バルトリハリ(梵: Bhartṛhari, भर्तृहरि)は、インドの詩人、文法学者。5世紀ごろの人物とされており、サンスクリット語の著作が伝承されているが、詩と文法学はそれぞれ別人の業績とする説もある。バルトリハリの人物像については数多くの伝説が残されている。
7世紀のインドに渡りナーランダ僧院に学んだ唐僧義浄の『南海寄帰内法伝(なんかい ききないほうでん)』[2]に、文法学者バルトリハリについての記述がある。
義浄によれば、バルトリハリは文法学者パーニニについてのパタンジャリの注釈書『マハーバーシュヤ』[3]を研究したとされ、言語哲学書『ヴァーキヤ・パディーヤ (Vākya-padīya) 文章単語論(三章篇)』[4]を書いたとされる。そこで彼は、宇宙の根本原理は言語ブラフマンであり,諸現象はその仮現であるとしている[5]。彼の主張は「言葉はブラフマンである」という宣言だと言えよう[6]。
また、詩人としてのバルトリハリの作品は、10世紀から14世紀にかけて3種の『シャタカ (Shataka) (百頌の詩集)』としてまとめられた。天国へ至る道についての『離欲百頌』、世俗の交際についての『処世百頌』、恋愛についての『恋愛百頌』の三つがあり『シャタカ トラヤ (Śatakatraya) (三百頌)』[7]と呼ばれる。17世紀にはアブラハム・ローゲル(英語版)がオランダ語に翻訳、ヨーロッパにも伝わった。
著作(主な日本語研究)
出典・脚注
- ^ 訳本『現代語訳 南海寄帰内法伝 七世紀インド仏教僧伽の日常生活』 宮林昭彦・加藤栄司訳、法蔵館 2004年/法蔵館文庫、2022年。ISBN 978-4831826435
- ^ 村上真完 2018年7月20日「パタンジャリ」『日本大百科全書(ニッポニカ)』。https://kotobank.jp/word/%E3%83%91%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%AA。コトバンクより2023年5月18日閲覧。
- ^ 翻訳収録:『古典インドの言語哲学』
- ^ 清島秀樹『仏教・インド思想辞典』文法学派。春秋社、1987年4月10日、400頁。ISBN 978-4393101025。
- ^ 赤松明彦『インド哲学10講』岩波書店〈岩波新書〉、2018年3月20日、191頁。ISBN 978-4004317098。
- ^ 翻訳収録:『夢幻の愛』
参考文献
関連項目
外部リンク