スパゲティーの年に『スパゲティーの年に』(スパゲティーのとしに)は、村上春樹の短編小説。 概要
1991年1月刊行の『村上春樹全作品 1979〜1989』第5巻(講談社)に収録される際、大幅に加筆修正がなされた。 英訳
あらすじ1971年、「僕」はドイツ・シェパードの行水にでも使えそうな巨大なアルミ鍋を手に入れ、春、夏、秋、とスパゲティーを茹でつづけた。キッチン・タイマーがチーンという悲痛な音を立てるまで、一歩も鍋のそばを離れなかった。基本的に「僕」は一人でスパゲティーを茹で、一人でスパゲティーを食べた。一人でスパゲティーを食べている時に「僕」の部屋を訪れようとする人物はそのたびに違っていた。ある時は何年か前の僕自身であり、ある時はジェニファー・ジョーンズを連れたウィリアム・ホールデンだった。 午後3時20分に電話が鳴った時、「僕」は1971年の12月の光の中で畳の床に寝転んで天井を眺めていた。電話の相手は「僕」の知り合いのかつての恋人だった。 「彼が何処にいるのか教えてくれない?」と訊かれたが、彼の居場所を教えるわけにはいかなかった。「僕」が教えたとわかれば今度は彼の方が電話をかけてくるだろう。 「悪いけど今スパゲティーを茹でてるところなんだ」と「僕」は答えた。鍋の中に空想の水を入れ、空想のマッチで空想の火を点け、空想のキッチン・タイマーを15分[2]に合わせる。 「僕」は彼女に何もかも教えてやるべきだったのかもしれない、と今では後悔している。どうせ相手はたいした男じゃなかったのだから[3]。 脚注
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