スコットランド法はスコットランドの氏族、氏族長および支族長の存在を認めているが[7]、これは社会的な権威または席次の1つを認めているに過ぎず、それ自体、法の及ばないいかなる利益も伴うものではない[8]。スコットランド紋章院(Court of the Lord Lyon)は立会人により認められた氏族長の地位を記録することはできるが、司法上、氏族長の地位を宣言することはできない[9]。さらに、スコットランドのいかなる裁判所も、氏族長・支族長の地位をめぐる争いについて判断をするために裁判権を行使することはできない[4][10]。Aitchinson卿は民事上級裁判所(Court of Session)において次のように述べている。「歴史的には、氏族長または支族長が自身の地位をその裁判所の決定権に委ねるという考えは、とても奇怪である。氏族長は法であったのであり、その権限は自身の人民に由来したのである。」[4]。
「Chief of the Name and Arms」
紋章について管轄権を有するスコットランド紋章院(Court of the Lord Lyon)[10]は、スコットランドの家による「家名および紋章の長」(Chief of the Name and Arms)の申請を認めることができる。「家名および紋章の長」(Chief of the Name and Arms)は紋章学の用語であり、フランス語の「chef du nom et des armes」に由来するもので、紋章を帯びる資格のある家の長を指すものである[11][12]。「氏族長」(chief of clan)または「支族長」(chieftain of branch of clan)が、紋章を帯びる資格のある家の長を紋章学上正しく指し示すものとして使用されることを示す慣行も証する証拠はない[13]。「氏族長」(chief of clan)」および「支族の頭目」(principals of branches)の用語は紋章を帯びる者を指すものではない。氏族長・支族長の地位は紋章上の意義を有しないのである[13][Note 1]。氏族長と「Chief of the Name and Arms」は、当然ながら、同一人物たり得るが、これらは同義ではない[13]。氏族長と「家名および紋章の長」が同一人物でなかった例については、en:Chiefs of Clan Fraserを参照。
氏族長の紋章の要素は、スコットランドの氏族の構成員が通常はその帽子に付けるクレスト・バッジ(crest badge)においてもしばしば見られる。これらのクレスト・バッジに含まれるのは、多くの場合、氏族長の紋章のクレストとモットーである(場合によっては氏族長の第2のモットー、すなわち、スローガンも)。氏族長はクレスト・バッジの裏に3本の鷹の羽根を付すことができる。支族長は2本の鷹の羽根である。氏族の構成員は、スコットランド紋章院総裁(the Lord Lyon King of Arms)により紋章を認められた場合を除いて、1本も羽根を付すことはできない。その場合には、その者自身が紋章を帯びる資格を有するのであり、自分自身の紋章の要素を含むクレスト・バッジを付けることになる。
Maclean of Ardgour v. Maclean, 1938 S.L.T. 49 and 1941 S.C. 613 Scotland (Court of Session First Advising (16 July 1937), Second Advising (27 March 1941), Final Interlocutor (18 July 1941)).
Gloag and Candlish Henderson (1987). Introduction to the Law of Scotland (9th edition ed.). Edinburgh: W. Green