ジェイムス (James ) は、イギリス のロック バンド 。1981年 にマンチェスター で結成された。ジャンルとしてはニュー・ウェイヴ からオルタナティヴ・ロック にあたり、代表曲に「シット・ダウン」 (Sit Down) や「レイド」 (Laid) がある。
略歴
1982年にマンチェスターで、幼馴染みのポール・ギルバートソンとジム・グレニーで結成。ジムの名前がバンド名の由来とされている。ハシエンダ でのライブにて、ファクトリー・レコード の創設者であるトニー・ウィルソンの注目を引き、レコード契約を得る。2枚のシングルをファクトリー・レコードからリリースし、ザ・スミス の前座などをして活動する。『NME 』などの音楽雑誌からの注目を浴び、1986年 にはメジャー・レーベルのサイアー からデビュー・アルバム『スタッター』を発表するもヒットには恵まれず、不遇の時代を送ることになる。
1988年 には同じくサイアーからセカンド・アルバム『ストリップ・マイン』をリリースするも、こちらも鳴かず飛ばずの結果となる。翌年、バンドは借金をしてライブ・アルバム『ワン・マン・クラッピング』を自主制作でリリースする。インディー ・レーベルとして名の馳せたラフ・トレード・レコード の支援もあり、このアルバムは英国インディー・アルバム・チャートの1位を獲得する。これにより、バンドは再び脚光を浴びることになる。
バンドにとって追い風となるかのように、1990年代 になるとマンチェスターではマッドチェスター・ムーブメント が起きていた。そしてキーボード、ヴァイオリン、トランペットを加えて7人編成となったバンドが、1990年の6月にサード・アルバム『ゴールド・マザー』を発売すると、アルバムからのシングルがすべてチャートのトップ40に入る。特に1989年 に発表したものを再録音した「シット・ダウン 」 (Sit Down、1991年 発表)は、全英シングルチャート 2位になる大ヒット曲になった。彼らの人気度は一躍高まり、ライブで3万人規模の開場を完売させるまでになる。
続くアルバム『セヴン』(1992年 )もアルバム・チャートの2位を獲得し、本国イギリスでの人気を確固たるものとした。その後、トランペッターのアンディ・ダイアグラムが脱退したバンドは、新たなるサウンドの追求を目指し、ブライアン・イーノ と共に音楽の創作をする。そして1993年 、代表曲のひとつである「Laid」を収録した5枚目のスタジオ・アルバム『レイド』を発表する。イーノをプロデューサーに起用したこの作品は、イギリスで3位を獲得する。本国での成功とともに、バンドはこの頃から本格的にアメリカでの活動を始め、このアルバムはビルボード 200で最高位68位まで到達し、RIAA からゴールド・ディスク に認定されている。
その後、ギタリストのラリー・ゴットの脱退などもあり、アメリカで目立った記録を残すことはなくなったが、イギリスでは安定した人気を維持し、新ギタリストのエイドリアン・オクサールとマルチ・プレイヤーのマイケル・クラスを加えてからも、1997年 の『ウィップラッシュ』 、1999年 の『ミリオネアーズ』と連続でトップ10入り、ゴールド・ディスク (BPIによる認定、10万枚以上のセールス) 認定を果たす。ちなみに、この間にリリースした彼らの初のベスト・アルバム『ベスト・オブ』は、彼らにとって初の全英アルバムチャート 1位になった。
2001年 には『プリーズド・トゥ・ミート・ユー』をリリース。全英11位。このアルバムのリリースによって、バンドはレコード会社との契約が終了した。ボーカルのティム・ブースは彼自身の活動に専念するための脱退を宣言し、バンドは2002年から長い休止期間に入る。2001年末に行われたサヨナラ・ツアーには、脱退していたラリーとアンディもゲストとして姿を見せた。ティムは2004年にソロ・アルバムをリリースしたほか、俳優として2005年の映画『バットマン・ビギンズ 』などに出演する。
2007年 にティムとラリーとアンディのバンドへの復帰により1990年代初期の陣容で活動を再開。当初5日間のツアーを予定していたが、7日間に変更され、すべての公演が売り切れになった。夏には T in the Park や V Festival といったフェス にも参加する。そして2008年 に7年ぶりとなるスタジオ・アルバム『ヘイ・マ』をリリース。全英10位にランクインし、久々のトップ10入りを果たすとともに、根強い人気を証明する。
2016年のアルバム『Girl at the End of the World』は、全英チャートで2位にランクインした。これはベスト・アルバムを除けば、ジェイムスのアルバムのチャート最高位にあたる。ライブツアーも定期的に続けているが、2015年からはラリー・ゴットはツアーに帯同せず、ギタリストに再びエイドリアン・オクサールを迎えている。
備考
1992年に唯一の来日公演を行っている。
前座をしていたザ・スミス の「I Started Something I Couldn't Finish」(1987年)のカセット・シングルに、ジェイムスの「What's The World」のカヴァー(ライブ)が収録されている。
ボーカリストのティム・ブースはジェイムス在籍中の1995年に、映画音楽作曲家のアンジェロ・バダラメンティ とともに『ブース&バッド・エンジェル』なるアルバムを発表。さらに、ジェイムス脱退後の2004年からソロ活動を開始、ファースト・アルバム『ボーン』を発表した。ジェイムス復活後の2011年に、セカンド・アルバム『Love Life』をリリースした。
メンバーのソウル・デイヴィスによれば、創立メンバーのジムは、幼馴染みであるポールを追い出したティムとしばしば意見が対立していて、一時は目も合わせない仲だったそうである。
メンバー
現在のラインナップ
ティム・ブース at en:Haldern Pop 2013
ジム・グレニー
デヴィッド・ベイントン=パワー
ソール・デイヴィス
マーク・ハンター
アンディ・ダイアグラム
ティム・ブース (Tim Booth) - ボーカル(1982年-2001年、2007年- )
ジム・グレニー (Jim Glennie) - ベース(1982年- )
デヴィッド・ベイントン=パワー (David Baynton-Power) - ドラム(1988年- )
ソール・デイヴィス (Saul Davies) - ギター、ヴァイオリン(1989年- )
マーク・ハンター (Mark Hunter) - キーボード(1989年- )
アンディ・ダイアグラム(Andy Diagram) - トランペット(1989年-1992年、2007年- )
エイドリアン・オクサール (Adrian Oxaal) - ギター(1996年-2002年、2015年- )
旧メンバー
ラリー・ゴット
ポール・ギルバートソン(Paul Gilbertson) - ギター(1982年-1984年)
ギャバン・ウェラン(Gavan Whelan) - ドラマー(1982年-1988年)
マイケル・クラス (Michael Kulas) - ギター、キーボード(1997年-2002年)
ラリー・ゴット (Larry Gott) - ギター、キーボード(1984年-1996年、2007年-2015年)
ディスコグラフィ
*「全英」とは 「全英アルバムチャート 」におけるチャート最高位を示す。「ゴールド等認定」については「BPI (British Phonographic Industry)」の記録からである。
スタジオ・アルバム
年
タイトル
全英
ゴールド等認定
補足
1986
スタッター Stutter
発売日:1986年6月
レーベル:Blanco y Negro / Sire
68
-
デビュー・アルバム
1988
ストリップ・マイン Strip-mine
発売日:1988年9月
レーベル:Blanco y Negro / Sire
90
-
1990
ゴールド・マザー Gold Mother
2
ゴールド (10万枚)
アメリカでは1991年に「ジェイムス」のタイトルでリリース。
1992
セヴン Seven
2
ゴールド
1993
レイド Laid
3
シルバー (6万枚)
ブライアン・イーノ との初の共同作業。
1994
ワー・ワー Wah Wah
11
-
「ジェイムス&ブライアン・イーノ」としてリリース。
1997
ウィップラッシュ Whiplash
発売日:1997年2月25日
レーベル:マーキュリー
9
ゴールド
1999
ミリオネアーズ Millionaires
発売日:1999年10月13日
レーベル:マーキュリー
2
ゴールド
2001
プリーズド・トゥ・ミート・ユー Pleased to Meet You
発売日:2001年7月17日
レーベル:マーキュリー
11
-
2008
ヘイ・マ Hey Ma
発売日:2008年4月7日
レーベル:マーキュリー
10
-
2010
The Night Before
-
2010
The Morning After
-
2014
La Petite Mort
-
2016
Girl at the End of the World
2
-
2018
Living in Extraordinary Times
-
2021
All The Colours Of You
-
ライブ・アルバム
年
タイトル
全英
ゴールド等認定
補足
1989
ワン・マン・クラッピング One Man Clapping
-
-
2002
ゲッティング・アウェイ・ウィズ・イット…ライブ Getting Away With It... Live
102
-
2020
Live in Extraordinary Times
-
-
14か国で86のライブを展開した「Living in Extraordinary Times」ツアーからのコレクション。
DVDとCDの2枚組
コンピレーション・アルバム
年
タイトル
全英
ゴールド等認定
補足
1998
ベスト・オブ The Best Of
発売日:1998年6月30日
レーベル:マーキュリー / Fontana
1
プラチナ (30万枚)
初のベスト盤。限定版にはライブ音源CDも付属。
新曲「Destiny Calling」と「Runaground」も収録。
2001
Bサイズ・ウルトラ B-Sides Ultra
発売日:2001年12月3日
レーベル:マーキュリー
-
-
2004
コレクション The Collection
発売日:2004年10月11日
レーベル:Spectrum
43
-
シングル曲、B面、レア・トラックなど様々な曲で構成。
レナード・コーエン の「さよならマリアンヌ」 "So Long, Marianne" のカバーも収録されている。
2007
フレッシュ・アズ・ア・デイジー Fresh as a Daisy - The Singles
発売日:2007年4月30日
レーベル:マーキュリー
12
-
マーキュリー時代のシングル曲を中心とするオールタイムベスト。
2枚組の完全版と1枚に収められたものがある。
シングル
"Jimone" 1983年
"James Ⅱ" 1985年
"Village Fire" 1985年
"Chain Mail" 1986年
"So Many Ways" 1986年
"What For" 1988年
"Ya Ho" 1988年
"Sit Down" 1989年
"Come Home" 1989年
"How Was It for You?" 1990年
"Come Home (re-release)" 1990年
"Lose Control" 1990年
"Sit Down (re-release)" 1991年
"Sound" 1991年
"Born of Frustration" 1992年
"Ring the Bells" 1992年
"Seven" 1992年
"Sometimes (Lester Piggott)" 1993年
"Laid" 1993年
"Jam J/Say Something" 1994年
"She's a Star" 1997年
"Tomorrow" 1997年
"Waitzing Along" 1997年
"Destiny Calling" 1998年
"Runaground" 1998年
"Sit Down (Apollo 440 mix)" 1998年
"I Know What I'm Here For" 1999年
"Just Like Fred Astaire" 1999年
"We're Going to Miss You" 1999年
"Getting Away With It (All Messed Up)" 2001年
参考文献
外部リンク