スーパードルフィースーパードルフィー (Super Dollfie) とは、株式会社ボークスによって製造、販売されている合成樹脂製の一般向け球体関節人形である。SDと略されることがある。 概要1998年11月、発売開始。1997年に発売された、ボークス製1/6サイズカスタマイズドールの商品名が「ドルフィー(ドール+フィギュアの造語)」であり、それを超えるものとして「スーパードルフィー」と名付けられた。 当初は小売模型店であったボークスでは、1980年代以降にオリジナルのガレージキット製品を展開しはじめた。そのためスーパードルフィーも発売当初は模型雑誌に広告が打たれ、カスタマイズ方法が掲載されるなど、人形というよりはフィギュアに近い扱いがされており、販売数・生産数ともに少なく、受注生産に近い形で販売されていた。 ユーザーによるカスタマイズを前提とした商品で、着せ替えやウィッグの交換からドールアイの取替えやフェイスのリペイント、果ては削りやパテ盛りによるパーツの改造など、さまざまなレベルでの「カスタマイズ」を楽しむことが出来る。 これまでの合成樹脂製のガレージキットでは、ユーザーの大半は男性であった。その中にあって初めて女性をメインターゲットにした商品であり、ボークスのビジネスに大きな変化をもたらした。塗装を「メイク」、バリ取りやパーティングライン消しを「エステ」と読み替えて推奨したり、サービス化した広報上の工夫も、この製品の特徴の一つである。近年では日本国内だけでなく、日本国外にもファン層を広げている。 合成樹脂製であるため、日光による照射や経時変化等により黄変と呼ばれる劣化が起きる欠点がある。 スーパードルフィーはボークスの登録商標であり、60cmサイズ、40cmサイズの合成樹脂製の球体関節人形の総称として「スーパードルフィー」の名前を使用するのは誤りである。 2018年4月1日、中原淳一の作画を模したスーパードルフィーを、京都髙島屋で1人2体までの100体限定で数量限定の受注生産販売をしたところ、並び屋を駆使した中国での転売目的と見られる1人の男性客により買い占められる結果となった[1][2]。 設定年齢設定SDには、公式設定として「10歳」「13歳」「16歳」という年齢がつけられているが、「13歳」とされるものは男女ともに成人の体付きであり、むしろ「10歳」の男女の方が、現実のローティーンに近い。 2001年にSDの成長後(13歳)の姿としてSD13が発表されたことから、従来からのSDに対して自然発生的に「10歳」の設定が付けられた。同時に、MSDを4-5歳とする設定もつけられた。 SDおよびSD13(女児)のサイズは55 - 60センチで、身長差はほとんどない。SD13はヘッドパーツがSDより一回りほど小さく作られており、長身に見せる工夫がなされている。しかし、近年では「小顔SD」と呼ばれるヘッドパーツの小さなSDが出てきているため、一見しただけではSDとSD13の区別がつかない場合もある。 MSDは2006年に「みどり通園バージョン」・「まなぶ通園バージョン」の両モデルが発売されたため、幼稚園児であるとの年齢設定が確定された。しかしながら、特に女児の体型は、幼稚園児というより小学生の中学年から高学年と見るほうがふさわしい。 世界設定初期のSDは「異次元からの訪問者」というキャッチコピーで展開されていた。球体関節とテンションゴムによる「創作人形的」な構造に、パーツの交換や改造といった「模型的」なシステムを取り入れたSDは、それまでの着せ替え人形、ガレージキット・フィギュアの中においてまさに「異次元」であり、革新的な「素材」であった。 だが、「天使の里 聖母降臨の儀」の前後を境に、オーナーとSDを密接に繋ぎつける設定展開が盛んになり、それまでの「好みに改造できる球体関節人形のガレージキット」から「購入者の人格を反映する(ボークスは「もうひとりの貴方」と表現する)完成品ドール」へと変化していった。 SD写真集「もうひとりのわたし」にも記載されている「SDの世界観」と題された図説によると、オーナー(SDを所有する人)とSDは「おみ霊(おみたま)」という人智を突き抜けた存在でリンクしており、オーナーとSDは死後も一体の存在であると説いている。こうした擬似宗教的な設定が一部のSDオーナーから嫌われており、「SDの世界観」と題された図説に対する署名サイト[1] 等、抗議運動が起こった事がある[2] 。 一連の世界観設定の中で霊魂のような意味合いで使用されている「おみ霊」という単語は、一部の新宗教(真光系諸教団)で実際に使用されている言葉であり、一時はそういった集団とボークスの関係性が疑われたこともあった。 2006年11月、関西ローカル局のテレビ番組でSDが紹介された際に、スタジオで社長自らが「SDを持つと健康になる」等の「五つの効能」を紹介した。「五つの効能」とは、SDを所有することによって「心が癒される(健康)」、「友人が増える(家族)」、「仕事に意欲がわく(収入)」、「知識が増える(教養)」、「自分自身を見つめ直せる(人格)」というものである。 無論、これらの心境や生活の変化は、SD以外の趣味を楽しむ中でも起こり得るものであり、「まるで霊感商法ではないか」とオーナー間で波紋が広がった。 なお近年は「天使の里」に代表される前述の独特の世界観を維持する一方、例えば同社の冊子「ちょこっとカスタムレッスン Vol.3」において限定SD企画の現場を記事として載せるといった「製品」としての側面を同時に出していることもあって、以前ほどの騒ぎはみられなくなってきている。 製品ボディの種類による分類
非売品・未発売の種類
霊天使SD、母SDに関しては、現在多様なサイズで販売されている韓国製キャストドールの国内進出を牽制する意味で、設定のみ先行発表したともいわれている。 素材、メイクの仕様遍歴
販売方法SDの流通はボークス直営の店舗 (「天使の里」「天使のすみか」「ショールーム」の3形態) と通信販売、イベント販売に限られている。販売の際にはオーナーに対して「購入される」という表現はせず「お迎えになる」といった表現をして、購入することも一種の儀式として演出される。
コラボレーションモデル
販売店舗いずれもボークス直営の店舗、オンライン通販サイトである。 天使の里京都府嵯峨嵐山にある会員制の施設。詳細は霞中庵 竹内栖鳳記念館を参照。 天使の窓東京都原宿にある旗艦店。上述の天使の里とは違い、非会員でも入店可能。 天使のすみか秋葉原店、横浜店、宇都宮店、大阪店、広島店、神戸店、仙台店、札幌店、福岡店の全9店舗で展開。(2021年4月現在) ボークス公式ドルフィーオンラインストア60cmクラスのスーパードルフィー同士の互換性衣装に関する互換性SDであっても女児の場合は、オプションの胴体と交換する事で、成人の体型にする事ができる。その場合、アンダーバストとウエストが細くなる。こうする事で衣装の互換性が概ね保たれているが、2004年10月にラインナップが大幅に変更され、オプションの胴体の単品での販売は行われていない。こうした事情から、SDにSD13の衣装を着せる場合、旧ボディのオプションパーツで成人体形にしていない場合は、ドレスのウェストがギリギリになるか着せられない場合がある。 SD13男児・SD16男児・SD17男児はひとまわり大きいので、衣装の互換性はほとんどない。SD16男児・SD17男児はSD13男児よりさらに胸板が厚いため、SD13男児用の衣装でも着せられない場合がある。 スタンダードタイプのスーパードルフィー同士でも、旧ボディと新ボディでは、若干のプロポーションの変更が行われているので、レオタードの様に体に密着する様な衣装に関しては、互換性があるとは言い切れないので注意が必要である。 パーツの互換性2004年10月の新ラインナップ (新ボディ) 以降、ボークスは四肢パーツ及び未塗装頭部パーツの単品販売を中止し、ユーザーが交換できるのは手首、足首、頭のみとなった。しかし、それ以前のモデル (旧ボディ) ではパーツ販売が行われると共に、細かな変遷があったので、簡単に解説する。 旧ボディと新ボディでは胴体と脚部の間の球体関節の形状が大きく異なる為、胴体と脚部の間には部品レベルでの互換性がない。しかし、首や肩の形状が近い為、頭部と腕部に関しては互換性がある (ただし、新ボディ以降に「ピュアスキン」という名称にて、素材となるレジンキャストが一新された為、肌の色や質感は異なる。) 。 旧ボディのSD13は独自の股関節機構を持っており、SDとの互換性がなく、またSD13少女とSD13少年の間にも互換性がない。 2004年10月以降のいわゆる「新ボディ」からは、少女モデルの関節の形状が統一された。こうしてSD少女とSD13少女との間には、胴体と首・四肢の互換性が確立された。なお新ボディ以降は、SD13と成人体形化されたSDとが統合された事で、ラインナップ上、SDは「10歳」のみとなり、「13歳」は全てSD13となった。 他のドールとの互換性ここでは、60cmクラスのスーパードルフィー (SD、SD13の新旧ボディ) と他の種類の60cm級ドールとの、頭部などのパーツや衣装の互換性について記す。 ユノス荒木元太郎が原型を担当したレジンキャスト製球体関節人形。かつてボークスで販売されており、スーパードルフィーのエキストラモデルの扱いになっていた。 首の形状が異なるため加工が必要だが、スーパードルフィーのヘッドとユノスのボディとの組み合わせが可能である。スリーサイズが異なるため、衣装の互換性はない。 螺旋堂かつて、スーパードルフィーの旧ボディと衣装の互換性があるレジンキャスト製球体関節人形 (『螺旋堂ドール』と呼ばれる) を制作・販売していたメーカー (このメーカーはいわゆるラブドールも制作していた。) 。 螺旋堂ドールには、SDと同様に男女のモデルが存在するが、ボディーにはバリや気泡などが多く、スーパードルフィーと比較し品質が劣る。 しかしながら、少女タイプの螺旋堂ドールには各パーツについて、SD旧少女ボディと互換性があるため、SD旧少女ボディと螺旋堂ドールとでパーツを混在させた作例が存在する。 特に頭部に関しては、顔立ちや表情の独自性を求める一部のスーパードルフィーオーナーの支持もあって、比較的受け入れられている。 このため、スーパードルフィーのボディと組み合わせた作例がいくつかインターネット上に公開されている。 なお螺旋堂は、ドルフィー・ドリームを意識した様なプロポーションのレジンキャスト製球体関節人形を「新ボディ」と銘打って発表したが、実際に流通したかどうかは不明である。 母体経営者が品質<利益を強いたことから職人総辞職。 外国製キャストドール日本国外のメーカー製のレジンキャスト製の球体関節人形の。韓国メーカーが多く参入しているため、「韓国製ドール」「韓ドル」などと呼ばれるが、中国やアメリカのメーカーも参入している。 スーパードルフィーとパーツや衣装に互換性がある。肌色や質感が若干異なるものの、メイクや衣装でごまかせるためスーパードルフィーのヘッドやボディと組み合わせた作例がいくつかインターネット上に公開されている。参入メーカーが多いためパーツのバリエーションが多く、メーカーごとの個性が強いことから熱狂的なファンが存在する。 一方で、スーパードルフィーやユノアと酷似したドールを販売しているメーカーが存在する。 カスタマイズドール60センチクラスのカスタマイズドールには、オビツ60の様に、スーパードルフィーとある程度の衣装の互換性があるものが存在する (なお、アタッチメントを自作する事で、オビツ60にスーパードルフィーなどの頭部を取り付ける事も可能である。) 。 創作人形スーパードルフィー用の衣装や、グラスアイなどのオプションパーツの流通量は他の同クラスの人形用の衣装よりも豊富なので、オリジナルのドールの製作者の中にはスーパードルフィーとの互換性を意識して制作している者がいるため、創作系ドールの中にはスーパードルフィーと互換性を持つものがある。また、スーパードルフィーに限らず、ドール用のオリジナルヘッドのみを制作・販売しているメーカーも存在する (Real Missing Linkなど。) 。 Blythe、Pullipヘッドサイズが10インチとスーパードルフィーのヘッドサイズと近いことから、ウィッグやヘアアクセサリーは共有することができる。プーリップヘッドをスーパードルフィーボディと組み合わせた者も居るが、かなりの技量を要する。 フィギュア大型のフィギュアの頭部をスーパードルフィーボディと組み合わせた者も居るが、かなりの技量を要する。 外国製キャストドールとの関係ボークスは朝日ソノラマ刊の「スーパードルフィーパーフェクトカタログ」の116ページ目において、2003年に韓国のソウルに進出した事をレポートする文章の中で、「残念な事にスーパードルフィーの類似品の存在が明らかになった」と主張し、それらを「法の目をくぐり抜けようとした確信犯的類似品」などと表現して非難しており、ドールイベントへの海外製キャストドールの持込を規制している (その次のページでは、京都府警に検挙された日本国内のスーパードルフィーの模造犯に関するレポートが掲載されている。) 。 2006年に開催されたドールイベントで、意匠権の侵害を理由に「SDとその関連製品に類似した海外製ドールの持込を禁止する」という規制が設けられ、その曖昧な基準を巡って現在も議論が絶えない状態である。一方で、幼SDやSD16・SD17は、以前から外国製キャストドールで高い人気があった「小型幼児タイプ」と「長身青年タイプ」の模倣ではないかという見方もある。 脚注
関連項目
外部リンク |