ジャノメチョウ亜科
ジャノメチョウ亜科(ジャノメチョウあか、学名:Satyrinae)はタテハチョウ科の亜科のひとつ。 本亜科の分類には議論があり、タテハチョウ科とは独立した科のジャノメチョウ科 Satyridae として扱う分類体系や、伝統的にモルフォチョウ亜科 Morphinae に分類されることの多かったモルフォチョウ族 Morphini、フクロウチョウ族 Brassolini、ワモンチョウ族 Amathusiini を本亜科に含める体系もある。本項では、この3族を除く本亜科を便宜上、「狭義のジャノメチョウ亜科」として扱う。 分布と多様性本亜科は少なくともおよそ2500種を含み[3]、タテハチョウ科のなかでは最大の亜科として知られる[4][5]。汎存的な分布を示し、南極大陸を除くすべての大陸に分布する[3][6]。 形態狭義の本亜科は一般に、成虫の前後翅の中室が翅脈によって閉塞し[7]、前翅基部の翅脈が膨らむ[8]とされるが、これらの形態的特徴は亜科内で普遍的に見られるものではないことが分かっている[9]。 和名である「ジャノメチョウ」は翅にある蛇の目状の斑紋(眼状紋)に由来するが[7][8]、亜科内における眼状紋の発達の度合いはさまざまで、眼状紋をほとんど持たない種も知られる[10]。また、翅に発香鱗(英語: androconia)をもつ種も見られる[9]。 幼虫は第10腹節に一対の突起をもつため[11]、腹端が二股にわかれる[8][12]。この特徴は狭義の本亜科(のうち幼虫期が既知の種)において普遍的に見られるが[12]、モルフォチョウ族、フクロウチョウ族、ワモンチョウ族および、本亜科に近縁と考えられるフタオチョウ亜科 Charaxinae とクビワチョウ亜科 Calinaginae とも共通する[11]。
生態狭義の本亜科において、幼虫の食草は基本的に単子葉植物に限定されており[12]、とくにイネ科植物を食草とする種が多い[3][6]。例外的に、ジャノメチョウ族 Satyrini に属する Euptychia 属、Ragadia 属、Acrophtalmia 属の3属はヒカゲノカズラ綱を食草として利用することが知られ、さらに Euptychia 属においてはヒラゴケ科の蘚類を摂食する種が知られている[13]。また、モルフォチョウ族は単子葉植物のほかに双子葉植物も食草として利用することが知られている[14][15][注釈 1]。このような食草範囲の差異は、本亜科の生物地理や進化史を考えるうえでも重要視される[12][3][6]。 分類種多様性に反して、本亜科の分類にかんしては未整理の部分が多く残されており、タテハチョウ科内における本亜科の系統分類学的地位や亜科内の下位分類は長らく混乱した状態にあった[4][6]。このような混乱は近年の分子系統学的研究の進展によって徐々に解決されつつあり[4]、それに伴い、従来の分類体系とあたらしい分類体系との間に差異が生じる場合がある。たとえば、上述したように、モルフォチョウ族 Morphini、フクロウチョウ族 Brassolini、ワモンチョウ族 Amathusiini の3族は伝統的に本亜科とは独立した亜科に含められてきたが、近年は分子系統学的知見を反映し、本亜科に含めることが多くなっている[4]。また、ヒカゲチョウ属 Lethe は、従来マネシヒカゲ族 Elymniini に含められることが多かったが、近年はジャノメチョウ族の属と見なされる場合が多い[5]。 本項では Wahlberg (2019) による亜族までの分類と、Peña et al. (2006) による狭義の本亜科の下位分類の変遷を示した表を紹介する。族和名は 相樂, 森 & 福崎 (2016) に準拠したが、亜族や属の和名は表記しない。
脚注注釈
出典
参考文献和文
英文
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