バーンズ (英語 : Burns )はアメリカ合衆国 オレゴン州 ハーニー郡 にある都市であり、同郡の郡庁所在地 。
2010年 国勢調査 によると、人口は2,806人であった。ハーニー郡の面積は州最大で全米でも9位であり、隣のハインズ とバーンズに郡の人口の6割が生活している。
バーンズやハインズ周辺には高地砂漠が広がっているが、大昔は水が豊かな土地であったことが地質学調査で明らかになっている。258万年前から1万年前にあたる更新世 には、この土地に数多くの湖が形成されており、ハーニー盆地 はその時代にこの地域に形成された窪地の中で最大のものである。その北端がバーンズにまで達する古代湖跡は、マルヒュア国立野生動物保護区 の中心に位置している。
ここには数千年前から北部パイユート族 が狩猟採集を営んでいた。19世紀にヨーロッパ系移民が到着し、牧畜や他の農業が土地利用をしめるようになった。1930年 、バーンズの北にある山々での林業のために材木の企業城下町 が形成され、それが現在のハインズとなった。また、林業は1990年代まで地元の重要産業であった。21世紀に入ると、林業や牧畜に加えてその他の公的機関が立地するようになった。地元では、渡り鳥祭り、カントリーミュージック祭りなどが毎年開催されている。
歴史
人類学者たちはバーンズ周辺で1万年前に人類が生活していたことを示す証拠をいくつか発見している。現在ハーニー郡に居住しているバーンズ・パイユート族 はパイユート族のワダティカ・バンドに由来する部族で、かつてはオレゴン中部・南部で狩猟採集生活を営んでいた。「ワダティカ」という名前はマルヒュア湖から採れる「ワダのたね」に由来する。彼らの領域は東西ではカスケード山脈 からボイシ まで、南北ではブルーマウンテンからスティーンズ山脈に至る14,000平方キロメートル程度であった。しかしその後19世紀に入ると白人入植者との対立によって分散、そのうちの一部がハーニー郡へとたどり着いた[ 8] 。
1930年代、バーンズ・パイユート族はバーンズ近郊の土地を買い取り、部族内選挙を実施するようになった。1960年代後期には独自の憲法と法制度を整備、そして1972年 、バーンズ・パイユート族は正式に独立した部族として他の政府組織と交渉できるようになった。彼らはバーンズ北方に310ヘクタールの居留地 と、個人資産として4,500ヘクタールの土地を所有している。1991年 において部族の人口は約350人、そのうち200人が居留地で生活している[ 9] 。
市街地と牧草地
マルール国有林 から切り出されるマツ科の丸太
バーンズが設立されたのは1880年代である。その後、1889年 にグラント郡 の分割によってハーニー郡 が創設された際、バーンズも自治体として認められた。初期の入植者、商人、郡長官のジョージ・マクゴワンが話し合い、スコットランドの詩人ロバート・バーンズ から町名がつけられた。1891年 時点でバーンズには商店、郵便局、ホテルなどが立地していた。マクゴワンは初代郵便局長も務めた[ 10] 。
1920年代には林業と鉱業が発展、多くの人々が入植した。1928年 には、エドワード・ハインズ材木会社 がグラント郡 セネカ におけるブルーマウンテンでの伐採権を林野庁から取得[ 11] 、同社はその後バーンズ-セネカ間84キロメートルにオレゴン・ノースウェスタン鉄道 を敷設した。さらに同社社長のエドワード・ハインズは同社の製材所がある企業城下町 を形成、1930年 にハインズ を設立した[ 12] 。その後も林業は長年に渡り地元地域の重要産業であり続けたが、1990年代に木材資源の減少に伴い最後の製材所が閉鎖された[ 10] 。
牧畜も1860年代から始まっており、1877年 の砂漠法 制定によって大幅に拡大した[ 10] 。この法律では米国西部の乾燥状態、半乾燥状態の公有地の開発を推奨するため、個人が最大640エーカー(260ヘクタール)の土地を開墾 、灌漑 し耕せば取得できることを認めた[ 13] 。これによって19世紀にハーニー郡では複数の牧場が設立され、そのうちいくつかは21世紀においても存続している[ 10] 。2011年 における同郡の農業総利益は8,400万ドルで、そのうち65%が家畜の販売、29%が牧草としてのアルファルファ の販売、残りは馬とその他穀物の販売によるものである。
地理
バーンズの属するハーニー郡は州最大の面積を有し、その大きさは全米の郡の中でも9位に位置する。郡の面積は1万平方マイル (26,000km²)を越すが、人口は約7,600人しかいない。そのほとんどはバーンズとそこから3kmほど離れた隣町ハインズに住んでいる。2010年におけるバーンズの人口は2,800人、ハインズは1,600人、合計すると4,400人で、これは郡の総人口の6割近くを占める。
バーンズの東側を流れるシルビー川
バーンズはデシューツ郡 ベンド とマルヒュア郡 オンタリオ とのちょうど中間に位置し、町の中でアメリカ国道 20号線と395号線が交差している。また、オレゴン州道 78号線もバーンズを通っている。州道205号線も近く、マルヒュア野生動物保護区とバーンズを結んでいる。
アメリカ合衆国国勢調査局 によると、町の面積は9.19km²で全て陸域である[ 17] 。
地質学的特徴
バーンズはオレゴン州南東部、ハーニー盆地 の中心に位置する。この盆地は500万年~1,000万年前の中新世 に発生した噴火によって形成された溶岩高地ハイ・ラバ・プレーンズ の一部である。北にはハイ・ラバ・プレーンズとブルーマウンテンが広がり、南にはベイスン・アンド・レンジ が広がっている。
ベイスン・アンド・レンジには更新世 の11,000年前までに形成された浅い窪地が多数あるが、それらにはかつて水が貯まっていたと考えられている。そのうち最大の盆地はハーニー盆地であり、その面積は14,000平方キロメートルに達する。盆地内にはマルヒュア湖 、ハーニー湖 が含まれており、その面積は2,300平方キロメートルである。これらの湿地はマルヒュア国立野生動物保護区 に指定されている。
気候
バーンズはケッペンの気候区分 によると、ステップ気候 (BSk)と湿潤大陸性気候 (Dsb)の境目に位置する。平均年間降水日数は99日、その約4分の1が7月、4分の3が1月に降る。平均年間降水量は279ミリで、84センチの積雪を伴う。平均湿度は42%で、7月には21%まで低下するが12月、1月には68%まで上昇する。月平均気温は12月で摂氏-4度、7月で摂氏19度となる。年間で気温が華氏 90度(摂氏32度)を越す日は24日、摂氏0度を下回る日は31日、華氏0度(摂氏-18度)を下回る日は11日ある。
1950年 1月にアメリカ国立気象局 が観測した吹雪 は20世紀にオレゴン州で発生した気象災害トップ10に含まれるものであった[ 22] 。これにより、バーンズでは降雪量81センチが記録された。最低気温記録は1939年 12月8日 の摂氏-34度、最高気温記録は2002年 7月12日 の摂氏42度である[ 22] 。
Burns, Oregon (1981–2010 normals,[ 23] extremes 1939–present)の気候
月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年
最高気温記録 °F (°C )
58 (14)
67 (19)
76 (24)
86 (30)
94 (34)
102 (39)
107 (42)
103 (39)
100 (38)
91 (33)
71 (22)
61 (16)
107 (42)
平均最高気温 °F (°C )
34.8 (1.6)
39.3 (4.1)
49.3 (9.6)
57.1 (13.9)
66.1 (18.9)
75.0 (23.9)
85.9 (29.9)
84.8 (29.3)
75.5 (24.2)
61.8 (16.6)
45.1 (7.3)
34.3 (1.3)
59.2 (15.1)
平均最低気温 °F (°C )
14.8 (−9.6)
18.2 (−7.7)
25.4 (−3.7)
29.2 (−1.6)
36.4 (2.4)
41.8 (5.4)
47.4 (8.6)
44.9 (7.2)
36.3 (2.4)
27.5 (−2.5)
21.5 (−5.8)
14.0 (−10)
29.8 (−1.2)
最低気温記録 °F (°C )
−27 (−33)
−28 (−33)
−14 (−26)
10 (−12)
13 (−11)
21 (−6)
25 (−4)
22 (−6)
17 (−8)
−7 (−22)
−17 (−27)
−30 (−34)
−30 (−34)
降水量 inch (mm)
1.19 (30.2)
1.02 (25.9)
1.09 (27.7)
0.93 (23.6)
1.23 (31.2)
0.76 (19.3)
0.40 (10.2)
0.36 (9.1)
0.44 (11.2)
0.78 (19.8)
1.17 (29.7)
1.55 (39.4)
10.92 (277.4)
降雪量 inch (cm)
5.6 (14.2)
6.7 (17)
3.8 (9.7)
0.7 (1.8)
0.2 (0.5)
0 (0)
0 (0)
0 (0)
0 (0)
0.4 (1)
6.0 (15.2)
10.6 (26.9)
34.0 (86.4)
平均降水日数 (≥0.01 in)
10.5
9.8
11.0
9.3
9.1
5.8
2.9
3.2
3.5
6.0
11.1
11.4
93.6
平均降雪日数 (≥0.1 in)
6.0
5.6
4.3
1.4
0.4
0
0
0
0
0.8
5.3
7.3
31.1
出典:NOAA[ 24] [ 25]
人口動静
人口推移
年
人口
%±
1890 264 —
1900 547 107.2% 1910 904 65.3% 1920 1,022 13.1% 1930 2,599 154.3% 1940 2,566 −1.3% 1950 3,093 20.5% 1960 3,523 13.9% 1970 3,293 −6.5% 1980 3,579 8.7% 1990 2,913 −18.6% 2000 3,064 5.2% 2010 2,806 −8.4% 2018(推計) 2,783 [ 4] −0.8% source:[ 3]
以下は2010年 国勢調査 に基づく[ 3] 。
基礎データ
人口:2,806人
世帯数:1,280世帯
家族数:720家族
人口密度 :305.2人/km²
住居数:1,490軒
住居密度:162.0軒/km²
人種別人口構成
世帯と家族
18歳未満の子供がいる: 24.4%
結婚・同居している世帯: 40.6%
未婚・離婚女性が世帯主である世帯: 11.5%
未婚・離婚男性が世帯主である世帯: 4.1%
非家族世帯: 43.8%
単身世帯: 36.9%
65歳以上の老人1人暮らし: 13.9%
平均構成人数
年齢別人口構成
18歳未満:21.5%
18歳-24歳:8.7%
25歳-44歳:20.3%
45歳-64歳:30.7%
65歳以上:18.9%
年齢の中央値:44.5歳
男女比
収入と家計
収入の中央値
世帯: 32,877米ドル
家族: 42,885米ドル
人口1人あたり収入: 19,567米ドル
貧困線 以下
芸術と文化
1915年頃のセイジブラッシュ交響楽団
ハーニー郡芸術教育財団 (HCAEF)が地元の音楽教育、舞台芸術支援のために活動している。財団は600席の劇場 、美術館、映画スタジオなどの施設を設立するために資金集めをしている。セイジブラッシュ交響楽団として発足したポートランド・ユース・フィルハーモニーも財団からの支援を受けている。
この地には250種類の渡り鳥 が多く訪れるため、毎年4月にはジョン・スカーフ渡り鳥フェスティバル&アートショー というイベントが開催される。ジョン・スカーフはマルヒュア国立野生動物保護区の前長官であり、このイベントの際には湿地の体験ツアーや野鳥観察なども実施される。
バーンズにあったウェルカムホテル、1930年撮影。こののち1939年に焼失した。
また、6月には地元楽団のハイデザート・フィドラーズがカントリーミュージック・ジャンボリー を開催する。
ハーニー・カウンティ・フェア は毎年9月に開催されるイベント。1週間に渡ってロデオ やカーニバル、競馬、パレードなどが開催される。4Hクラブ などが資金を提供している。
ハーニー郡歴史博物館 は1960年 に設立された博物館で、地元の写真や文書などを収集、展示している。
政治
ハーニー郡庁舎
バーンズは市長-市会政を採用し、首長と議会を共に選挙で選んでいる。市会議員のジェリー・ウッドフィン が現在の市長である[ 1] 。正職員4名と局長1名で構成される公共事業局が上下水道と街路の維持管理を行う。警察署には署長、事務員、3名の警察官が勤務し、ハインズとバーンズを管轄している。市職員にはシティ・マネジャー、事務員、市裁判所裁判官なども含まれている。
バーンズ・パイユート族居住区事務所はバーンズの北西に位置する。彼らは独自の警察、裁判所、医療施設などを保有し、コミュニティセンターに包括している。
ハーニー郡庁もバーンズに位置する。郡庁では裁判官2名、上級職員2名、事務員、財政職員、地区弁護士、仲裁官、郡保安官、巡回裁判所 裁判官が勤務している。
2012年大統領選挙 では、ハーニー郡の有権者は73%が共和党 候補のミット・ロムニー に投票、23%が民主党 候補のバラク・オバマ に投票した。連邦議会第2選挙区では、共和党候補のグレッグ・ウォルデンが83%を獲得した。また、2016年大統領選挙 では、ドナルド・トランプ が73%、ヒラリー・クリントン が17%を獲得した[ 34] 。
教育
ハーニー第3公立学区 がバーンズとハインズで教育を管轄し、ヘンリー・L・スレーター小学校、ハインズ中学校、バーンズ高等学校が運営されている[ 35] 。また、シルヴィー・リバー・チャーター・スクール の運営も行っており、就学前教育から小学2年生までのホームスクール プログラムと、より上級の生徒に対するオンラインカリキュラムを提供している。
ハーニー郡図書館 は1903年 に12冊で創設されたレディーズ・アフタヌーン・クラブを前身とし、2013年 現在では蔵書数3万冊にまで成長した。また、図書館では本、雑誌、新聞、オーディオブック、ビデオ、DVDなどの資料と図書館間相互貸借 へのアクセスに加え、コンピューターやインターネット、視聴覚室、会議室、公共プログラムも提供している。
メディア
週刊紙バーンズ・タイムズ・ヘラルド が町唯一の新聞である[ 38] 。
2006年 、タイムズ・ヘラルド社の職員5名がサバイバル・メディアLLC を設立、州外のオーナーから経営権を買収した。サバイバル・メディア社によると、これがオレゴン州内で職員による新聞買収の初めての事例である。KSQB(92.7 FM)、KYQT(1230 AM)の2つの商業ラジオ局がバーンズで放送している[ 39] 。
インフラ
交通
バーンズ市営空港 がゼネラル・アビエーション サービスを提供している[ 40] 。この空港は町の東10kmの位置にあり、1,600mの滑走路が1本設置されている。また、ポニー・エキスプレス社が旅客サービスを提供している。
オレゴン公営高速バス (POINT)が高速バス をベンド 、オンタリオ 間で運行している[ 41] 。このバスはバリアフリー仕様となっており、定員は20名、貨物輸送にも利用することができる。
医療
ハーニー地区病院
ハーニー地区病院 が病床20床を設置し、総合医療、外科治療を提供している[ 43] 。家族ケアセンター、薬草治療センターも併設されている。アメリカ合衆国退役軍人省 も診療所を設置しており、主に退役軍人に対して医療サービスを提供している。また、エアリンク・クリティカルケア・トランスポート、ライフ・フライト・ネットワークによって航空救急 が提供されている。
著名な住人
脚注
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^ “2018 U.S. Gazetteer Files ”. アメリカ合衆国国勢調査局. Feb 12, 2020 閲覧。
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参考文献
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外部リンク