ティモシー・デイヴィッド・ミンチン (英 : Timothy David Minchin AM 、1975年 10月7日 –)は、イギリス 出身のオーストラリア のコメディアン 、俳優 、音楽家 である。ミュージカル・コメディで知られるほか、俳優としてドラマや舞台等にも出演するなど、多方面で活躍している。2020年 に「舞台芸術と地域社会への多大な貢献」によりオーストラリア勲章 (英語版 ) を授与された。
生い立ち
ティモシー・デイヴィッド・ミンチンは1975年 10月7日 にイギリスのノーサンプトン でオーストラリア人の両親のもとに生まれた[ 1] 。父と祖父はともにオーストラリア・パース の外科医だった。また、アデレード動物園 (英語版 ) を創設したリチャード・エルネスト・ミンチン (英語版 ) は先祖である。ミンチンは両親とともにオーストラリアに戻り、兄と2人の妹とともにパースで育った[ 1] [ 2] [ 3] 。1981年イギリス国籍法 により、1983年 以前にイギリスで生まれたものは出生地主義 に基づいて自動的に市民権が与えられたため、イギリスとオーストラリア両方の市民権を持つ。
ミンチンは8歳からピアノ を習い始めたが、その後3年で断念した。しかし、ギタリスト だった兄ダンと作曲を初めてから再びピアノに興味を持つようになった。パースのクライストチャーチ・グラマースクール (英語版 ) を経て、1996年 に西オーストラリア大学 (UWA)で英語と演劇の学士号を、1998年 に西オーストラリア舞台芸術アカデミー (WAAPA)で現代音楽 のディプロマを取得した。
来歴
ミュージカル・コメディ
舞台上でピアノを弾くティム・ミンチン
演劇の経験を活かし、舞台上では裸足になり、濃いアイメイクを施した独特な風貌と人柄で登場する。アイメイクについて本人は、ピアノ を弾く間は腕を使うことができず、表現やジェスチャーを表情に頼る必要があるため重要だと語っている。アイラインを引くことでより彼の表現を識別しやすくするという。
彼の舞台の社会風刺 からセクシュアリティ 、彼自身が持っていたロックスターへの野望までをも題材とした、喜劇的な歌と詩で構成される。歌の間にはスタンダップコメディ を披露する。曲の中には宗教 を題材にしているものもあるが、彼自身は無神論者 である。彼は、宗教は世界で最も強力で影響力のある勢力の1つなのだから、風刺から逃れるべきではないと主張しており、演奏する中で気に入っている曲として宗教的対立に対する感情を歌った『パレスチナのための平和の讃歌(英 : Peace Anthem for Palestine )』を挙げている[ 4] 。彼のコメディーはタブー も広く取り扱っており、言葉が持つ力をパロディ化した『偏見(英 : Prejudice )』という歌などがある。
初期
ティム・ミンチン(2007年4月)
WAAPAを卒業した後、ミンチンはドキュメンタリーや演劇のための作曲を始めた。2000年 にはパースでミュージカル作品『Pop』の脚本と主演を務めた。2001年 に自身のバンド「Timmy the Dog」と『Sit』というタイトルのCDをリリースしたがほとんど成功しなかった。俳優の仕事を一度受けたあと、2002年 には仕事を求めてメルボルン に移住したが、1年間エージェントを見つけることができず、俳優の仕事も見つけることが出来なかった。いくつかのレコード会社は肯定的なフィードバックを返したが、風刺的な曲とシリアスなポップソング が混在する彼の作風をレコード会社はどのように売り込めば良いのか分からなかった。彼はよりシリアスな音楽に曲風を戻す前に、ユーモラスな曲を1つのライブショーにまとめて胸の内から吐き出すことにした。
ミンチンはそれまでライブコメディに参加したことすらなかった[ 5] が、彼の公演『Darkside』が2005年のメルボルン国際コメディフェスティバル (英語版 ) で大成功を収め、ギルデッド・バルーン (英語版 ) のマネージャーの目に留まった。その後、エディンバラ・フェスティバル・フリンジ でペリエ・コメディ賞 (英語版 ) の最優秀新人賞を受賞した[ 3] [ 6] 。
2006年 の公演『So Rock』はメルボルン国際コメディフェスティバルの最高賞にノミネートされ、2007年 にはUSコメディ・アーツ・フェスティバル (英語版 ) でも最優秀オルタナティブコメディアン賞を受賞した[ 7] 。『Darkside』と『So Rock』はCDとしても発売されている。2007年 にはシドニー・オペラ・ハウス のスタジオで行われたライブ録音の様子を収録した『So Live』と題したDVDをオーストラリアでリリースし、イギリスでも『So F**king Rock Live』と題して2008年 にもリリースしている。2008年8月、ミンチンはエディンバラ・フェスティバル・フリンジで3度目の公演『Ready for This?』を行った。 ロンドン のクイーン・エリザベス・ホール (英語版 ) でのライブ録音が2009年7月20日にiTunes で公開され、翌年にかけてオーストラリアとイギリスでDVDが発売された。2009年にはミンチンの作品『Storm』が短編アニメ映画化されることが発表され、映画本編は2011年にYouTube で公開された[ 8] 。
2010年代以降
2010年12月8日より、『ティム・ミンチンとヘリテージ・オーケストラ』と銘打った新しいアリーナ・ツアーを始めた。これまでの公演の構成とは一線を画すもので、ヘリテージ・オーケストラ (英語版 ) と共演した。この公演はロンドンのロイヤル・アルバート・ホール で撮影され、ブルーレイとDVDが2011年に発売された[ 9] 。
2019年 には新たなミュージカル・コメディの公演ツアー『Back』を発表し、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスを回った[ 10] 。この公演は2020年にアンコール・ツアーがオーストラリアで始まったが、新型コロナウイルス感染症の流行 により2021年 に延期された[ 11] 。
2020年3月、ミンチンはBMG とレコード契約を結び、アルバム『Apart Together』を同年11月にリリースすることを発表した[ 12] 。
舞台
ミンチンは演劇の出身であり、ミュージカル劇場時代には『ラ・マンチャの男 』のドン・キホーテ役、『ジーザス・クライスト・スーパースター 』のピラト 役など、様々な舞台作品に出演している。2006年にパースのパース・シアター・カンパニー (英語版 ) で上演された『アマデウス 』では表題役 を演じた。2012年、『ジーザス・クライスト・スーパースター』のアリーナ・ツアーでユダ 役に抜擢された[ 13] 。2013年、オーストラリアの名門劇団として高名なシドニー・シアター・カンパニー (英語版 ) で上演された戯曲『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ 』に出演した。
作曲家・作詞家として
2008年、ミンチンはロアルド・ダール による児童文学 『マチルダは小さな大天才 』をデニス・ケリー (英語版 ) が脚本したミュージカル『マチルダ 』の音楽の作詞作曲を担当した。演出家のマシュー・ウォーチャス (英語版 ) がミンチンの公演『Ready for This?』のツアーを見たことがきっかけとなった。『マチルダ』の初演はストラトフォード=アポン=エイヴォン のコートヤード・シアター (英語版 ) で、2010年11月9日から2011年1月30日まで上演された。2011年10月25日からケンブリッジ・シアター でウェストエンド 公演が始まった。ミュージカルは大成功を収め、ローレンス・オリヴィエ賞 で新作ミュージカル作品賞を含む史上最多の7部門で受賞した[ 14] [ 15] 。2013年には米国のブロードウェイ 公演が始まり、シューベルト・シアター (英語版 ) で上演された[ 16] 。米国ではトニー賞 で13部門にノミネートされ、そのうち5部門を受賞した[ 15] 。
2015年 、ミンチンは『マチルダ』の製作チームと再び手を組み、1993年 の同名の映画 を原作としたミュージカル『恋はデジャ・ブ (ミュージカル) (英語版 ) 』の音楽をダニー・ルービン (英語版 ) と共に手掛けた。このミュージカルは2016年にオールド・ヴィック・シアター で初演され、後にブロードウェイのオーガスト・ウィルソン・シアター (英語版 ) で上演された。
映画
2008年のオーストラリア映画『Two Fists, One Heart(原題)』に出演した。また、映画の劇中歌を担当した。2013年からオーストラリアを舞台にしたミュージカル・アニメーション映画『Larrikins』の製作に取り組むため、家族とともにロサンゼルス に移住した。この作品はミンチンとクリス・ミラー (英語版 ) が共同監督を務め、ヒュー・ジャックマン をはじめとしたオーストラリアの声優らが出演する予定だったが、製作元のドリームワークス・アニメーション がコムキャスト に買収された関係で、2017年にプロジェクトが中止となった[ 17] 。ミンチンはこの決定について「耐え難い」と述べた[ 17] 。
ミンチンは2018年のアメリカ映画『フッド: ザ・ビギニング 』にタック修道士 (英語版 ) 役で出演した[ 18] 。
2021年、ミンチンが手掛けたミュージカル『マチルダ』の長編映画化が発表され、ミンチンはこれに合わせて追加の音楽と曲を書いた。映画はデニス・ケリー (英語版 ) が脚本、マシュー・ウォーチャスが監督を務めた[ 19] 。映画『マチルダ・ザ・ミュージカル 』はイギリスとアイルランドで2022年11月25日に公開され、その他の地域では1か月遅れてNetflix で公開された。
私生活
ミンチンは17才のときに出会ったサラと2001年 に結婚し、娘と息子を持つ[ 1] 。
2013年 に作曲家、作詞家、俳優、脚本家、コメディアンとしての卓越した業績と評価が認められ、西オーストラリア大学から芸術への貢献に対して名誉文学博士 号を、2015年 にはマウントビュー舞台芸術アカデミー (英語版 ) からも名誉文学博士号を授与された。2020年 には「舞台芸術と地域社会への多大な貢献」によりオーストラリア勲章 (英語版 ) を授与された[ 20] 。
ディスコグラフィ
アルバム
スタジオアルバム
Sit (2001)
Apart Together (2020)
ライブアルバム
Darkside (2005)
So Rock (2006)
Ready for This? (2009)
Live at the O2 (2010)
Tim Minchin and the Heritage Orchestra (2011)
So Fucking Rock (2013)
Apart Together (live at Trackdown Studio) (2023)
シングル
コンピレーション・アルバム
Laugh-a-poolooza (2005)
“So Long (As We Are Together)” Californication Season 6 Soundtrack (2013)
“Carry You (with Missy Higgins)” Music from the Home Front (2020)
DVD
So Live (2007)
So F**king Rock Live (2008)
Ready for This? (2009, 2010, 2011)
Tim Minchin and the Heritage Orchestra (2011)
Back – Live (2022)
出演作品
映画
テレビ
舞台
著作
年
題名
備考
出典
2014
Storm
2011年の同名の短編映画を原作とする
[ 43] [ 44]
2017
When I Grow Up
2011年に発表された同名の楽曲を原作とする
[ 45]
2022
Sometimes You Have to be a Little Bit Naughty
2011年のミュージカル『マチルダ』の楽曲を原作とする
[ 45]
受賞とノミネート
APRAアワード
この節の
加筆 が望まれています。
(2024年2月 )
ARIAミュージックアワード
この節の
加筆 が望まれています。
(2024年2月 )
Environmental Music Prize
この節の
加筆 が望まれています。
(2024年2月 )
演劇賞
2005年
2007年 – USコメディ・アーツ・フェスティバル (英語版 ) 最優秀オルタナティブコメディアン賞
2009年
『Ready For This?』、ヘルプマン賞 (英語版 ) Best Comedy Performer
『Cabaret』
2010年 – Chortle Awards, Best Music or Variety Act
2011年 – 『Tim Minchin vs Sydney Symphony』、ヘルプマン賞 (英語版 ) Best New Australian Work
2012年
『マチルダ』、ローレンス・オリヴィエ賞 新作ミュージカル作品賞
『Tim Minchin vs The Orchestras Round II』、ヘルプマン賞 (英語版 ) Best Comedy Performer
『Storm』、Ockham Awards for Best Skeptic Video
2013年 – 『ジーザス・クライスト・スーパースター』、What's On Stage Awards, The W&P Longreach Best Supporting Actor in a Musical
2016年
『The Secred River』、Logie Award, Most Outstanding Supporting Actor
『マチルダ』、ヘルプマン賞 (英語版 ) Best Original Score
2017年
『恋はデジャ・ブ』Olivier Awards for Best New Musical
Orry-Kelly Award
2019年 – 『Back』、ヘルプマン賞 (英語版 ) Best Australian Contemporary Concert
2021年 – リチャード・ドーキンス賞 (英語版 )
出典
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外部リンク