マウゼル [ 1] (; 英 : Mousehole 、コーンウォール語 : Porthenys )は、イングランド ・コーンウォール にある村・漁港の名前である[ 2] 。ペンザンス から南に2.5マイル (4 km)の海岸・マウント湾 (英語版 ) に位置し[ 3] [ 4] 、ペンザンスの行政教区 (英語版 ) のひとつでもある。また港の入り口から350メートル (380 yd)沖合には、「セント・クレメント小島」(英: St Clement's Isle )と呼ばれる島嶼 が存在する。
マウゼルは自然保護公園の一種であるコーンウォール特別自然美観地域 (英語版 ) (AONB[ 5] ) の中に存在する[ 6] [ 7] 。コーンウォール一帯のおよそ3分の1がAONBに指定されており、国立公園と同様の地位・保護レベルにある。
歴史
マウゼルの旧称は「ポース・エニーズ」(英: Porth-Enys )という[ 4] 。この村はマラザイアン (英語版 ) と共に、16世紀 までマウント湾 (英語版 ) の主要港のひとつだった。主要な貿易中心地として衰退するまでは、マウゼルにも数多くの定期市 や市場 が存在し、毎週火曜に市場を開く許可状が出されていたほか、1292年 にヘンリー・ド・タイズ(英: Henry de Tyes )から許可された、聖バーナバス の祭り毎に3日間開催される定期市などで賑わっていた[ 8] 。マウゼルはマウント湾にある多くのコミュニティ同様、アルヴァートン荘園 (英語版 ) の管理下にあって、初期の定期市や営業特権などはすべてこの荘園の所有物であった[ 9] 。
マウゼルはペンザンス・ニューリン (英語版 ) ・ポール (英語版 ) などと同様、1595年のコーンウォールの戦い (英語版 ) で破壊された。この戦いではスペイン のカルロス・デ・アメスキータ (英語版 ) がマウント湾に侵攻し[ 4] [ 10] 、地元のパブ である「キーグウィン・アームズ」 'Keigwin Arms' だけが戦火に耐えて残った[ 11] [ 注釈 1] 。現在この建物は私有物件となっているが、外壁には「大地主ジェンキン・キーグウィンは、この家をスペイン人から守って1595年 7月23日 にここで殺された」[ 注釈 2] と書かれたプラーク が掲げられている。
地元のコミュニティラジオ局 (英語版 ) はコーストFM (英語版 ) (旧称:ペンウィズ・ラジオ[ 注釈 3] )で、FM 96.5MHz・97.2MHzで放送している[ 13] 。
20世紀
ペンリー・ライフボート・ステーション
マウント湾では長年救難艇 が利用可能だったが、1913年に新しい救難艇波止場として、町外れのペンリー・ポイントにペンリー・ライフボート・ステーション (英語版 ) が完成した。1981年12月19日には、ハリケーン による時化 中救難に向かったクルー8名が命を落とすという、ペンリー救難艇災害 (英語版 ) も発生している[ 14] [ 15] 。救難艇は1983年にニューリンへ移動したが、その後も「ペンリー・ライフボート」の名で知られている[ 16] 。
マウゼルは別荘地 としての需要も増えている。村の海岸沿いにある歴史あるホテル「ロブスター・ポット」(英: The Lobster Pot )は、1930年代に詩人ディラン・トマス の友人だったウィン・ヘンダーソン[ 注釈 4] が経営していたゲストハウス だが、現在では近代的な高級アパートメントに作り替えられている。トマスはケイトリン・マクナマラ (英語版 ) とペンザンスで結婚した後、1938年にこのホテルを訪れハネムーン を過ごした[ 17] 。
マウゼルでは活気に満ちた祭りや地域活動が行われている。クリスマス にはイルミネーション を行うことで有名である。1981年以来、毎年12月19日には救難事故で亡くなった犠牲者を偲んで灯が消される。トム・バウコックの夜 (英語版 ) は毎年12月23日に行われるユニークな祭りで、地元住民のトム・バウコック (英語版 ) が、16世紀に起こった飢餓を終わらせたことに由来する。この祭りはアントニア・バーバー (英語版 ) が書いた本『マウゼルの猫 (英語版 ) 』や、このテレビ映像化作品にインスピレーションを与えた。バーバーの本は、バウコックと彼のネコ が飢饉を救ったという筋書きで、この話から地区にはネコも多い[ 1] [ 18] [ 19] 。祭りは、魚の頭がペイストリーの上に突き出した形の、魚・卵・ポテトを用いた地元のパイ、「スターゲイジー・パイ 」の由来にもなっている。マウゼルでは2年に1度、'Sea, Salt and Sail'(意味:海、塩、帆)と呼ばれる小規模な海祭りも行われる[ 20] 。
1995年の長編映画『ブルー・ジュース 』は、一部がこの村で撮影された。
地元行政
マウゼルは元々ポールのアンシエント・パリッシュ (ancient parish ) の一部で、1866年 にこの教区から独立した。1894年 にはポールのアーバン・ディストリクト の一部になった。このディストリクトは1934年 に廃止され、マウゼルはペンザンスの自治区 (Municipal borough ) に吸収された[ 21] 。ペンザンス自治区は1972年地方自治法 (英語版 ) を元に1974年 に廃止され、マウゼルは新しいペンウィズ (英語版 ) ・ディストリクトに組み込まれたほか、以前のバラは1980年まで教区でカバーされないアンパリッシュド・エリア (英語版 ) となった。アンパリッシュド・エリアには、1980年に行政教区 (英語版 ) が設置され[ 22] 、ペンザンスの教区議会 (英語版 ) は「タウン・カウンシル」と自称するようになった。ペンウィズ・ディストリクトは2009年 に廃止され、マウゼルは単一自治体のコーンウォール・カウンシル (英語版 ) 自治下にある。
著名な住人
ドリー・ペントレス
ペンウィズ (英語版 ) はコーンウォール の中で、コーンウォール語 がコミュニティの言語として使われている最後の地区だと考えられている。ドリー・ペントレス (英語版 ) は記録に残る限り最後の話者で(但し本当に最後の話者だったかは疑わしいとされる)[ 23] 、村にはマウゼルの出身とされる[ 24] 彼女の記念碑が存在する。実際の所、彼女はマウゼルを包括する教区であるポール (英語版 ) の出身だったとされている。
ドリーが1777年 に亡くなってから1年後、デインズ・バリントン (英語版 ) は、コーンウォール語の文章に英訳文が付けられた手紙を受け取った。差出人でマウゼルの漁師 だったウィリアム・ボディナー(英: William Bodinar )は、コーンウォール語を喋れる村人を5人知っていると書いていた。バリントンはまた、マラザイアン (英語版 ) 出身のジョン・ナンカロウ(英: John Nancarrow )もネイティヴ・スピーカーで、1790年代まで生存していたと聞き取っている[ 25] 。
コーンウォール語学者のジョン・キーグウィン (英語版 ) (1641年 - 1716年)、メソジスト のウィリアム・カーヴォッソ (William Carvosso ) (1750年 - 1834年)、海軍兵士のジョゼフ・トリワヴァス (英語版 ) [ 注釈 5] [ 26] もマウゼル出身である。
海軍元帥 を務めたキャスパー・ジョン (英語版 ) (1903年 - 1984年)は、退官後をマウゼルで過ごした。芸術家のジャック・ペンダー (英語版 ) (1918年 - 1998年)はマウゼルで生まれ、キャリアのほとんどをこの村で過ごした。作家・イラストレーターのミシェル・カートリッジ (英語版 ) はマウゼル在住である[ 27] 。
文学
多くの近代的・都市おとぎ話 を書いた作家のチャールズ・デ・リント は、自身の小説『リトル・カントリー』"The Little Country " の舞台をこの村にしている[ 28] 。
アントニア・バーバー (英語版 ) が書き、ニコラ・ベイリー[ 注釈 6] が挿絵を付けた子ども向けの本『マウゼルの猫 (英語版 ) 』は、トム・バウコック (英語版 ) や彼を祝う祭り・トム・バウコックの夜 (英語版 ) を扱った作品である。
脚注
注釈
^ キーグウィン・アームズの歴史や写真に関してはこのサイトで閲覧することができる[ 12] 。
^ 原文:"Squire Jenkyn Keigwin was killed here 23 July 1595 defending this house against the Spaniards". この史実自体は記録に残るものである[ 11] 。
^ 英: Penwith Radio
^ 英: Wyn Henderson
^ Joseph Trewavas VC , CGM (英語版 ) ; 1835年12月14日 - 1905年7月20日)
^ 英: Nicola Bayley
出典
^ a b “世界ふれあい街歩き ちょっとお散歩「コーンウォール」 ”. NHK . 2017年7月28日時点のオリジナル よりアーカイブ。2017年7月28日 閲覧。
^ “Must see fishing villages in Cornwall ”. Travel Daily News . 13 May 2015 閲覧。 [リンク切れ ]
^ Ordnance Survey: Landranger map sheet 203 Land's End ISBN 978-0-319-23148-7
^ a b c “History of Mousehole, in Penwith and Cornwall ”. visionofbritain.org.uk. 2017年7月30日 閲覧。
^ 小野まり (2010年7月15日). “コッツウォルズの魅力の真髄を知る Part1 ”. ロンドン・オリンピック特設サイト ニュースダイジェスト. 2017年7月30日 閲覧。
^ “Cornwall AONB ”. Areas of Outstanding Natural Beauty . landscapesforlife.org.uk. 2017年7月30日 閲覧。
^ “07 West Penwith ”. コーンウォール特別自然美観地域 (英語版 ) . 2017年7月30日 閲覧。
^ “West Penwith Resources – Paul (Lysons) ”. West-penwith.org.uk (18 October 2003). 15 October 2013 閲覧。
^ “Madron - Lake’s Parochial History—1868 (part 3) ”. west-penwith.org.uk. 2017年7月30日 閲覧。
^ Grego, Peter (2013). Cornwall's Strangest Tales: Extraordinary but true stories . Pavilion Books. ISBN 1909396435 . https://books.google.co.jp/books?id=_bK_CAAAQBAJ&pg=PT34&lpg=PT34&dq=Carlos+de+Am%C3%A9squita&source=bl&ots=-4vAep0Cjt&sig=3PwVW-pl9RMJOzRFdyuUVq-L2qo&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwi1iYahzrDVAhUJxbwKHd0QAHg4ChDoAQg0MAI#v=onepage&q=Carlos%20de%20Am%C3%A9squita&f=false 2017年7月30日 閲覧。
^ a b Berry, Eric. “History of Keigwins ”. ロンドン大学 . VCH Explore. 2017年7月30日 閲覧。
^ “Keigwin House, Mousehole ”. VCH Explore. 2017年7月30日 閲覧。
^ “Volunteer run Penwith Radio to change its name to Coast FM” . http://www.falmouthpacket.co.uk/news/14510092.Volunteer_run_Penwith_Radio_to_change_its_name_to_Coast_FM 2017年2月4日 閲覧。
^ “Solomon Browne history” . BBC. (27 September 2010). http://news.bbc.co.uk/local/cornwall/hi/things_to_do/newsid_9036000/9036004.stm 3 December 2010 閲覧。
^ “1981: Lifeboat crew missing after mission ”. BBC ON THIS DAY . BBC . 2017年7月30日 閲覧。
^ Leach, Nicholas (2006) [2000]. Cornwall's Lifeboat Heritage . Chacewater: Twelveheads Press. pp. 41–42. ISBN 0-906294-43-6
^ “City and County of Swansea – The 1930s ”. Dylanthomas.com (2010年10月25日). 2007年9月28日時点のオリジナル よりアーカイブ。2013年10月15日 閲覧。
^ “世界ふれあい街歩きちょっとお散歩 コーンウォール ”. goo . 2017年7月30日 閲覧。
^ “The Mousehole Cat - Dream Team Theatre Company ”. Cornish riviera box office. 2017年7月30日 閲覧。
^ “Home ”. Seasalts.co.uk. 15 October 2013 閲覧。
^ “Vision of Britain website: Paul UD ”. visionofbritain.org.uk. 2017年7月30日 閲覧。
^ “A complete list of orders affecting Cornwall County from 1973 to the present ”. Database of Local Government Orders . Local Government Boundary Commission for England. 7 June 2012 閲覧。
^ “Dolly Pentreath ”. A History of the World . BBC . 2017年7月30日 閲覧。
^ "Pentreath [later Jeffery], Dorothy [Dolly]" . オックスフォード英国人名事典 . オックスフォード大学出版局 . 2017年7月30日閲覧 。
^ Ellis, P. Berresford (ca. 1970) The Story of the Cornish Language . Penryn: Tor Mark Press
^ “A CEREMONY TO UNVEIL A MEMORIAL PLAQUE TO JOSEPH TREWAVAS VC, CGM, RN, TOOK PLACE AT ST POL DE LEON CHURCH, PAUL VILLAGE, CORNWALL. ”. victoriacross.org.uk (2002年6月26日). 2017年7月30日 閲覧。
^ “Michelle Cartlidge ”. Mabecronbooks.co.uk. 15 October 2013 閲覧。
^ “The Little Country ”. Amazon.com. 11 May 2007 閲覧。
外部リンク
英語版ウィクショナリーに関連の辞書項目があります。