『コジモ・イル・ヴェッキオのメダルを持つ男の肖像』(コジモ・イル・ヴェッキオのメダルをもつおとこのしょうぞう、伊: Ritratto d'uomo con medaglia di Cosimo il Vecchio de' Medici, 英: Portrait of a Man with a Medal of Cosimo the Elder)は、イタリアの盛期ルネサンスの巨匠サンドロ・ボッティチェッリが1475年ごろに制作した絵画である。テンペラ。両手にコジモ・イル・ヴェッキオ・デ・メディチの姿が刻まれたメダルを持つ若い男性を描いている。この男性の正体は長年謎のままとなっており、様々な説が唱えられている。現在はフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されている[1][2][3][4][5]。
モデルがメダルの制作者の肖像である可能性は美術史家ヤーコプ・ブルクハルト、ヴァルター・フリードレンダー(英語版)、ジャン・ド・フォヴィル(Jean de Foville)らによって指摘されている(ミケロッツォ・ディ・バルトロメオ、ニッコロ・ディ・ジョヴァンニ・フィオレンティーノ(英語版)、クリストフォロ・ディ・ジェレミア(英語版))[3]。またコジモ・デ・メディチを含むメディチ家の一員も主張されている。美術史家グイド・コルニーニ(Guido Cornini)はこうした他の美術史家の説に加えて、ボッティチェッリの兄弟アントニオ・ボッティチェリ(Antonio Botticelli)の可能性が高いと考えた[11][12]。この主張は男性がボッティチェリの『東方三博士の礼拝 』(Adorazione dei Magi)に描かれている画家の自画像とよく似ていることに基づいている[12]。ボッティチェッリと同様にアントニオもメディチ家の宮廷で働いており[13]、メダルを鋳直し、鍍金を施したことが知られている[11][12]。この肖像画が描かれたとき彼は40歳くらいだったと思われる。反対に、直接交差する視線は鏡を見ている画家のものであった可能性がある[14]。
1982年、トーマス・ラルフ・マートン(英語版)のコレクションからオークションに登場した、ボッティチェッリの絵画『ラウンデルを持つ青年の肖像』(Giovane uomo con in mano una medaglia)のモデルが、確証はないもののジョヴァンニ・デ・メディチ・イル・ポポラーノと特定された。この肖像画では若い男性が本作品と同じようなポーズで、古い絵画から人物像を切り取って制作された丸いメダリオン(コジモではなくひげを生やした聖人)を掲げていることから対作品ではないかという憶測を引き起こし、したがって本作品に描かれた男性はおそらく彼の兄ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチであることが指摘された[16][17][18]。長く暗い巻き毛と顔の特徴は、ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコの別の表現と推定されているボッティチェッリの『プリマヴェーラ』(Primavera)のメルクリウスのものと似ている。
Flaten, Arne R., Medals and Plaquettes in the Ulrich Middeldorf Collection at the Indiana University Art Museum: 15th to 20th Centuries, p. 16, 2012, Indiana University Press, ISBN0253001161, 9780253001160, google books, catalogues a slightly smaller variant.
Fossi, Gloria, Galleria degli Uffizi. 2001.
Hartt, Frederick(英語版), History of Italian Renaissance Art, p. 334, (2nd edn.)1987, Thames & Hudson (US Harry N Abrams), ISBN0500235104
Hartt F. (1969) A History of Italian Renaissance Art, p.291.
Kidwell, C. (1989) Marullus: soldier poet of the Renaissance, London: Duckworth.