N ,N -ジメチルアニリン (N ,N -dimethylaniline) は、アニリン から誘導される有機化合物である。ベンゼン環 と、2個のメチル基 で置換されたアミノ基 (ジメチルアミノ基)からなる第三級アミンである。アミン臭を持つ有毒な油状の液体で、溶媒や合成の原料として使われる。純物質は無色であるが、販売されている液体は黄色である。クリスタルバイオレット などの染料 の前駆体 として重要である。消防法 に定める第4類危険物 第3石油類に該当する[ 2] 。
合成と反応
ジメチルアニリンは1850年 、アウグスト・ヴィルヘルム・フォン・ホフマン がアニリンとヨードメタン を加熱して初めて合成した。
C6 H5 NH2 + 2 CH3 I → C6 H5 N(CH3 )2 + 2 HI
現在、工業的にはアニリンとメタノール を硫酸 を触媒として縮合させ(アルキル化 )、生じる硫酸塩を塩基で中和して得る[ 1] 。
C6 H5 NH2 + 2 CH3 OH → C6 H5 N(CH3 )2 + 2 H2 O
また同様にジメチルエーテル を使用してメチル化 で合成することもできる。
ジメチルアニリンはアニリンと同様に弱塩基 や求核剤 としての性質を示す。混酸 でニトロ化 (英:nitration )するとテトリル を生成する。これは4個のニトロ基 を持ち、爆発性を示す。またn -ブチルリチウム を作用させるとジメチルアミノ基のオルト位 がリチオ化 される。ジメチルアミノ基はアルキル化を受け、第四級アンモニウム塩 を生ずる[ 3] 。
C6 H5 N(CH3 )2 + (CH3 O)2 SO2 → C6 H5 N(CH3 )3 + CH3 OSO3 -
また、氷冷下でスルファニル酸 を亜硝酸ナトリウム でジアゾ化 して作ったスルファニル酸 のジアゾニウム塩 溶液にジメチルアニリン塩酸塩溶液を加えてジアゾカップリング させると、酸塩基指示薬 のメチルオレンジ が合成できる。
応用
ジメチルアニリンはマラカイトグリーン やクリスタルバイオレットなどのトリアリールメタン系染料 (英:triarylmethane dye )の前駆体として重要であるほか[ 4] 、その他の有機化合物の前駆体としても使用される。またポリエステル やビニルエステル樹脂 の成型の際に促進剤として利用される[ 5] 。モルモット やウサギ とガスクロマトグラフィー を使用する試験管内 でのジメチルアニリンの新陳代謝 の研究で新陳代謝のサイクルでの脱メチル化 やN -オキシド化 の仕組みが確認され、環状ヒドロキシ化のシステムを確立した[ 6] 。
出典
^ a b c d Merck Index 14th ed., 3234.
^ 法規情報 (東京化成工業株式会社)
^ J. Jacques and A. Marquet (1988). "Selective α-Bromination of an Aralkyl Ketone with Phenyltrimethylammonium Tribromide: 2-Bromoacetyl-6-methoxynaphthalene and 2,2-Dibromoacetyl-6-Methoxynaphthalene" . Organic Syntheses (英語). ; Collective Volume , vol. 6, p. 175
^ Thomas Gessner and Udo Mayer "Triarylmethane and Diarylmethane Dyes" ウルマン産業化学百科事典 (英語版 ) 2002年版, Wiley-VCH, Weinheim.doi :10.1002/14356007.a27_179
^ General Info on DMA (N,N-Dimethylaniline) Archived 2007年8月29日, at the Wayback Machine ., オーストラリア合成化合物事典
^ Brimecombe, R. D.; Fogel, R.; Limson, J. L. Electrochemical monitoring of the biodegradation of 2,4-dimethylaniline. J. Agric. Food. Chem (英語版 ) .2006 54 8799-8803.