]。大きさの拡大を強調するため、マルチ・スズキは3代目ワゴンRを「Big New Wagon R」と宣伝した。 インド以外では、バングラデシュ、ネパール、スリランカにも輸出されている。スリランカでは「グランドワゴンR」として販売されている[16]。 3代目で初めて、ワゴンRには2種類のエンジンが採用された。基本グレードは先代から引き継がれたK10B型1.0リットルガソリンエンジンであり、オプションとしてK12M型1.2リットルガソリンエンジンを選ぶことがでいる。1.0リットルエンジンはマニュアルトランスミッション仕様のみなのに対して、1.2リットルエンジンはマニュアルトランスミッションとAMTのいずれも用意されている。ワゴンRの1,2リットルエンジンは最高出力82 PS (60 kW)、最大トルク113 N·mを発揮する。対して、1.0リットルエンジンは最高出力68 PS (50 kW)、最大トルク90 N·mである[21]。工場で取り付けられるCNGキットオプションもインドの1.0 LXiグレードで提供されている[22]。CNGモードではガソリンモードよりも出力とトルクは低下し、車重も重い。 2022年2月25日に改良版が発表された。新しくアイドリングストップ機能付きのK10C型1.0リットルエンジンとK12N型1.2リットルエンジン、ベージュとダークグレーの2トーン内装色、黒色ルーフを持つ2トーン外装色、黒色塗装された14インチアルミホイール、AMTモデルでは坂道発進補助装置が追加された[23]。 2022年12月12日、ワゴンRフレックスフューエルプロトタイプが発表された[24]。エタノールを混合したフレックス燃料に対応している。規制はBS6フェーズII排出基準に準拠する。
安全性運転席用エアバッグ付きのインド仕様ワゴンRは2019年にグローバルNCAPから大人の乗員に対して2スター、子供の乗員に対して2スターを獲得した[25]。 販売台数
出典
外部リンク |
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