マルガタクワガタ属
マルガタクワガタ属(マルガタクワガタぞく、Colophon)は、昆虫綱・コウチュウ目・クワガタムシ科に属する分類群。全ての種が絶滅危惧種とされ、南アフリカ・西ケープ州の山地で局限的に分布する希少なクワガタムシである。 形態体長は15mm-35mmほどの中小型クワガタムシである。前胸部と前翅は半円状で、スカラベの様な丸っこい体型をもつ。頭部は極端に小さく、中脚と後脚の基節は距離が近いなど、一般のクワガタムシと大きく異なる。 プリモスマルガタクワガタ以外ではほとんどの種は黒一色で、オスの前脛節と短い大アゴはメスより発達し、それぞれ重要な同定形質となる。代わりに種ごとの外見的差異の少ないメスの同定は難しい。 オスの交尾器は左右対称な種類と非対称な種類とがあり、属内の類縁関係を窺わせる同定形質となる。 飛翔能力を失っていることも大きな特徴で、一部の標本から小さく退化した後翅の存在が確認できる。移動能力の小さい他の陸上生物と同様、一般的に生息地の距離が近い種類同士ほど近縁であると考えられている。 保全状況分布は南アフリカに限られ、標高の高い限られた地域にしか生息しないため、保護生物に登録、一切の採集、国外流失を禁止、2000年9月には本属すべてが輸入の際は保護を行う原産国の輸入許可証が必要となるワシントン条約Ⅲ類附属書Ⅲに指定された。 本属の種はすべて絶滅危惧種とされ、保全状況評価は以下となる:
生態生息環境はテーブルマウンテンの頂上部で、互いに断崖で隔てられた高山植物と岩石に満たされるごく限られた地域の為、他のクワガタムシの生態とは大きく異る。 幼虫は土食、3~4年を掛けて成虫になると推測される。成虫は徘徊性、朝と夕方に活動すると記載されるが、登山者の目撃情報によって日中で見かけることもある一方、夜行性と推測する学者もいる。食性は不明、実験から原産地の植物を含めて色んなものを与えても摂らないことがある。目撃情報から成虫の発生期はおそよ11月~1月、寿命はおよそ2月以下と思われる[1]。 前述のとおり採集が禁止されていることもあり、詳しい生態は明らかになっていない。 系統本属は、南米に分布するチリクワガタ属やオーストラリアに分布するムナコブクワガタ属等と、小さい頭部などの外見的共通点を持つ。遺伝子解析の結果は、本属がチリクワガタ属やムナコブクワガタ属と単系統群を構成し、ゴンドワナ大陸起源の祖先を持つことを示唆している[2]。
この単系統の中において、マルガタクワガタ属は最も初期に分化し、残りの分類の姉妹群とされ、そしてアフリカ大陸に分布する唯一の属である。他の属はオーストラリア大陸と南米大陸に分布し、ユーラシア大陸には分布しない。 分類Jacobs, Scholtz et Strumpher (2016) により三新種が記載され、C. eastmani の亜種であったC. eastmani nagaii が独立種昇格の処置が行われたため、本属は17種1亜種から以下の21種となる[3]。
分岐図Switala 2013 の遺伝子分析により、当時は17種のうち実験使用可能な12種の分岐順序が明らかとなっている[1]。 この分岐図の順番でプリモスマルガタクワガタからマルガタクワガタまで、オスの交尾器は左右非対称、ヒューストンマルガタクワガタ以下の種はほぼ左右対称の形となる。
脚注
参考文献月刊むし・増刊号 第2号 「南アフリカの自然とコロフォン属の生態」(1997年、むし社) |
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