コンタックスGコンタックスG(Contax G)は、京セラが1994年に最初のモデルを発売し、2005年まで販売されていたコンタックスブランドのレンズ交換式オートフォーカスフィルムカメラシリーズである。交換レンズを主として周辺機器によりシステムを構成する。 カメラボディコンタックスブランドではこの以前にコンタックスTシリーズという、いわゆる高級コンパクト機があったが、Gシリーズではレンズ交換式とし、より趣味性の高いものとなった。当時は、レンズ固定式の一般のカメラからは距離計が完全に消滅し、一眼レフ方式以外のレンズ交換式カメラはライカ(Mシリーズ)に代表される距離計式(レンジファインダー)がもっぱらであったため、オートフォーカスレンジファインダーと銘打たれたが、距離計式ではない(なお、Tシリーズの初代モデルが距離計式である)。TシリーズとGシリーズの関係に似たようなシリーズとして、コニカの「ヘキサー」と「ヘキサーRF」があるが、ヘキサーRFは距離計式を採用した。 Gシリーズは、レンズ交換式カメラを、オートフォーカスをはじめとして完全電子化するという野心的なシリーズで、ボディは初代コンタックスG1および後継機種コンタックスG2の2機種が設計・生産された。両機種・レンズとも機能性・画質・デザインといった多くの面で完成度の評価は高く、また極端な高級路線を取りがちなコンタックスブランド製品としては比較的現実的な価格も多くのユーザーを受け入れる下地となった。 一方で、コンタックスG1のオートフォーカスは光学式ではあるものの、撮影者が2重像(ないし上下像)を確認することはできず、「焦点合わせの結果に不安がある」という、オートフォーカスフィルムカメラの弱点であり距離計式を選ぶ理由となる点について、本シリーズ機には距離計式としての利点が無いというのが大きな弱点である。G2ではオートフォーカスの向上のため赤外線によるアクティブオートフォーカス併用となった。 ファインダーはいわゆる「実像式」タイプだが、取り付けられたレンズの焦点距離を電子認識し、自動的に表示範囲の調整とパララックス補正を行う機能を備える。特にコンタックスG2のファインダーはズームレンズの画角変化にも逐次追従するなど、高機能なファインダーとなっている。 京セラのカメラ事業撤退により、アクセサリを含む全ての製品が2005年3月をもって生産終了、同年9月に出荷完了した。以下本記事中に「希望小売価格」として記載した円建ての価格はいずれも発売当時に京セラが日本国内で提示していた税抜き希望小売価格である。 コンタックスGシリーズボディに共通の不具合として、シャッターボタン横に取り付けられているフィルムカウンター窓の小型液晶パネル内層で劣化による滲みが起きる、という問題を抱えており、中古での購入時にはこの現象が起きているか否か、あった場合には枚数表示の視認に影響がないかを確認する必要がある。また、外装はチタンであるものの、内部部品にはプラスチックが多用されており、これらの経年劣化・損傷が起きやすい。
G2はボディカラーが通常のチタン地色のものとは別にブラック塗装のモデルが数量限定で生産された。このモデルは一般にG2ブラックと呼ばれ、日本では1000台限定で1997年9月10日に発売された。ボディに合わせて各Gマウントレンズにもブラック塗装モデルが用意された[注釈 1]ほか、レンズキャップやフードといったアクセサリ類にもブラック塗装品が生産され、レンズ本体とセットで入手できた。 Gマウント概要コンタックスGシリーズのレンズマウントは専用に設計されたコンタックスGマウントである。口径44.0mm、フランジバック29.0mmで、電子接点はレンズ側が9つ、ボディ側はコンタックスG1が5つ、コンタックスG2が7つである。取り付けの構造はいわゆるスピゴット式で、ボディとレンズを接合させ、鏡筒後部のリングを回転させて固定する。取り付け時にレンズ側の絞り指標も回転する仕様のため、ボディから分離されたレンズは絞り環の回転範囲と指標の位置が一致しないが、壊れているのではなくそれで正常である。 コンタックスGマウントは過去のいかなるレンズマウントとも直接的な互換性を持っていない。純正マウントアダプター「GA-1」を使用することでコンタックス一眼レフ用のレンズを取り付け、マニュアルフォーカスで使用することができるが、これ以外のマウントアダプターは非純正を含め一つも発売されなかった。また、コンタックスGマウントはもともとフランジバックが短いうえ、レンズ側もボディ内にミラーなどの障害物が存在しないことを前提に設計されているため、コンタックスGマウントレンズを無限遠にピントが合う状態で一眼レフボディで使用することは不可能である(近接撮影のみならば可能)。 フランジバックの短い近年のレンズ交換式ミラーレスディジタルカメラでは使用可能なため、2010年頃から各種アダプターが販売され始めた。 他には、ライカMマウントに改造するといった方法もある。いくつかの業者では距離計に連動させるカムも加工している。 純正レンズ京セラ純正のコンタックスGマウント対応レンズはオートフォーカス単焦点5種・オートフォーカスズーム1種・マニュアルフォーカス単焦点1種の計7種類が発売された。レンジファインダーカメラらしく広角レンズを中心としたラインアップで、全てカール・ツァイスブランド・T*コーティング仕様となっている。焦点距離では16mmから90mmまでが用意されているが、ボディ内蔵ファインダーが対応可能な画角は28mm以上であるため、16mm/21mmレンズにはアクセサリーシューに取り付けて使う専用外付けファインダーが付属する。これらのファインダーにはパララックス補正の機能はない。コンタックスG1は35-70mmには対応しないほか、21mm/35mmレンズの使用にはメーカーによるアップデートが必要である。 対応ボディがわずか2機種しか発売されなかったことから中古市場での価格はリーズナブルであるが、性能面では描写力に優れた45mmプラナーやカルト的人気を誇る16mmホロゴンをはじめとして、ラインアップされている製品全てが高い評価を受けている。レンズ構成が比較的本来の仕様に近いものが多いため、「ブランドだけではない本物のツァイスレンズ」を体験したいユーザーにも人気がある。特に、ホロゴンおよびビオゴンに見られるバックフォーカスが極端に短い構成は一眼レフカメラ向けには物理的に設計できず、またデジタルカメラではイメージセンサーへの入射角の問題から性能を発揮しづらいため、デジタル一眼レフ全盛の現代においては極めて希少な存在である。
全てのコンタックスGマウントレンズは京セラのカメラ事業撤退に伴い2005年3月に生産完了となった。京セラによる補修サービスの期限は2015年3月となっている。2002年1月には日本国内の各小売店舗において「モニターキャンペーン」という名目でレンズの安売りが行われ[注釈 2]、この時点で既に実際のレンズ生産は終了していたと見られている。 マウントアダプター京セラ純正の「GA-1」が唯一の存在である。このアダプターを間に挟みこむことで、コンタックス/ヤシカマウントの一眼レフ用レンズを使用できる。コンタックス/ヤシカマウントレンズは豊富な種類がラインアップされており、特にコンタックスGマウントに存在しない100mm以上の望遠レンズを多く揃えるため、GA-1の使用により選択肢を大きく広げることができる。付属品は前後キャップ(ボディキャップC・GK-R1)。希望小売価格2万円。 露出決定はTTL実絞り測光による絞り優先オートおよびマニュアル露出の双方が使用できる。コンタックス/ヤシカマウントレンズは全てマニュアルフォーカス専用であるためオートフォーカス機構は動作しないが、コンタックスGマウントボディはファインダー部に独立した距離計を内蔵しているため、条件を満たせばボディの測距機能をフォーカシングの参考に使用することができる。ただし取り付けられたレンズやフードの外径が66mm以上の場合、内蔵距離計の光路をふさいでしまうために測距機能は動作しない。 コンタックスGシリーズボディの特徴である焦点距離可変の内蔵ファインダーもGA-1に連動する。GA-1の鏡筒部には画角リングと呼ばれるスイッチがあり、28mm/35mm/50mm/60mm/85mmのいずれかにセットできる。内蔵ファインダーはここで設定された画角を認識して追従、パララックス補正も機能する。画角リングにない焦点距離のレンズを使用する場合は「最も近い値」にセットすることを推奨されているが、この場合は当然ながら内蔵ファインダーでのフレーミングは目安程度にしか使えず、パララックス補正にも誤差が出る。 ファインダーと測距機能の両方が完全に機能すると保証されているレンズは以下の8種である[1]。
コンタックス/ヤシカマウントには他マウント規格のレンズを使用するためのアダプターが流通しており、これらのアダプターとGA-1を2段付けにすればそれらが対応するマウントのレンズをコンタックスGマウントボディで使用することができるようになる[2]。ただしこの使用方法は設計時に想定されていない用途であるため、メーカーからはいかなるサポートも受けられない。コンタックス/ヤシカマウント用アダプターが用意されているマウントの大部分は中・大判マウントで、ハッセルブラッドがメーカー純正で生産したものが有名である。M42のように普及率の高いマウント用の製品も存在する。M42マウントについては一時サードパーティ製のコンタックスGマウント用アダプターの話があった[3]ものの表舞台に出ることはなかったため、結局二段付けによる使用に頼らざるを得ない状況が続いている。 純正アクセサリ遠隔撮影を行うには有線電気信号式の「ケーブルスイッチL」シリーズが必要となる。無線式リモコンや旧来の機械式ケーブルレリーズには対応していない。 コンタックスGシリーズ用デザインのフラッシュは下記2機種が用意されているが、いずれも小型タイプでバウンス用の角度調整機構を持たず、電源がやや高額なリチウム電池であるなどの難点もある。コンタックスGシリーズボディはコンタックスTLA系の全ストロボにも対応するため、必要であればより大型のストロボを使用することができる。また他社製フラッシュもホットシュー接点やシンクロターミナルを介してAE非連動で使用できる。
参考文献
ユーザーである写真家
脚注注釈出典
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