フックつき文字(フックつきもじ、英: letters with hook)とは、ハウサ語など、主にアフリカの言語で用いられる、フックのついた文字である。フック部分は文字とつなげて書かれ、独立したダイアクリティカルマーク(発音区別符号)として存在するわけではない。
国際音標文字に似ているが、大文字と小文字を区別する。
よく似た記号
ベトナム語の声調記号については、フック符号を参照。
ベトナム語の非円唇奥舌母音の文字 ơ, ư についている記号については、ホーン符号を参照。
ɖ の大文字にあたる Ɖ (U+0189) は、アイスランド語などで使う Ð (U+00D0, 小文字は ð) や、セルビア・クロアチア語などで使う Đ (U+0110, 小文字は đ) と見かけ上区別がつかない。
各言語での用法
ラテン・アルファベット
国際音標文字と発音が同じものは説明を省略する。
- ハウサ語
- ɓ, ƙ, ɗ, ƴ が用いられる。ƙ は放出音 /k'/ を表す。ƴ は口蓋化した声門閉鎖音 /ʔʲ/ を表す。
- フラニ語
- ɓ, ɗ, ŋ, ɲ, ƴ が用いられる。
- エウェ語
- ɖ, ƒ, ŋ, ʋ が用いられる。ƒ, ʋ はそれぞれ /ɸ/, /β/ を表す。
キリル・アルファベット
- アブハズ語
- ҕ, ҽ, ҿ を使用する。それぞれ /ɣ/, /tʂ/, /tʂ'/ を表す。かつてはほかに ҧ を /pʰ/ を表す文字として使用していたが、現在は ԥ にかわっている。
- ハンティ語
- ӄ, ӈ を使用する。それぞれ /q/, /ŋ/ を表す。
音声記号
国際音標文字では、フックを使った字をいろいろな用途に用いる。
- 入破音を表すのに /ɓ/, /ɗ/, /ᶑ/, /ʄ/, /ɠ/, /ʛ/ が用いられる。
- かつて無声入破音のための記号 /ƥ/, /ƭ/, /ƈ/, /ƙ/, /ʠ/ があったが、1993年の改訂で廃止された。
- そり舌音を表すのに右向きのフックを用いる。/ʈ/, /ɖ/, /ʂ/, /ʐ/, /ɳ/, /ɭ/, /ɽ/, /ɻ/ など。
- rの音色を持つ母音を表すのにフックを用いる。/ɚ/, /ɝ/。
- その他。/ɦ/, /ɱ/, /ŋ/, /ɲ/ など。
符号位置
小文字が音声記号として使われているものが多いため、大文字と小文字の符号位置が大きく異なるものがあることに注意。
大文字 |
Unicode |
JIS X 0213 |
文字参照 |
小文字 |
Unicode |
JIS X 0213 |
文字参照 |
備考
|
Ɓ
|
U+0181
|
|
Ɓ
Ɓ
|
ɓ
|
U+0253
|
1-11-5
|
ɓ
ɓ
|
ハウサ語、フラニ語
|
Ƈ
|
U+0187
|
|
Ƈ
Ƈ
|
ƈ
|
U+0188
|
|
ƈ
ƈ
|
|
Ɖ
|
U+0189
|
|
Ɖ
Ɖ
|
ɖ
|
U+0256
|
1-10-78
|
ɖ
ɖ
|
エウェ語
|
Ɗ
|
U+018A
|
|
Ɗ
Ɗ
|
ɗ
|
U+0257
|
1-11-6
|
ɗ
ɗ
|
ハウサ語、フラニ語
|
Ƒ
|
U+0191
|
|
Ƒ
Ƒ
|
ƒ
|
U+0192
|
|
ƒ
ƒ
|
エウェ語
|
Ɠ
|
U+0193
|
1-11-9
|
Ɠ
Ɠ
|
ɠ
|
U+0260
|
1-11-7
|
ɠ
ɠ
|
|
Ƙ
|
U+0198
|
|
Ƙ
Ƙ
|
ƙ
|
U+0199
|
|
ƙ
ƙ
|
ハウサ語
|
Ŋ
|
U+014A
|
|
Ŋ
Ŋ
|
ŋ
|
U+014B
|
1-10-90
|
ŋ
ŋ
|
エウェ語、フラニ語
|
Ɲ
|
U+019D
|
|
Ɲ
Ɲ
|
ɲ
|
U+0272
|
1-10-86
|
ɲ
ɲ
|
フラニ語
|
Ƥ
|
U+01A4
|
|
Ƥ
Ƥ
|
ƥ
|
U+01A5
|
|
ƥ
ƥ
|
|
Ɽ
|
U+2C64
|
|
Ɽ
Ɽ
|
ɽ
|
U+027D
|
|
ɽ
ɽ
|
|
Ƭ
|
U+01AC
|
|
Ƭ
Ƭ
|
ƭ
|
U+01AD
|
|
ƭ
ƭ
|
|
Ʈ
|
U+01AE
|
|
Ʈ
Ʈ
|
ʈ
|
U+0288
|
1-10-77
|
ʈ
ʈ
|
|
Ʋ
|
U+01B2
|
|
Ʋ
Ʋ
|
ʋ
|
U+028B
|
1-10-70
|
ʋ
ʋ
|
エウェ語
|
Ƴ
|
U+01B3
|
|
Ƴ
Ƴ
|
ƴ
|
U+01B4
|
|
ƴ
ƴ
|
ハウサ語、フラニ語
|