T. aquaticusは、50〜80°C(122〜176°F)の温度で生き残ることができ、65〜70°C(149〜158°F)で最高の成長速度を示す。多数の細胞外および細胞内プロテアーゼおよびペプチダーゼ、ならびに細胞膜を通過するアミノ酸およびオリゴペプチドの輸送タンパク質を合成する能力を持ち、環境中からタンパク質を吸収できる。この細菌は化学栄養菌であり、食物を得るために化学合成を行う。しかし、その温度範囲は、理想的な環境を共有する光合成シアノバクテリアの温度範囲と多少重なっている。そのため、他のシアノバクテリア等の細菌と同じ環境で光合成を行いエネルギーを得ているような環境が見つかることもある。T. aquaticusは通常好気的に呼吸を行うが、その菌株の1つであるThermus aquaticus Y51MC23は嫌気的に増殖することができる[5]。
T. aquaticusのゲノムは1つの染色体と4つのプラスミドで構成されており、その完全なゲノム配列決定により、多数の遺伝子座にCRISPR遺伝子が存在することが明らかになった[6]。
DNAポリメラーゼは、1976年にT.aquaticusから最初に単離された[13]。このDNAポリメラーゼに見られる最大の利点は、その耐熱性(最適温度72°C、95°Cでも変性しない)である。また、他のソースからのDNAポリメラーゼよりも純粋な形(他の酵素汚染物質を含まない)で分離できたこもと、大きな利点であった。その後、キャリー・マリス及び他の研究者はシータス社において、ポリメラーゼ連鎖反応を行い短いDNA断片を増幅する技術(PCR)にこの酵素を使用し、熱のサイクル毎に大腸菌由来のポリメラーゼ酵素を追加投入するのではなく、TaqIのみでPCRを行う技術を確立した[14]。酵素はまた、クローン化と配列決定がなされ、より短い「ストッフェルフラグメント」を生成するように改変され、商業販売のために大量に生成された[15]。1989年、サイエンス誌は最初の「Molecule of the Year」として、Taqポリメラーゼを選定した[16]。1993年、Mullisは、PCRの研究により、ノーベル化学賞を受賞した。
T. aquaticusからの酵素の商業的使用には論争があった。ブロックの研究の後、生物のサンプルは、公開リポジトリであるアメリカンタイプカルチャーコレクションに寄託され、Cetus社を含む様々な研究者は、そこから菌株を入手した。 Taqポリメラーゼの商業的可能性は、1990年代に明らかになっており、[17]国立公園局はこれを「巨額のTaqの剥奪」(”Great Taq Rip-off”)であると述べた[18]。現在では、国立公園で働く研究者は、後の利益の一部を公園サービスに送り返す「利益共有」契約に署名する必要がある。
参考文献
Nobre, M. F., H. G. Triiper, and M. S. da Costa. 1996. Transfer of Thermus ruber (Loginova et al. 1984), Thermus silvanus (Tenreiro et al. 1995), and Thermus chliarophilus (Tenreiro et al. 1995) to Meiothermus gen. nov. as Meiotheimus ruber comb. nov., Meiothermus silvanus comb. nov., and Meiothermus chliarophilus comb. nov., respectively, and emendation of the genus Thermus. Int. J. Syst. Bacteriol. 46604-606.
^ abcdefBrock TD and Freeze H (1969). "Thermus aquaticus, a Nonsporulating Extreme Thermophile". J. Bact. 98 (1): 289–97.
^ abBryan, T. Scott (2008). Geysers of Yellowstone, The (4th ed.). University Press of Colorado. ISBN978-0-87081-924-7
^Pierson, Beverly K.; Bauld, John; Castenholz, Richard W.; D'Amelio, Elisa; Marais, David J. Des; Farmer, Jack D.; Grotzinger, John P.; Jørgensen, Bo Barker et al. (1992-06-26), Schopf, J. William; Klein, Cornelis, eds., “Modern Mat-Building Microbial Communities: a Key to the Interpretation of Proterozoic Stromatolitic Communities”, The Proterozoic Biosphere (Cambridge University Press): 245–342, doi:10.1017/cbo9780511601064.008, ISBN978-0-521-36615-1
^Air GM; Harris JI (1974). “DNA-Dependent RNA Polymerase From the Thermophilic Bacterium Thermus aquaticus”. FEBS Letters38 (3): 277–281. doi:10.1016/0014-5793(74)80072-4. PMID4604362.
^Sato, S (February 1978). “A single cleavage of Simian virus 40 (SV40) DNA by a site specific endonuclease from Thermus aquaticus, Taq I”. J. Biochem.83 (2): 633–5. doi:10.1093/oxfordjournals.jbchem.a131952. PMID204628.