ホソバイラクサ
ホソバイラクサ(細葉刺草、学名: Urtica angustifolia var. angustifolia)は、イラクサ科イラクサ属の多年草 。葉は細長く、托葉は4個ある。やや叢生する[2][3][4][5][6][7]。 特徴植物体全体が強靭で多毛、やや淡い淡緑色になる。茎は丈夫で直立し、高さ50-150cmになり、多数の刺毛が生え、刺毛に刺さると痛い。葉は対生し、葉身は披針形または狭卵状長楕円形で、長さ8-15cm、幅4cm以下、先端が細長くとがり、縁は粗い単鋸歯になる。基部の葉柄は長さ1-3cm。葉と葉柄にも刺毛が生え、葉の両面に毛が生える。茎の各節に離生した4個の托葉があり、線形で長さ7-8mmになる[2][3][4][5][6][7]。 花期は8-9月。ふつうは雌雄異株であるが、ときに雌雄同株となる。葉腋から1対の穂状花序を出す。花は小さな緑白色になり、4数性で、雄花の花被片は4個、雄蕊も4個あり、雌花の花被片は4個で小型である[2][3][4][5][6][7]。 植物体は乾燥すると濃緑色または碧緑色に変色する[6]。 分布と生育環境日本では、北海道、本州、四国、九州に分布し[2][5]、山地の林縁の明るい湿った場所[6]、湿地、湿原の周辺などに生育する[4]。世界では、朝鮮半島、中国大陸、シベリア東部、カムチャツカ半島に分布する[3][5][6]。 名前の由来和名ホソバイラクサは、「細葉刺草」の意で、同属のイラクサに比べ、葉が披針形で細長いので「細葉」という[7]。「刺草」は茎葉にある刺毛によって疼痛を感じることによる[6]。 属名 Urtica は、ラテン語の uro で、「燃やす」「ちくちくする」に由来する古典ラテン語であり、この属の種にギ酸を含む刺毛があり、触れるとちくちくと痛むことによる[8]。種小名(種形容語)angustifolia は、「細葉の」「巾の狭い葉の」の意味[9]。 種の保全状況評価国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストでの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、群馬県が絶滅危惧IA類(CR)、埼玉県が情報不足(DD)、千葉県が重要保護生物(B)、福井県が県域絶滅危惧Ⅰ類、京都府が要注目種、大阪府が準絶滅危惧、兵庫県がAランク、岡山県が絶滅危惧II類となっている[10][11][12]。 ギャラリー
下位分類ナガバイラクサホソバイラクサを基本種とする変種にナガバイラクサ(長葉刺草、学名: Urtica angustifolia Fisch. ex Hornem. var. sikokiana (Makino) Ohwi (1953)[13]、シノニム: Urtica sikokiana (Makino) Makino (1910)[14])がある[3][5][6]。 特徴基本種のホソバイラクサと比べ、全体がやせて細く、刺毛が少ない。茎は直立し、高さは60-100cmになり、まばらに刺毛と細毛が生える。葉は対生し、葉身は狭披針形または線状披針形で、長さ5-8cmになり、先端は尾状に鋭くとがり、基部は円形または浅い心形[3][5][6]、縁はややそろった細鋸歯[6](文献によっては、鋭い大鋸歯[3])がある。葉質は薄く、両面に毛が少数散生し、3本の葉脈が縦に走る。花期は7-8月。雌雄同株。葉腋から穂状花序をだし、上方には雄花序、下方には雌花序がでる。植物体は乾燥すると暗色に変色する[3][5][6]。 分布と生育環境日本では、本州の中部地方以西の太平洋側、四国、九州に分布し[5][7]、深山の林内や[3]渓流沿いの林内の湿った場所に生育する[6]。世界では、朝鮮半島南部に分布する[3][5][6]。基本種よりは稀な種である[7]。 名前の由来和名ナガバイラクサは、「長葉刺草」の意で、イラクサの類で葉が細長いのでいう[6]。和名 Nagaba-irakusa は、牧野富太郎 (1909) による命名である。牧野は1910年に、シノニム記載のとおり、Urtica sikokiana (Makino) Makino (1910) として独立種として記載したが、前年に同種を Urtica dioica L. var. sikokiana Makino (1909) として記載した際、和名を Nagaba-irakusa とした[15]。 変種名 shikokiana は、「四国産の」の意味[16]。 種の保全状況評価国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストでの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、奈良県が絶滅危惧種、和歌山県が絶滅(EX)となっている[17]。 分類イラクサ科のうち、植物体に触ると痛い刺毛があるものに、ムカゴイラクサ属 Laportea Gaudich. と本種が属するイラクサ属 Urtica L. があり、ムカゴイラクサ属は葉が互生し、イラクサ属は葉が対生する[18]。イラクサ属に属する日本に分布する種は、本種のほか、イラクサ Urtica thunbergiana Siebold et Zucc.[19]、エゾイラクサ U. platyphylla Wedd.[20]、コバノイラクサ U. laetevirens Maxim.[21]がある[5]。 本種とコバノイラクサは、托葉が各節に4個あり、本種の葉は和名のとおり幅が細く、先は細長くとがり、コバノイラクサの葉は卵形から広卵形で小型で先は長くとがらず、鋸歯は単鋸歯となる。コバノイラクサは北海道、本州の近畿地方以北、朝鮮半島、中国大陸に分布する。イラクサとエゾイラクサは、托葉が各節に2個あり、イラクサの葉は卵形で、鋸歯は欠刻状の重鋸歯になるのに対し、エゾイラクサの葉は狭卵形から卵状長楕円形になり、鋸歯は単鋸歯になる。イラクサは本州の福島県以南、四国、九州、朝鮮半島、台湾に分布し、エゾイラクサは、南千島、北海道、本州の中部地方以北、千島列島、サハリン、シベリア東部、カムチャツカ半島に分布する[5]。 利用『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』(2007年、柏書房)の著者の橋本郁三は、同著のなかで、本種について、他の文献(佐藤孝夫著、『北海道山菜図鑑』、1995年)の記述を紹介し、同属のコバノイラクサとともに山菜として「食べられる,と記述されている。」としている[22]。 脚注
参考文献
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