コショウ科 (コショウか、学名 : Piperaceae )はコショウ目に分類される被子植物 の科 の1つである。5属 4,000種 ほどが知られる大きな科であるが、ほとんどの種はコショウ属 またはサダソウ属 に属する。主に熱帯から亜熱帯域に分布し、コショウ やヒハツ 、ヒハツモドキ など香辛料として用いられる種を含む。またサダソウ属 の中には、観葉植物として栽培されるものが多い(ペペロミアと総称される)。
多くは草本 から低木 であり、つる植物 や着生植物 となるものも多い(図1)。茎 の維管束 は散在し、葉はふつう互生 するが、対生 ・輪生 するものもいる。花は小さく花被 を欠き、ふつう密集して細長い穂状花序 を形成する。
特徴
草本 から低木 、小高木 、しばしばつる植物 や着生植物 、ときに多肉質である[ 3] [ 4] [ 5] [ 6] [ 7] [ 8] (下図2a–c)。精油 を含み、しばしば芳香をもつ[ 3] [ 5] [ 6] [ 7] [ 8] 。粘液道をもつ[ 3] [ 4] [ 9] 。根端分裂組織は閉鎖型[ 9] 。茎 の節が発達し(下図2b)、茎の横断面では維管束 が散在また多輪に配置している(Verhuellia を除く)[ 3] [ 5] [ 6] [ 9] [ 7] [ 8] 。この配置は単子葉類 の散在中心柱 に似ているが、しばしば維管束形成層 による肥大成長を行う点で異なる[ 3] [ 4] 。道管 の隔壁は、階段穿孔または単穿孔をもつ[ 3] [ 4] 。師管 の色素体 はS-type[ 3] [ 4] 。節は3–多葉隙、3–多葉跡[ 3] [ 4] [ 9] 。
葉 はふつう互生 するが(下図2d)、サダソウ属 ではときに対生または輪生する[ 3] [ 4] [ 5] [ 6] [ 7] [ 8] (下図2e)。単葉 、全縁 、葉脈 は掌状または羽状(上図2b, 下図2d–f, j, k)、しばしば腺点があり、ふつう葉柄 をもち、托葉 が葉柄に合着している(サダソウ属は托葉を欠く)[ 3] [ 4] [ 5] [ 6] [ 7] [ 8] 。気孔 はcyclocyticまたは不等型[ 3] [ 4] 。毛(毛状突起 )は多列[ 3] [ 4] 。
ふつう穂状花序 または肉穂花序 を形成し(まれに総状花序 )、花序は頂生、葉と対生 、または腋生する[ 3] [ 4] [ 5] [ 6] [ 7] [ 8] (上図2e, 下図2g−j)。花 は小さく、ふつう両性だがときに単性(雌雄同株 または雌雄異株 )、ふつう無柄、小苞 をもち、花被 を欠く[ 3] [ 4] [ 5] [ 6] [ 7] [ 8] 。雄しべ は1個から10個、ふつう離生だがときに合着して合糸雄しべとなり、またときに雌しべに着生する[ 3] [ 5] [ 6] [ 7] 。葯 は側向から外向、縦裂開する[ 3] [ 4] 。ときに仮雄しべ をもつ[ 3] 。小胞子形成は同時型、タペート組織 は分泌型[ 3] [ 4] 。花粉 は無口粒または単溝粒、2細胞性[ 3] [ 4] [ 7] 。雌しべ は1–5心皮 、合生心皮[ 3] [ 5] [ 6] [ 9] [ 7] 。柱頭 は1–5個、花柱 は極短いか無し[ 3] [ 5] [ 6] (下図2i)。子房上位 で1室、胚珠 は1個、基底胎座 、倒生胚珠 、1–2珠皮性、厚層珠心[ 3] [ 4] [ 5] [ 6] [ 9] [ 7] 。胚嚢 は4胞子性(4個の大胞子に由来する)、8核や16核性[ 3] [ 4] [ 9] [ 7] 。胚乳 形成は遊離核型または造壁型[ 3] [ 4] 。
果実 は小さく非裂開性で液果 または核果 (上図2k)、ときにやや乾質、ときに複数の果実が合着する[ 3] [ 4] [ 5] [ 6] [ 9] [ 7] [ 10] 。種子 は1個、内乳 (内胚乳)は乏しく、デンプン質の周乳 (外胚乳)が発達し、胚 は小さい[ 3] [ 4] [ 5] [ 6] [ 7] [ 10] 。発芽は地上子葉性[ 3] 。
アルカロイド が存在し、シアン化物 、プロアンソシアニジン 、フラボノール 、エラグ酸 を欠く[ 3] [ 4] 。ピペラミド (R-(C=O)-NH2 )をもつ[ 9] 。ときにシュウ酸塩 の集晶や針晶を含む[ 9] 。染色体 の基本数は x = 12 (?13)[ 3] [ 9] 。
分布・生態
世界中の熱帯 から亜熱帯 域に分布する。特に熱帯雨林 における林床やつる植物 、着生植物 として重要な構成要素である[ 9] 。アルカロイド や精油 、ピペラミド などの二次代謝産物をもつため、植食昆虫の多様化における重要な要素になっていると考えられている[ 9] 。
特異な花粉媒介様式や送粉者の特異性が高い例は知られていない[ 9] 。基本的に雌性先熟であるが、自家受粉する例も多い[ 9] [ 7] 。一般的に、コショウ属 は果実 が動物に食べられることにより、サダソウ属 は果実が動物に付着することによって散布される[ 9] [ 7] 。
人間との関わり
精油やアルカロイドを含んでおり、香辛料として利用される例が多い(コショウ 、ヒハツ 、ヒハツモドキ 、ヒッチョウカ 、ニシアフリカクロコショウ、キダチコショウなど)[ 10] [ 11] (下図3a–c)。特にコショウは最もよく使われる香辛料の1つであり、世界中の熱帯域で栽培されている[ 12] [ 13] [ 14] 。またコショウ属やサダソウ属の中には、薬用に使われる例も多い[ 10] [ 11] 。キンマ やカヴァ は嗜好品に使われる[ 10] [ 11] (下図3d)。
コショウ属やサダソウ属の中には、観葉植物 として栽培される例がある[ 15] 。特にサダソウ属(Peperomia )にはその例が多く、このような植物は「ペペロミア」と総称される[ 10] [ 16] (上図3e)。
系統と分類
コショウ科は極めて単純な花をもち特徴的なグループであるため、古くから認識されていた。古典的な被子植物 の分類体系である新エングラー体系 やクロンキスト体系 では、コショウ科は同様に単純な花をもつドクダミ科 と共にコショウ目 に分類されていた[ 17] [ 18] [ 19] [ 20] 。その後一般的となったAPG分類体系 でも、コショウ科はドクダミ科と共にコショウ目に分類されている[ 21] 。APG分類体系では、ウマノスズクサ科 もコショウ目に分類されている。
サダソウ属 は草本 で托葉 を欠き、花がより退化的であるためサダソウ科(Peperomiaceae)として独立させることもあったが[ 4] 、現在ではコショウ科に含められる[ 10] 。
コショウ科に属するコショウ属 とサダソウ属 は1,000種以上を含む大きな属であり、それぞれ複数の属に分けられることもあった。2022年現在では、分子系統学 的研究などをもとにコショウ科内は5属に整理され、しばしば3亜科に分類される[ 9] [ 7] (下図4、下表1)。
脚注
出典
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外部リンク
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